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レポート

2022/01/11

自分らしく生きるために-知っておきたい・がん介護 VOL.9

積極的な治療ができなくなったときの療養場所・自宅以外の選択肢は?

福島安紀=医療ライター

 「いまは在宅療養をしているけれども、最期まで自宅で過ごすのは難しいかもしれない」「積極的な治療ができなくなったので退院を勧められたけれども、自宅に帰るのは無理」と考えている患者や家族は少なくない。がんの薬物療法など積極的な治療が難しくなった場合の療養場所には、どのような選択肢があるのだろうか。国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター副センター長の坂本はと恵さんが解説する。


「在宅療養が難しくなったら緩和ケア病棟で過ごしたい」なら入院予約を

 がん患者の療養やターミナルケアの場所として、まず思い浮かぶのは、緩和ケア病棟(ホスピス)だ。緩和ケア病棟は、主として苦痛の緩和を必要とするがん、およびHIV(後天性免疫不全症候群)の患者を入院させ緩和ケアを提供する病棟で、がん治療を行う一般病院に併設されていることも多い。日本ホスピス緩和ケア病棟のウェブサイトによれば、緩和ケア病棟として各地方厚生局に届出をしている医療機関は、2021年6月15日現在、全国に452施設ある。

坂本はと恵さん

 ただ、「全国的にもベッド数が限られる緩和ケア病棟に、必要とする方ができるだけ入院できるようにしようという国の政策や、症状緩和をする薬の発達もあり、ほとんどの緩和ケア病棟の平均的な入院期間は2~3週間程度になってきました。緩和ケア病棟の利用の目的の一つは、つらい症状をコントロールするために入院し、症状がある程度落ち着いたところで自宅へ帰るという在宅支援です。また、在宅療養を続けていて、例えば自力でトイレへ行けなくなったときなど、家族に迷惑をかけたくないから緩和ケア病棟への入院を希望する患者さんもいます」と坂本さんは話す。

 緩和ケア病棟の利用を希望する場合には、主治医に紹介状を書いてもらい、最寄りの緩和ケア病棟のある病院で診察(入院前相談)を受ける必要がある。緩和ケア病棟のある医療機関を探すには、日本ホスピス緩和ケア協会のサイト(https://www.hpcj.org/uses/index.html)が参考になる。緩和ケア病棟の1日の入院費は、1割負担の人で約5200円、3割負担の人で約1万5000~1万6000円、さらに1食460円(3食で1380円)の食費と、個室の場合には個室料がかかる。健康保険が利用できるので、限度額適用認定証を提出していれば、医療費(個室料は含まれない)の自己負担額は高額療養費制度の利用限度額の範囲内になる。

 「なるべく長く自宅で過ごしたいけれども、息苦しさなどつらい症状が増えてきたら緩和ケア病棟に入院したいと考えているのなら、在宅療養を始めるのと同時期に、最寄りの緩和ケア病棟で入院前相談や入院予約をしておくと、必要時にスムーズに入院できます。結果的に自宅で看取れたというご家族も少なくないのですが、いざとなったら入院できるという安心感は大きいのではないでしょうか」と坂本さん。

ホスピス型の有料ホームががん患者の療養場所の選択肢の一つに

 一方、介護保険を使って入所できる施設には、常時介護を必要とする高齢者のための「特別養護老人ホーム」、要介護者にリハビリなどを提供し在宅復帰を目指す「老人保健施設」、医療の必要な要介護高齢者が長期療養する「介護療養型医療施設」の3種類がある。積極的な治療はできなくなくなったけれども在宅療養は難しい患者の療養場所として、これらの介護施設は選択肢になるのだろうか。

 「地域によるかもしれませんが、特別養護老人ホームや老人保健施設は、数カ月から数年間、入所を待っている人が多く、もともと入所していた人以外は、すぐに入るのは難しいのが実情です。また、がんの患者さんは、病気が進行しても比較的ギリギリまで自分で身の回りのことができ、調子が良い時には趣味や会話を楽しむことができる人が多いので、寝たままの時間が長い介護療養型医療施設は希望されない場合が多いです。むしろ、人生の最終段階を過ごす施設として選択肢になり得るのは、終末期のがんの患者さんや人工呼吸器を装着しているなど医療の必要度の高い患者さんを受け入れ、比較的利用料が手ごろなホスピス型の有料老人ホームではないでしょうか」と坂本さんは話す。

 特別養護老人ホームは、要介護4、5といった介護度の重い人を中心に介護する施設だが、がんの患者は、自分で身の回りのことができなくなっても、要介護度が1~3程度になる人が多いという問題もある。そうかといって、従来からある介護付きの有料老人ホームは、施設内で看護や介護サービスが提供され、提携医療機関の医師が診察をするところが多く、緩和ケアなど専門的な治療を必要とするがんの患者は入所しにくい面があった。

 しかし最近では、例えば、在宅緩和ケアに力を入れているなど、患者や家族が自分で選んだ医師に訪問診療を依頼でき、介護保険を使いながら自宅と同じような形で、訪問診療や介護サービスが受けられる有料ホームも登場している。施設によっては高齢者だけでなく、がんで積極的な治療が受けられなくなって介護保険が使える40代~50代の人も利用可能だ。もしも自宅の近くにそういった施設があれば、在宅療養中に訪問診療を依頼していた在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーなどのケアを受けながら、人生の最終段階を過ごすこともできる。

療養場所は病院の相談室や地域包括支援センターへ相談を

 有料老人ホームには、数百万円~千万円単位の入居一時金と月20万~30万円の生活費が必要なところもある一方で、介護費用も合わせて月10万~16万円程度で利用できる施設もある。

 「どういう施設があるかは地域によって異なります。自宅以外にどのような選択肢があるのかは、がんの治療を受けている病院の相談室や地域連携室に相談しましょう。有料老人ホームを選ぶときには、患者さんご本人か家族が必ず見学に行って、入居一時金の有無や月額費用、緊急時の対応、見学したときの施設や職員の雰囲気などを確認することが大切です」と坂本さんは強調する。

 すでに在宅療養中の患者が、緩和ケア病棟への入院や有料老人ホームへの入所を検討する場合には、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するとよいだろう。がんの患者は家族が思っているより早く急激に、自力でトイレへ行けなくなったり食事ができなくなったりすることがある。人生の最終段階を後悔なく過ごすためには、ある程度、身の回りのことができるうちに、最終的にはどこで過ごすのか家族と話し合ったり、近くにどんな施設があるのか調べたりしておくことも重要だ。



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