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レポート

2021/07/13

自分らしく生きるために-知っておきたい・がん介護Vol.5

在宅医療に欠かせない訪問診療医の選び方

福島安紀=医療ライター

 病状が悪化して通院が難しくなったとき、医師が定期的に患者の自宅へ出向いて診療や健康管理をするのが訪問診療。がんの患者が自宅で終末期を過ごす際には、訪問診療が不可欠になる。都市部では在宅医療専門のクリニックも増えてきているが、訪問診療医はどのように選べばよいのか。首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で17カ所、沖縄県で1カ所の在宅療養支援診療所を運営しチームで6000人以上の患者の訪問診療をする、医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳さんに聞いた。


在宅療養支援病院・診療所は全国に1万4000カ所以上

 訪問診療を利用できるのは、家族が付き添えば通院できる人も含め、基本的には1人での通院が困難な人だ。介護保険のように要介護認定などの必要はなく、基本的に病気や障害で通院が難しくなった人なら、子どもから高齢者まで年齢に関係なく訪問診療は受けられる。主な担い手となるのは、必要に応じて他の施設と連携しながら24時間体制で訪問診療や訪問看護が可能な体制を整えている「在宅療養支援診療所」か「在宅療養支援病院」だ。ちなみに、病院は入院ベッド数が20床以上、診療所は入院施設がないかあっても19床以下の医療機関。厚生労働省によると、2019年3月末現在、在宅療養支援病院は全国に1405病院、在宅療養支援診療所は1万4193カ所ある。

佐々木淳さん

 「在宅医療は人生の最終段階に近い人たちが、医学的には不安定な状態だけれども、患者ではなく1人の人間、生活者として住み慣れた家や施設で暮らし続けることを支える道具です。ほとんどの地域で、健康保険による訪問診療と訪問看護、そして介護保険による訪問介護や福祉用具のレンタルなどを活用すれば、がんの患者さんが心穏やかに自分のペースで最期まで自宅で過ごすことが可能になってきています」と佐々木さんは話す。

「機能強化型」なら緊急時や看取りの経験が豊富な可能性が高い

 入院・通院治療をしている患者が訪問診療医を探すには、病院の担当医や地域連携室、相談室などから紹介を受けるか、住んでいる市区町村の地域包括支援センターで相談する方法がある。介護保険を利用している人ならケアマネジャーに相談する手もある。すでに訪問診療を依頼したい医療機関が決まっているのなら、これまでの経過や現在の病状がわかる医師の紹介状を持参してその医療機関に相談するとスムーズだ。

 最寄りの在宅療養支援病院・診療所は、日本医師会の地域医療情報システム(https://jmap.jp/facilities/search)で確認できる。在宅療養支援病院・診療所には、機能強化型・単独型(在宅療養支援病院・診療所1)と機能強化型・連携型(同2)、従来型(同3)の3つのタイプがある。機能強化型・単独型は、その医療機関だけで、(1)在宅医療を担当する常勤の医師3人以上、(2)過去1年間の緊急往診の実績が10件以上、(3)過去1年間の看取りの実績または超・準超重症児の医学管理の実績のいずれかが4件以上――、この3つの基準を満たしている医療機関だ。

 機能強化型・連携型は、他の在宅療養支援病院・診療所と患者の情報を共有し、連携して緊急時や必要時に訪問診療ができる体制を整えている。連携型は、(1)在宅医療を担当する常勤の医師が連携内で3人以上、(2)過去1年間の緊急往診の実績が連携内で10件以上・各医療機関で4件以上、(3)過去1年間の看取りの実績が連携内で4件以上、(4)各医療機関で看取りまたは超・準超重症児の医学管理の実績のいずれかが2件以上――の4つの基準を満たすことが条件になる。

 病状がある程度安定しているときには、訪問診療は1~2週間に1回、決まった曜日に医師が訪問して診療するが、緊急時に24時間365日体制で対応するには、1人の訪問診療医だけで対応するのは難しい。そのため、常勤医が3人以上などチームでの訪問診療体制が求められる。ただし、機能強化型の単独型と連携型を合わせても機能強化型の在宅療養支援病院は552カ所、在宅療養支援診療所は3293カ所とまだ少ないのが現状だ(19年3月末現在)。

よく話を聞いてくれ、オピオイド使用経験があることも重要

 「近くに在宅療養支援病院・診療所が複数あるなら、話をきちんと聞いてくれて話しやすい訪問診療医のいる医療機関を選ぶことが重要です。人間同士なので相性のようなものもあると思います。また、がんの患者さんの場合は、痛みや呼吸苦などのコントロールをする緩和ケアが大切なので、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の使用経験があって24時間365日連絡が取れることも必須条件になります。できたら最期まで住み慣れた自宅で過ごしたいと考えているなら、機能強化型・単独型、または機能強化型・連携型の在宅療養支援診療所で、がんの患者さんの在宅看取りの経験が豊富なところに訪問診療を依頼するとよいのではないでしょうか」。佐々木さんは、そう強調する。 

 機能強化型の在宅療養支援病院・診療所の中でも、「在宅緩和ケア充実病院・診療所」になっている医療機関は、がんの終末期の患者の診療実績が多い可能性が高い。在宅緩和ケア充実病院・診療所とは、(1)過去1年間の緊急往診の実績が15件以上かつ在宅での看取りの実績が20件以上、(2)末期のがん患者であって、鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しないものに、患者が自ら注射によりオピオイド系鎮痛薬の注入を行う鎮痛療法を実施した実績が過去1年間に2件以上、(3)がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針に準拠した緩和ケア研修会、または、緩和ケアの基本教育のための都道府県指導者研修会等を修了している常勤の医師がいるなど一定の基準を満たした医療機関だ。在宅緩和ケア充実病院・診療所かどうかは、在宅療養支援病院・診療所のホームページなどで確認するとよいだろう。

 なお、在宅療養支援診療所ではなくても、長年診てきたかかりつけの患者の訪問診療をする医療機関もある。かかりつけ医に相談して訪問診療をしてくれそうなら、その医師に依頼する手もあるわけだ。その医師が24時間体制で在宅医療を提供するのが難しいのであれば、診療所間の連携を通じて悠翔会在宅クリニックのような在宅療養支援診療所に休日や夜間の緊急時にバックアップしてもらうことも可能だという。

在宅緩和ケアを希望するなら通院できるうちから準備を

 「在宅医療の導入は人生の最終段階に入ることを実感するプロセスなので、ギリギリまで通院して治療を受けたいと考える患者さんは少なくありません。しかし、がんの患者さんの多くは、亡くなる2週間から1カ月前に急激に身体機能が低下します。その時点で在宅医療に移行しようとしても、家族の気持ちの準備ができず、残された時間をご本人の望む場所で過ごせないことがあります。がんが他の臓器へ転移して完治が難しい状態になった時点で、その先の見通しがどうなるのか担当医に聞き、積極的な治療ができなくなったとき残された時間をどこで過ごすのか考え、家族にも自分の希望を伝えておくとよいでしょう」と佐々木さんは指摘する。

 積極的な治療を行う病院では、最後の薬物療法が終わるまで終末期が近づいていることを知らされない場合もある。がんを小さくするための治療に取り組んでいるときには考えたくないことだが、いずれは在宅医療を受けたいと思っているなら、ある程度元気なうちに、念のため、がんの緩和ケアができる在宅療養支援病院・診療所が近くにあるのかもチェックしておくと安心だろう。悠翔会の在宅クリニックでは、通院できる状態のうちに緩和ケア外来で将来的に在宅医療を考えている患者を診療して自宅でどう過ごすかイメージできるようにし、病院へ通うのが大変になってきたらスムーズに訪問診療に移行できるようにしているという。

 新型コロナウイルス感染症対策で面会を制限している一般病院や緩和ケア病棟も多いため、通院が難しくなった時点で在宅医療を希望する人が増えている。自宅では家族やペットと共に残された時間を自由に過ごせる。一般病院や緩和ケア病棟から家へ帰ったらそれだけで苦痛が和らぎ、オピオイドの量が減らせたり、食欲がなくなっていた人が食べられるようになったりする場合もある。安心して在宅生活を送るためにも、頼りになる訪問診療医のいる医療機関を見つけることが重要だ。


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