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レポート

2021/10/19

自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護 Vol.7

がんの通院治療中でも利用できる 訪問看護の活用法

福島安紀=医療ライター

 がんの患者が在宅療養をするとき、訪問診療と並んで導入が必須となるのが訪問看護サービスだ。訪問看護ステーションなどの看護師が自宅を訪問し、健康管理、医療的なケアや処置、身体的・心理的な面も含めた痛みやつらさの軽減と服薬管理、療養生活の相談、緊急時に対応などを行う。
 どんなときに訪問看護を活用したらよいのか。また、訪問看護は公的医療保険と介護保険のどちらで利用するのか。東京都訪問看護ステーション協会会長で、訪問看護ステーションみけ所長の椎名美恵子さんに聞いた。


小児・AYA世代から高齢者まで必要に応じて訪問看護の利用が可能

 訪問看護は、看護師、保健師などが病気や障害のある人の自宅を訪問して、医師の指示のもと医療処置をしたり、服薬管理や心のケア、体調や栄養状態のチェック、療養環境を整えるサポートをしたり、飲み込みや体の機能の維持・回復のためのリハビリ、在宅看取りのケアなどを提供する医療サービスだ。訪問看護として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが、在宅リハビリを提供することもある。

椎名美恵子さん

 「小児・AYA(Adolescents and Young Adults)世代(概ね15~39歳)から高齢者まで、看護ケアが必要ながんの患者さんであれば、訪問看護を利用できます。定期的な訪問診療は通院ができなくなったときにしか利用できないのに対し、訪問看護は、病院に通院して抗がん薬治療などを受けている人でも必要に応じて活用できるのが利点です」と椎名さんは解説する。

 訪問看護は、介護や在宅医療が必要になった進行がんの患者に限らず、必要に応じて利用できる。例えば、直腸がんの手術後ストーマ(人工肛門)をつけたけれども自分だけで管理やケアが難しい、認知機能が低下しているが1人暮らしなので内服薬の抗がん薬の看護師による服薬管理が必要など、さまざまな場面で、がんの患者が訪問看護を依頼するケースが増えている。

 「特に、早めに訪問看護の導入を検討したほうがよいのが、万が一、がんを小さくするための抗がん剤治療が継続できなくなったときに、自宅で療養したいと考えている患者さんです。早めに訪問看護を導入しておくと、スムーズに在宅療養へ移行でき、患者さんの希望に沿った療養環境が整えられます。身体機能を維持するためのリハビリの仕方、健康管理の方法、災害時の備えなどをアドバイスすることもあります」(椎名さん)。

がんの診断時から訪問看護で治療や療養場所の自己決定をサポート

 在宅療養への移行がスムーズに進んだ東京都在住の男性Aさん(76歳)の例を紹介しよう。Aさんは70代の妻と2人暮らしで、大腸がんで手術を受けてから4年後に、画像検査で肺に影が見つかった。もともと寡黙で、病気になっても家族にさえ弱音を吐けない性格だった。「大腸がんの再発・転移かもしれないが、どうサポートしていいか分からない」と、心配した息子の妻が地域包括支援センターに相談し、健康管理や心理的ケアのために、週1回訪問看護を利用するようになったという。

 大腸がんの肺転移ではなく早期の肺がんだと分かり、手術を受けることになったAさんは、訪問看護師に、「転移ではなかったのはよかったけど、2回もがんになるなんてつらい」、「これからどうなるのか不安で、本当は怖い」などと本音をもらすようになった。ただ、大学病院に入院して腹腔鏡手術で肺がんの病変を切除した後は、「手術したところが痛い」と言って横になる時間が増え、外出をしなくなった。そして、手術から3カ月後に肺がんの局所内再発が判明。本人が手術を拒んだこともあり、今度は、放射線療法と分子標的薬を併用する化学放射線療法をすることになった。

 そのための検査や準備で何度も家から少し離れた大学病院へ通っていたことで疲れもあったのか、ある日、Aさんは、家の玄関で転倒し頭を打って出血し、近所の救急病院へ搬送され、入院治療を受けた。その頃には、肝臓にも転移があることが判明していた。

 「肺がんの手術や頭のけがで入院していた期間以外は、週1回訪問して、健康管理、持病の脊柱管狭窄症による腰痛のケア、巻き爪の処置などのフットケア、心理面でのケアなどをしていました。肺がんの状態や治療の選択肢についてがんの主治医の説明を一緒に確認し、Aさんの気持ちに寄り添いながら、本当はどうしたいと思っているのかを傾聴するようにしていたのですが、放射線装置の台に横になったら腰に激痛が走ったこともあって、再発・転移の治療は受けずに、自宅で静かに暮らしたいという方向へ気持ちが固まって行ったようです」。Aさんの訪問看護を担当していた「訪問看護ステーションみけ」の訪問看護認定看護師、高橋操さんは、そう話す。

 頭のけがの治療を受けた病院では、Aさんと妻、息子の妻、病院の担当医と看護師、訪問看護師の高橋さん、訪問診療を担当することになった医師などが一堂に会して、退院前カンファレンスが開かれた。病院入院中に介護保険認定の申請も行い、退院前には、介護保険で介護用のベッドと車椅子など福祉用具のレンタルを利用した。入院中は歩けない状態だったのでポータブルトイレも準備したが、住み慣れた自宅ではトイレへ行けるようになり、食卓に座って妻と食事を楽しむこともできた。それでも、肺や肝臓に痛みや息苦しさがあったこともあって、訪問看護は週3回になり、訪問診療も週1回導入した。訪問看護では、医療的な処置、心理面のサポートの他、入浴介助なども行った。

急性憎悪期や終末期には、医療保険で週4回以上の訪問看護が可能

 ところで、訪問看護は、医療保険と介護保険のどちらでも受けられる。どう使い分けられ、看護の内容に違いはあるのだろうか。

 「介護保険と医療保険の訪問看護の内容には大きな差はありませんが、介護保険の利用者には、基本的に、介護保険で訪問看護を提供することになります。ただし、介護保険を利用していない人や介護保険の対象にならない40歳未満の人の場合は、医療保険で訪問看護を提供します。また、がんの患者さんの場合、医師が、医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至った、つまり『がん末期』と判断したときや、急性憎悪・終末期などを理由に頻回の訪問が必要と判断し『特別指示書』が出されたときには、医療保険で週4回以上の訪問看護を受けることができます。在宅看取りで亡くなる直前など、特別指示書が出されているような状態なら、毎日訪問したり1日3回訪問したりすることも可能です」と椎名さんは説明する。

 Aさんのケースでは、最初に訪問看護に導入したときには介護保険認定を受けていなかったので、医療保険で訪問看護を利用した。介護保険認定を受け、「要介護4」と判定されたときには、医師が「がん末期」と診断する状態だったので、医療保険での訪問看護を継続した。

 介護保険の訪問看護では、ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って、20分、40分、1時間、1時間半の4区分で訪問する。介護保険では、要介護度によってすべての介護保険サービスを合わせた支給限度額が決められているため、訪問看護もその範囲内で利用することになる。医療保険の訪問看護は原則週3回まで、1回あたり30~90分と決められているが、医師が特別指示書を出したときには、週4回以上訪問看護を受けられるようになる。医療保険で訪問看護を受けるメリットは、介護保険のように支給限度額を気にすることなく手厚い看護ケアが受けられることだ。

 気になる費用は、介護保険では地域によっても料金が異なるものの、1時間の訪問看護は自己負担割合が1割の人で約1000円。医療保険の場合は3割負担の人で1回約3000円、1割負担の人で1回約1000円だ。医療保険では、人生の最終段階が近づいて、訪問診療や訪問看護の回数が多くなり自己負担額が一定限度額を超えたときには、高額療養費制度を利用すれば負担を軽減できる。

 結局、Aさんは、退院後ほどなくして肺炎になって容態が悪化し自宅で治療を受けたが、その約2週間後に家族に看取られ息を引き取った。最後の数日は、訪問看護が毎日入り、朝と夕方の1日2回ホームヘルパーによる訪問介護サービスも利用した。

 「思った以上に急激に容態が悪化してしまったのは残念ですが、2回目のがんである肺がんの診断時から訪問看護に入ったことで、治療法や療養場所の選択についても患者さんの気持ちに寄り添いながら、自己決定ができるようなサポートができた事例です。定期的に訪問看護を受けることが、Aさんご本人だけではなく、ご家族の心のケアや安心感にもつながっていたのではないかと思います」と高橋さんは話す。

24時間365日連絡が取れる機能強化型の訪問看護ステーションの活用を

 では、訪問看護ステーションはどうやって選んだらよいのだろうか。

 「通常の訪問看護は昼間に患者さんの自宅を訪問しますが、在宅療養では、夜中に容態が急変することもあり得ます。実際には、電話で対処できる内容であることも多いのですが、24時間365日体制で連絡が取れ、常勤の看護職員が7人以上おり在宅看取りの経験も豊富な『機能強化型』の訪問看護ステーションに訪問看護を依頼することをお勧めします。機能強化型訪問ステーションがどこにあるかは、地域包括支援センターや病院の地域連携室や相談室などに問い合わせるとよいでしょう。介護を受けている人や介護経験のある近所の人に、評判のよい訪問看護ステーションを聞いてもよいかもしれません」。

 そうアドバイスする椎名さんは、高橋さんら訪問看護ステーションのスタッフと共に、「NPO法人がん患者サポート研究所きぼうの虹」も運営し、がんの患者・家族が集まって気持ちを分かち合う「患者サロン」を開催している。

 「がんと診断されたときからの緩和ケアが重要だと言われますが、がん治療を提供する病院では、告知を受けたときや治療中に必要な心理面でのサポートなどの緩和ケアを提供する余裕がありません。新型コロナウイルス感染症の拡大で活動が限定的になっているところも多いものの、患者サロンを利用したり、訪問看護を早い段階で導入したりすれば、心理面のサポートも受けられ、納得のいく治療や療養環境の整備にもつながります。通院で行うがん治療も増えているので、心理的なサポートや医療処置、服薬管理、入浴介助、機能維持のためのリハビリなどが必要な患者さんは、もっと気軽に訪問看護を活用して欲しいです」と椎名さんは強調する。

 訪問看護師は、訪問診療医や薬剤師、ケアマネジャー、訪問介護をするホームヘルパーなど在宅医療のチームの調整役にもなる存在だ。各地域でケアを提供する訪問看護ステーションの情報は、がん診療連携拠点病院の相談支援センターなどでも入手できる。いざというときに備えて、頼れる訪問看護ステーションがどこにあるのか、ある程度元気なうちに確認しておくとよさそうだ。



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