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レポート

2021/11/02

第83回日本血液学会学術集会教育講演より

模索続く末梢性T細胞リンパ腫に対する治療開発

分子病態に基づく新薬、新たな機序を持つ薬剤同士の併用、CAR-T療法などに期待

中西美荷=医学ライター

 末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は、希少がんの中でもさらに希少な腫瘍のひとつで、その希少性ゆえに、治療開発が遅れている。2020年のNCCNガイドラインでは、推奨される初回治療が「臨床試験への参加」という状況だった。しかし、分子病態が徐々に明らかになってきたことで、それにもとづく治療開発が行われるようになっている。第83回日本血液学会学術集会における棟方理氏(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)による教育講演「末梢性T細胞リンパ腫に対する治療戦略」から、PTCLの治療開発の現状と今後の展望について紹介する。


末梢性T細胞リンパ腫は希少がんの中でもさらに希少

 末梢性T細胞リンパ腫は成熟T/NK細胞腫瘍のひとつで、WHO分類では約30もの病型に分類されている(Blood. 2016: 127: 2375-90)が、臨床においては、その病気の首座がどこにあるかによって、造血細胞(Leukemic)、節性(Nodal)、節外性(Extranodal)、皮膚(Cutaneous)の4つに分けて考えられる。そして治療開発は、Leukemic、Nodal、Extranodalの3つをあわせたPTCLと、皮膚原発の皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に分けて進められている。

 成熟T/NK細胞腫瘍の病型の相対頻度は世界の各地域間で異なるが、一般には末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)が3大病型と認識されている。日本の施設も参加したInternational T-cell Lymphoma Projectのデータでは、PTCL-NOS 25.9%、AITL 18.5%、NK/T細胞リンパ腫10.4%、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)9.6%、ALK 陽性(ALK+)ALCL 6.6%と報告されている(J Clin Oncol.2008; 26: 4124-30)。

 今回、棟方氏は、日本において発生頻度の高いATL、および節外性NKT細胞リンパ腫鼻型(ENKL)以外のPTCLの治療戦略について講演した。

 一般的に希少がんは「10万人あたり6例未満の病気」と定義されるが、この定義によれば、B細胞リンパ腫を含めて、すべての悪性リンパ腫は希少がんに該当する。中でもT細胞リンパ腫はB細胞リンパ腫よりも発症頻度が低く、希少がんの中でも、より希少な疾患である。「患者の数が少ないためにランダム化比較試験が難しい、病態解明の研究が遅れる、正確な病理診断が難しい、治療経験が乏しいといった問題があり、治療開発が遅れている」(棟方氏)。

 たとえば、PTCLで正確な病理診断が難しいことについては、血液病理医間におけるPTCLの病理診断の不一致率が高いことからも示されているという。組織型別の診断不一致率は、ALK+ALCLでは6%だが、PTCL-NOSでは19%、AITLは33%、ALK陰性(ALK-)ALCLでは34%にも上ることが報告されている(Cancer. 2014; 120: 1993-9)。

B細胞リンパ腫より予後不良で、病型によっても予後が異なる

 フランスのリンパ腫研究グループGELA(Groupe d'Etude des Lymphomes de l'Adulte)のデータによれば、予後がよい病型であるALK+ALCL以外のPTCLは、B細胞リンパ腫と比較して予後不良である(Blood. 1998; 92(1) : 76-82)。B細胞上に発現する表面抗原CD20を標的とする分子標的薬リツキシマブの導入以降、B細胞リンパ腫の治療成績が劇的に改善したため、現在、B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫の治療成績の差はより大きくなっている(Curr Hematol Malig Rep. 2018; 13(4):318-328)。

 PTCLの予後は、病型によって異なることが報告されており(J Clin Oncol. 2008; 26(25) :4124-30)、「病理組織型が、もっとも予後に与えるインパクトが大きい」(棟方氏)。そして、PTCLの中で、もっとも頻度の高いPTCL-NOSでは、晩期再発を含め、約8割の患者が再発することが示されている。棟方氏は、「2/3の患者が治るびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)とは事情が違う」と話す。

CHOP療法の成績は不十分で、地固め療法としての自家移植の意義も明確ではない

 PTCL対する治療は、DLBCLと同様に、多剤併用化学療法が選択されることが一般的で、3種類の抗がん薬(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)と副腎皮質ホルモン(プラドニゾロン)を組み合わせたCHOP療法がもっとも多く使用されている。しかし、その治療成績は十分とは言えず、治療成績改善を目指して、さまざまな試みが続けられている。

 たとえばCHOP療法にエトポシドを加えたCHOEP療法については、ドイツのグループDSHNHL(German High-Grade Non-Hodgkin Lymphoma Study Group)によるメタ解析で、若年患者やALK+ALCLにおいては、CHOP療法よりも有効である可能性が示唆されたものの、全体として有用性は認められず、CHOP療法が標準的な治療にとどまった(Blood. 2019; 116(18) : 3418-25)。

 初回治療で奏効が得られた患者においては、自家移植(ASCT)による地固め療法が検討され、良好な成績を得られることが示されている。しかし、「そもそも初回治療が奏効しない患者も多いため、多くの患者が自家移植のメリットを得られるわけではない」(棟方氏)。

 たとえばドイツから報告された前向き試験では、CHOP療法が奏効し、全身放射線療法(TBI)+末梢血幹細胞移植併用大量化学療法(HDT/ASCT)を完遂できた患者(55/83例)では、3年全生存(OS)率が71%と良好だった(J Clin Oncol. 2009; 27(1) :106-13)。

 北欧リンパ腫研究グループ(Nordic lymphoma group:NLG)による160例を登録した大規模試験NLG-T-01でも、CHOEP療法(2週間に1回6サイクル)が奏効(131例)してASCTを行うことができた患者(115例)では、5年無増悪生存(PFS)率が44%と良好だった。しかし、この試験でも、26%の患者はASCTを行うことができていない(J Clin Oncol. 2012; 30(25) : 3093)。

 PTCLを対象としたASCTと化学療法を比較するランダム化試験は、疾患の希少性ゆえに実施困難である。フェーズ3試験は実施されていないが、フランスの研究グループThe Lymphoma Study Association(LYSA)は、比例ハザードモデルと傾向スコアマッチング法を組み合わせて、ASCT実施群134例とASCT未実施群135例を比較する多施設共同の後方視的解析を行った。

 5年PFS率はNLG T-01試験と同様の45%で良好だったが、ASCT実施群とASCT未実施群で差は認められなかった(Ann Oncol. 2018; 29(3) : 715-723)。「ランダム化比較試験ではないものの、末梢性T細胞リンパ腫に関して、アップフロントの自家移植の意義は明らかではないことを示唆する重要なデータかと思う」と棟方氏は話した。

 米国の前向き観察研究COMPLETEでも、地固め療法としてのASCTの意義は示されなかった。導入治療で完全奏効(CR)に到達したPTCL患者109名において、観察期間中央値2.8年の時点におけるOS中央値はASCT群(36例)が未到達、経過観察群(83例)は57.6カ月で、ASCT群で良好である傾向が示されたが、統計学的有意差はなかった(Cancer. 2019; 125(9) : 1507-1517)。

2020年のNCCNガイドラインでは第一選択が「臨床試験への参加」

 このように、PTCLでは、DLBCLに対するリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)療法に匹敵するような、確固たるエビデンスは確立されていない。2020年のNCCNのガイドラインでは、予後良好なALK+ ALCLに対して多剤併用化学療法が推奨されている一方で、PTCL-NOSをはじめとするPTCLのさまざまな病型では、初回治療の好ましい(Preferred)選択は「臨床試験への参加」とされている。二次治療以降に関しても、すべて「臨床試験への参加」が一番目に記載されているという状況だった。

 標準的治療の確立には至っていないが、PTCLの治療成績改善を目指して、さまざまな作用機序を有する新規薬剤の開発は続けられてきた(Exp Opin Biol Ther 2019; 19(3) : 197-209)。

 日本においても、ATLを含む再発/治療抵抗性のPTCLに関する複数の薬剤の臨床試験が実施され、近年、多くの薬剤が承認されている。たとえば抗CCR4抗体であるモガムリズマブは日本で開発され、世界に先駆けて日本で承認された薬剤である。CCR4は白血球遊走の因子となるケモカインの受容体で、ATLの多くで強く発現している。モガリズマブは、まず再発または難治性のCCR4陽性のATLの治療薬として承認され(2012年5月)、その後、再発または難治性のCCR4陽性のPTCLに対する治療薬としても承認されている(2014年3月)。

再発/治療抵抗性ALCLではブレンツキシマブ・ベドチンが高い有効性

 ブレンツキシマブ・ベドチンは、抗CD30抗体に、リンカーを介して抗チューブリン薬であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させた抗体薬物複合体である。腫瘍細胞表面のCD30分子に結合すると細胞内に取り込まれてリンカーが切断され、MMAEが腫瘍細胞に放出されて抗腫瘍効果を示す。CD30陽性のホジキンリンパ腫やALCLに対する高い有効性が示唆され、臨床開発が進められた。

 再発/治療抵抗性ALCLに対するブレンツキシマブ・ベドチンの有効性を評価する第2相試験では、CD30陽性の58名が登録された。直近の治療に抵抗性、あるいは初回治療にそもそも抵抗性など、極めて予後の悪い患者群であったにもかかわらず、ORR 86%(50/58例、95%信頼区間:74.6-93.9)という、極めて高い有効性が示された(J Clin Oncol. 2012; 30(18) : 2190-6、Blood. 2017; 130(25) : 2709-2717)。

 CD30陽性のホジキンリンパ腫やALCLに対する高い有効性が示されたことから、悪性リンパ腫についても、CD30分子の発現について研究された。ALCLではALK陽性陰性を問わずCD30分子が高度に発現していた。またPTCL-NOSやAITLなど、その他のPTCLでも、一定の割合でCD30分子を発現していることが明らかになり(Blood. 2014; 124(19) : 2983-6)、ブレンツキシマブ・ベドチンの有用性が期待された。

 再発/治療抵抗性のAITLおよびPTCL-NOSを対象とするブレンツキシマブ・ベドチンの第2相試験では、施設判定でCD30陽性と判定された患者が登録され、中央判定でCD30陰性となった患者も含まれていたものの、一定の有効性を期待できることが示された(Blood. 2014; 123(20) : 3095-100)。ただ、CD30低発現の患者でも一定の効果が認められる一方で、CD30高発現であっても抗腫瘍効果が得られない患者もいるなど、CD30発現レベルとブレンツキシマブ・ベドチンの有効性に相関は認められなかった。

ECHELON-2試験の良好な成績によりBV-CHP療法がCD30陽性PTCLに対する初回治療の標準に

 再発/治療抵抗性のCD30陽性PTCLに対する有効性が示唆されたことから、ブレンツキシマブ・ベドチンの初回治療への導入が進んだ。第1相試験ではまず、CHOP療法との併用方法として、併用投与(combination)と順次投与(sequential)が検討された。CHOP療法後にブレンツキシマブ・ベドチンを投与する順次投与では、CHOP療法中の増悪も報告されたことから、併用投与が好ましいと考えられた。一方、併用投与については末梢神経障害が認められたことから、CHOP療法からビンクリスチンを除いたレジメンであるCHP療法との併用療法が採用された(J Clin Oncol. 2014; 32(28): 3137-43)。

 この試験は26例という少数例を対象とする第1相試験ではあったが、ブレンツキシマブ・ベドチン併用CHP(BV-CHP)療法は、ORR 100%、CR 92%、5年PFS率52%、5年OS率80%という良好な成績を示した(Blood. 2018; 131(19): 2120-2124)。

 このBV-CHP療法の有効性をCHOP療法と比較すべく行われたのが、国際共同二重盲検ランダム化第3相試験ECHELON-2である。対象はCD30強陽性(腫瘍細胞の10%以上でCD30陽性)のPLCLで、主要評価項目はPFSとした。BV-CHP群、CHOP群それぞれ226名が登録され、病型はALCLが全体の7割を占めたが(BV-CHP群72%、CHOP群68%)、PTCL-NOS(13% vs. 19%)やAITL(13% vs. 11%)なども1割程度含まれていた。

 追跡期間中央値36.2カ月において、PFS中央値はCHOP群20.8カ月に対してBV- CHP群では48.2カ月で、統計学的に有意な延長が示された(ハザード比0.71、95%信頼区間:0.54-0.93、p=0.0110)。副次評価項目のOSおよびORRについても、BV-CHP群で良好だった。75%OSはCHOP群17.5カ月、BV- CHP群は未達(ハザード比0.66, 95%信頼区間:0.46-0.95、p=0.0244)、ORRはCHOP群72%、BV- CHP群83%(p=0.0032)、CR率はそれぞれ 56%、68%(p=0.0066)だった(Lancet. 2019; 393(10168): 229-240)。

 さらに昨年の米国血液学会年次集会(ASH Annual Meeting)では、ECHELON-2試験の長期追跡結果として、BV-CHP療法によるPFS延長が長期持続することが報告された。5年PFS率はCHOP群42.7%、BV-CHP群50.9%(ハザード比0.70、95%信頼区間:0.53-0.91、p=0.0075)だった(ASH 2020 Annual Meeting #1150)。

 有害事象に関しては、両群で大きな差は認められず、特に懸念された末梢神経障害は、頻度も程度も同様だった。また好中球減少に関しても両群で同等だったが、BV-CHP群では基本的にG-CSFの一次予防的投与が推奨されていた。

 これらの結果から、BV-CHP療法はCHOP療法と比較して優れているとされ、CD30陽性のPTCLに対する標準的治療法に位置付けられることとなった。

ALCL以外の病型ではブレンツキシマブ・ベドチンの効果は不十分

 ただ、ECHELON-2試験の病型別のサブ解析では、ALCLではALK陽性、陰性を問わずブレンツキシマブ・ベドチンの上乗せ効果が認められた一方で、その他の病型に関しては、ブレンツキシマブ・ベドチンの十分な上乗せ効果を確認することができなかった。棟方氏は「本試験はALCLが7割登録されたわけだが、PTCL-NOSやAITLは患者登録が少ないことも影響したのではないか。ただ、このデータは、実臨床でこれらの病型にブレンツキシマブ・ベドチン併用を行うかどうか、議論の余地を残したことは言うまでもない」と話した。

 ECHELON-2試験で良好な結果が得られたことを受け、最新のNCCNのガイドラインでは、ALCLに対する好ましいレジメン(preferred regimen)はBV-CHP療法と記載されている。また、その他のPCLCに関しては、CD30陽性の場合にはBV-CHP療法がpreferred regimenとされ、CD30陰性例に関しては、BV-CHP療法とCHOEP療法、CHOP療法などが併記されている。また初回治療として2020年までのガイドラインで記載されていた「臨床試験」は、preferred regimenから削除となった(NCCN guidelines T-cell lymphoma Ver1. 2021)。

ロミデプシン、アレムツズマブはCHOP療法への上乗せ効果示せず

 ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害薬ロミデプシンについても、初回治療への導入が検討された。HDAC阻害薬は、ヒストンのアセチル化を起こし、がん抑制遺伝子を含むアポトーシスに関連する遺伝子の転写を活性化するなどの機序により、抗腫瘍効果を発揮すると考えられている薬剤である。

 節性または節外性のPTCLおよびCTCLを対象としてフランスのグループLYSAが実施した多施設共同ランダム化第3相試験では、ロミデプシン+CHOP(Ro-CHOP)療法の安全性と有効性が検討された。主要評価項目のPFS(中央値)は、CHOP療法10.2カ月(95%信頼区間:9.0-25.8)に対してRo-CHOP療法12カ月(95%信頼区間:7.4-13.2)であり、両群で統計学的有意差は認められなかった(ハザード比0.81、95%信頼区間:0.63-1.04、p=0.095)(ASH 2020 Annual Meeting #39)。

 抗CD52抗体アレムツズマブとCHOP療法の併用(A-CHOP療法)についても、高齢(61歳から80歳)のPTCL患者を対象とする第3相試験DSHNHL2006-1B/ACT-2が実施されている。アレムツズマブは、B細胞、T細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞などの表面に発現しているCD52分子に結合することで、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)と補体依存性細胞障害作用(CDC)により細胞溶解作用をあらわす薬剤である。

 DSHNHL2006-1B/ACT-2試験における3年無イベント生存(EFS)率は、CHOP-14療法(2週毎投与 6サイクル)24%(95%信頼区間:12-35)に対してA-CHOP療法27%(95%信頼区間:15-39)で、差は認められなかった。その一方で、A-CHOP療法では、骨髄抑制がより強いことが明らかになった(Leukemia 2021; 35(1) : 143-155)。

 若年患者に関してはA-CHOP療法後に自家移植を行う戦略が検討されたが、アレムツズマブの上乗せ効果は示されなかった(ASH 2018 Annual Meeting #998)。

PTCLでは新薬の臨床導入による経時的な治療成績の改善なし

 初回治療でCRに到達した後に再発した患者や、そもそも初回治療に抵抗性のPTCL患者の予後は、現在においても極めて不良である(Haematologica. 2018; 103(7) : 1191-1197)。新規薬剤の臨床導入に伴い、年代を経る毎に治療成績が改善していることが期待されたが、MD Anderson Cancer Centerによる後方視的解析では、再発/治療抵抗性のPTCLにおける年代別の治療成績は時代を経ても改善されず、予後は非常に不良なままであることが示された(Br J Haematol. 2017; 176(5) : 750-758)。

 再発/治療抵抗性のPTCLに対しては、年齢や臓器機能から適応と判断されれば、DLBCLと同様に自家移植を目指すことが選択肢とされる。しかしその成績は、DLBCLと比較して不良であることも示されている(Lymphoma 2017; 580) : 2319-2327)。

 そのため、「再発/治療抵抗性のPTCLに対しては、自家移植ではなく同種移植を選択する場合も多くある」(棟方氏)。PTCLに対する同種移植の多施設共同の後方視的検討では、対象の全例が再発/治療抵抗性PTCLではなかったものの、5年OS率50.8%(95%信頼区間:46.1-55.3)、5年PFS率は39.4%(95%信頼区間:34.9-43.9)という良好な成績が示されている(ASH2020 Annual Meeting #41)

 再発/治療抵抗性のPTCLに対して、通常のサルベージ療法を行うか、最近開発された新規薬剤の単剤を選択すべきかを比較した試験データはない。ただ、米国の多施設前向き観察研究COMPLETEでは、PFSやOSの点から、新規薬剤の単剤療法の方が良好とのデータが示されている(Blood. 2019; 94(6) : 641-649)。棟方氏は、「再発/治療抵抗性の患者に対する治療選択においては、こうしたデータも考慮することが重要」と話した。

PTCLの分子病態の研究が進み、機序に基づく新薬に期待

 近年、PTCLの分子病態の解明研究が進められ、診断や予後に関わる遺伝子異常や、治療標的になり得る遺伝子異常が多数報告されている(Blood. 2016; 127(20) : 2375-90)。たとえばAITLは、エピゲノムに関する異常が多いということがわかっているという。エピゲノムというのは、DNAの塩基配列を変えることなく、遺伝子のはたらきを決めるしくみ(エピジェネティクス)の情報の集まりで、どの遺伝子を使って、どの遺伝子を使わないかを決めるスイッチのようなものである。

 この特徴的な分子異常に対しては、アザシチジンの効果が期待できると考えられる。アザシチジンはDNAメチル化阻害薬で、DNAに取り込まれてDNAのメチル化を抑制することで、がんで抑制されている癌抑制遺伝子の発現を回復させることにより、抗腫瘍効果を発揮する。また、RNAに取り込まれることで蛋白合成を阻害して殺細胞効果を示す。後方視的なケースシリーズ研究(症例集積研究)では、AITLに対するアザシチジンの高い有効性が示唆されている(ORR 75%[9/12例])(Blood. 2018; 132(1) : 2305-2309)。

 現在、再発/治療抵抗性のAITLおよび、AITLと同様の分子病態を持つとされる濾胞性T細胞リンパ腫、濾胞性ヘルパーT細胞形質を伴う節性PTCLを対象に、アザシチジンと医師選択の治療を比較する国際共同第3相試験が進行中である。

 また、アザシチジンとロミデプシンの併用を検討した第1相試験では、末梢性T細胞リンパ腫に対する有効性が期待される結果が得られている(Blood. 2019; 134(17): 1395-1405)。「今後、T細胞リンパ腫に対する治療開発においては、新規薬剤の併用も注目される」(棟方氏)。

 このように、悪性リンパ腫に対して、異なるさまざまな機序により抗腫瘍効果を発揮する薬剤の開発が進められている。さらにT細胞リンパ腫を対象とした薬剤として、経口のホスファチジルイノシトール- 3-キナーゼ(PI3K)-デルタおよび PI3K-ガンマの二重阻害剤であるDuvelisibや、日本で開発されたヒストンメチル化酵素EZH1/2 二重阻害剤であるValemetostatなどについても臨床試験が進められており、棟方氏は「われわれの臨床に導入される可能性は十分にあるかと思っている」と期待を寄せる。またDLBCLに対する画期的な治療法となっているCAR-T細胞治療法についても、今後、T細胞リンパ腫に対する開発が進められる可能性が十分にあるという。

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