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レポート

2021/12/28

小児がんなどの子どもと家族の〝第2のわが家″を目指す

「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」がオープン

福島安紀=医療ライター

 小児がんや難病などで命の危機に直面している子どもは、全国に約2万人いると推計される。そういった子どもたちが家族と一緒に、安心して楽しく遊びながら過ごせる「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」を、認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクトが神奈川県横浜市金沢区に開設し、11月21日に落成式を開催した。
 病院併設ではなく、医療者や地域の人の支援も受けながら過ごす、英国発祥のコミュニティ型「こどもホスピス」は日本では2カ所目で、東日本での開設は初めて。全国各地で「こどもホスピス」の開設が切望されており、そのモデルづくりをする役割も担っている。


生命に関わる病気の子が家族と一緒に思い思いの時間を過ごせる場

横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち

 「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」は、京浜急行・金沢八景駅から徒歩15分、平潟湾の入江に面した2階建ての大きな一軒家のようなコミュニティ型ホスピス。治療や療養をする医療施設ではなく、小児がんで入院治療または在宅療養中、先天性心疾患で入退院を繰り返すなど、生命に関わる病気や状況(LTC:Life-threatening conditions)の子どもが、家族や友達と一緒に、遊んだりやってみたいことにチャレンジしたり思い思いの時間を過ごすための場所だ。がん看護専門看護師、保育士・ホスピタルプレイスペシャリスト、小児がんなどで子どもを亡くした遺族を中心にしたスタッフが、利用者と家族をサポートする。

 1階は広いリビングルームのような「交流エリア」で、利用する家族同士や地域の人、ボランティアなどと触れ合うスペースとなっており、子どもと一緒に料理もできるオープンキッチンがある。2階は、家族単位で利用できる部屋が3つある「くつろぎエリア」だ。介助する家族の負担を減らすため、天井走行リフトを使って、海の見える広い浴室へ移動できる部屋や、サウナ付きの部屋もある。家族で一緒に入浴したり、大きなベッドに病気の子がきょうだいや親と横になったり、利用する子どもと家族がゆったりと有意義な時間を過ごせるように工夫されている。部屋の大きな窓からは、海や富士山も望める絶好のロケーションだ。八景島シーパラダイスや金沢動物園など子どもが楽しめるアミューズメント施設も隣接している。

1階の交流スペース

家族単位で利用できる居室の1つ

きょうだいや親子で入れる大きな浴室。隣の居室から直接入れるようになっている

小児脳腫瘍で娘を亡くした遺族と賛同者の思いで実現

 この「こどもホスピス」は、1998年に小児脳腫瘍で二女のはるかちゃんを亡くした、認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事の田川尚登さんが、賛同者と共に約10年かけて準備を重ね、開設された。はるかちゃんは、6歳になったばかりの97年9月、脳腫瘍の中でも悪性度の高い脳幹部グリオーマと診断され、5カ月間の闘病生活の末、旅立った。

 「亡くなった娘から、病気や障害のある子どもやその家族を支えてほしいという宿題をもらった気がする」という田川さんは、2003年にまずはNPO法人スマイルキッズを立ち上げ、神奈川県立こども医療センターに入院している患児の家族の滞在施設「リラのいえ」を開設した。そして、小児がんの子どもの家族の支援や闘病中の患児のきょうだいの預かり保育を始めるなどの活動を進めてきた。そういった活動をする中で英国発祥の「こどもホスピス」を知り、自身の経験から仲間と共に構想を練っていたときに、同じようにこどもホスピスの設立を願っていた元看護師から1億500万円の遺贈寄付を受け、その実現に向けて舵を切った。開設に漕ぎつけるまで約10年かかったが、はるかちゃんの闘病生活を思い出し、頑張ってきたという。

認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事の田川尚登氏

 11月21日に支援者と共に開催した落成式で、田川さんは「ホスピスと聞くと看取りの場と思われるかもしれませんが、そういう場所ではなく、子どもの笑顔を守る場所です。子ども時代の経験は、本人にとっても家族にとっても大切な思い出で、病があるからといって子どもがやってみたいという純粋な願いがかなえられないのはとても悲しいことです。いま生命に関わる病気の子どもが全国に約2万人います。そのような子どもは病院と自宅しか居場所がないのが現実です。残された時期を有意義に使い、子どもにとっての楽しい時間を家族と一緒に過ごせる第2の我が家のような場所を提供したいと考えています」と語った。

既存の医療・福祉制度の狭間を埋めるコミュニティ型こどもホスピス

 このこどもホスピスは、基本的には日中利用のデイサービスで子どもと家族の希望を叶える施設で、横浜市などの助成金や地元企業、個人からの寄付金で運営される。利用料は、登録料1000円と1回あたり1家族1000円だ。厳密には利用者の居住地は問わないというが、横浜市のこどもホスピス(在宅療養児生活支援施設)事業に選定されていることもあり、主に横浜市民を中心に受け入れ、地元のボランティアなどがサポートする地域密着型の施設を目指す。

 小児がんはここ20~30年の間に治癒率が大きく改善したが、病気や病状によっては治癒が難しい場合がある。治療が難しくなった小児がんなどの子どもが利用できる施設には、淀川キリスト病院のこどもホスピス(医療型短期入所)、在宅療養中の子どもと家族がショートステイのような形で最長1週間滞在できる国立成育医療研究センターの医療型短期入所施設・もみじの家などがある。また、兵庫県神戸市のNPO法人チャイルド・ケモ・ハウスも、重い病気の子どもたちと家族の居場所作りや相談支援を行っている。

 医療施設ではなく、寄付金などを基に運営し、重い病気の子どもと家族を一緒に支えるコミュニティ型こどもホスピスは、これまで、2016年に開設された大阪市鶴見区の「TSURUMIこどもホスピス」だけだった。「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」は全国で2つ目のコミュニティ型こどもホスピスとなる。コミュニティ型こどもホスピスのモデルは、英国で1982年に設立された世界初のこどもホスピス「ヘレン&ダグラスハウス」だ。ヘレン&ダグラスハウスは、重い病気で命の危機に直面した子どもとその兄弟、保護者が、音楽、芸術、学習を楽しみながら、自宅のようにゆったり過ごし一息つける滞在型の施設。医療・福祉・教育の専門家などのボランティアが友人のように寄り添いながらサポートしている。

 重い病気で在宅療養をする子どもは友達にも会えず、学びの機会も限られる。また、小児がんなどで在宅療養をする子どもが利用できる医療・福祉サービスはかなり限定的だ。そのため、家族は孤立して疲弊し、精神的・体力的、経済的にも大きな負担を抱え、子どもとの貴重な時間を楽しく過ごす心の余裕もなくなってしまいやすい。こどもホスピスは、現在の医療・福祉制度ではカバーできない狭間を埋め、子どもたちの生きている時間を最後まで輝かせようとする新たな居場所作りといえる。

医療者・教育者と協働で横浜こどもホスピス・モデルの全国発信目指す

 北海道、東京都内、福岡県、福井県などでも、こどもホスピスの設立を目指す動きがあり、田川さんは「我が国では、こどもホスピスの定義がない中、『横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち』が地域と作り上げた横浜モデルとして全国に広がっていくことを切に願います」と強調した。

 「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」を利用するには、まずは、メールか電話で問い合わせをする必要がある。施設見学とヒアリングをし、主治医の意見書などの必要書類を提出して登録後に、利用日を予約する。詳しくは、認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクトのホームページ(https://childrenshospice.yokohama/index.html)を参照してほしい。同NPO法人は、近隣の小中高校、大学とも連携し、「いのちの授業」「がん教育」などでこどもホスピスのことを知ってもらい、生命の尊厳や健康について考えてもらう活動も進めて行くという。

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