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レポート

2021/06/15

自分らしく生きるために-知っておきたい・がん介護Vol.4

介護保険で利用できる在宅サービスは?

福島安紀=医療ライター

 介護保険は65歳以上で介護が必要な状態になったとき、1~3割の自己負担で介護サービスを利用できる制度だ。40~64歳は、がんで回復の見込みがないと主治医に判断された場合など特定疾患の人が対象になる。住んでいる市区町村へ介護保険申請をして「要介護認定」を受けたら、ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながらどのサービスを利用するか検討する。介護保険で利用できる在宅介護サービスにはどのようなものがあり、どの程度費用がかかるのか。


居宅介護支援事業者に依頼し利用者の希望に沿ったケアプラン作成を
 
 介護保険サービスを利用するためには、居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)に依頼して、ケアマネジャーに介護サービス利用計画書(ケアプラン)を作成してもらう必要がある。まずは、市区町村の窓口や地域支援包括支援センターで居宅介護支援事業者のリストをもらい、その中からどの事業者に依頼するかを選ぶ。

 利用者の立場に立ってさまざまなサービスを組み合わせたケアプランを作成するケアマネジャーは、満足のいく在宅療養を受けるために欠かせない重要な存在だ。近所の人が介護保険サービスを受けていたり、すでに訪問看護や訪問診療の依頼先が決まっていたりするなら、評判のよいケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者を聞くとよいだろう。なお、ケアプランの作成費用は、今のところ介護保険で賄われており、利用者の自己負担はない。

 介護保険で利用できる在宅サービスには、訪問介護▽訪問看護▽訪問入浴介護▽通所介護(デイサービス)▽通所リハビリテーション▽短期入所生活介護(ショートステイ)▽福祉用具貸与▽福祉用具購入などがある。

訪問介護は利用時間や住んでいる地域で料金が異なる

 訪問介護は、利用者ができる限り自宅で自立した生活ができるように、訪問介護士(ホームヘルパー)が、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助をするサービスだ。利用料は、身体介護か生活介助、利用時間、住んでいる地域によって異なる(表1)。全国の自治体は1~7級地とその他の8種類に分けられており、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護などは、1単位10~11.4円で計算する。例えば、東京23区内は1単位が11.4円なので、30分以上1時間未満の身体介護を受けた場合、1回の利用料金は1割負担の人で1回451円だ。

 また、訪問入浴介護は、看護師と介護職員が利用者宅を訪問し、介助しながら持参した浴槽で入浴できるようにするサービス。訪問入浴介護費は1回1260単位で、自己負担額は1割負担の人で1260円(1単位=10円で計算)になる。

 訪問看護では、看護師が自宅を訪問し、血圧、脈拍、体温などの測定、病状や痛みのチェック、排泄、入浴の介助、清拭、リハビリ、在宅酸素やカテーテルの管理などをする。訪問看護には、介護保険によるものと健康保険によるものがあり、要介護認定を受けている人は優先的に介護保険を使うことになっている。ただ、がんが治る見込みがなくいつ急変してもおかしくないと判断されている場合などには頻繁に看護師が訪問する必要があるため、医療保険を使って訪問看護を利用する。

 介護保険の自己負担割合は40歳~64歳までの人は1割だが、65歳以上の人は、本人と同一世帯の65歳以上の人の合計所得によって1~3割負担に分けられる(表2)。介護認定を受けると、自己負担の割合を記した介護保険負担割合証が市区町村から交付される。

福祉用具のレンタル、購入、住宅改修にも介護保険が活用できる

 介護保険による在宅サービスの中で、がんの患者さんに最も利用されているのは、福祉用具の貸与だ。特殊寝台(介護用ベッド)とその付属品、床ずれ防止用具、手すり、スロープ、歩行器、車椅子などのレンタルが1~3割の自己負担で受けられる。ただ、介護保険では基本的に、福祉用具の貸与は、要介護2以上の人しか受けられない。しかし、がんの急速な状態悪化などで短期間のうちに日常的に起き上がりや寝返りなどが困難となることが確実に見込まれる場合には、要支援か要介護1でも、介護保険を使って福祉用具のレンタルが受けられる。福祉用具のレンタル料は、商品によって上限金額は決められているもののレンタル事業者によって料金が異なる。どの福祉用具を利用するかは、レンタル業者にいる福祉用具相談専門員に相談しよう。利用者負担はやはり1~3割で、例えば月1万円の特殊寝台を借りた場合の自己負担額は1割の人で1カ月1000円だ。

 レンタルに向かない入浴時に使うシャワーチェア、ポータブルトイレ(腰掛便座)、簡易浴槽、自動排泄処理装置の交換可能部品、移動用リフトの吊り具の部品といった福祉用具の購入費も介護保険の対象になる。年間10万円を上限に購入費から自己負担割合1~3割分を引いた金額が、介護保険から払い戻される。

 また、要介護認定を受けた利用者が、トイレや風呂場の手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修をするときには、20万円を限度に、その費用の7~9割が介護保険から償還される。対象となる住宅改修は、(1)手すりの取付け、(2)段差の解消、(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、(4)引き戸等への扉の取替え、(5)洋式便器等への便器の取替え、(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修――だ。市区町村で、さらに、浴槽の取り換え、便器の様式化などの住宅改修に対して助成しているところもあるので、住んでいる自治体に問い合わせてみるとよいだろう。

要介護度別の支給単位数の範囲内で希望に沿ったケアプランを作成

 介護保険の在宅サービスが利用できる範囲である支給限度単位数は、要支援1~要介護5まで7段階の要介護度によって異なり、通常は、その範囲内で、どのサービスを利用するか、利用者と家族がケアマネジャーと相談して検討し、ケアプランを作成してもらう。支給限度単位数は、要支援1が5032単位、要支援2が1万531単位、要介護1が1万6765単位、要介護2が1万9705単位、要介護3が2万7048単位、要介護4が3万938単位、要介護5が3万6217単位だ(2021年5月現在)。

 例えば、50代で乳がんが全身に転移し要介護申請をしたAさんは、「要介護1」と認定された。Aさんは、夫と息子と一緒に暮らしているが、2人とも仕事をしているので日中は一人で過ごしていた。最初のうちはまだ抗がん剤治療に通院しており、身の回りのことは自分でできる状態だったので、介護用ベッドと特殊寝台(介護用ベッド)とその付属品、床ずれ防止用具、手すり、車椅子など、福祉用具のレンタルとシャワーチェアの購入に介護保険を使った。

 Aさんは抗がん剤治療をするたびに調子が悪くなることが多くなったので通院治療は止め、訪問診療に切り替えた。その頃から体力や筋力が低下し、入浴後、浴槽から自分では出られなくなった。そのため、福祉用具のレンタルに加え、訪問介護で入浴介助、清拭を週2回利用するようになった。介護の必要度が上がってきた段階で介護保険の区分変更申請をし、「要介護4」に。自分で歩いてトイレへ行くのも大変になったので自室にポータブルトイレを置き、家族が不在になる週3~4日、朝晩30分以上1時間未満の訪問介護(身体介護)を利用し自宅で過ごした。訪問看護は健康保険で利用した。がんは全身に転移し医師には骨折に気を付けるようにと言われていたが、家族と何度か旅行を楽しみ、全身転移が分かってから約2年間在宅療養生活を送り、自宅で息を引き取ったという。

 一方、甲状腺がんが大腿骨に転移し骨折し入院したが、手術ができず車椅子生活になった70代の男性Bさんは「要介護4」と認定され、バリアフリーに自宅を改修して退院した。Bさんは60代の妻と2人暮らしで、歩けなくはなったが着替えなど身の回りのことは自分でできた。妻が「人の出入りが多いと疲れる」と言うので、週2回訪問看護で男性の看護師に入浴介助を受ける以外は自宅での在宅サービス導入は最小限にし、妻の介護疲れを防ぐため、月4~5日、個室の短期入所生活介護(ショートステイ)を利用した。

 短期入所生活介護費は、施設の形態や個室か多床室なのか、要介護度によっても異なり、認知症などの利用者は料金が加算される。Bさんが利用したショートステイは要介護4の人で1日949単位、1割負担で949円(1単位=10円で計算)で、食費が1日1420円、個室料が5150円かかった。新型コロナウイルスの感染拡大前は面会が自由で個室だったので、「ショートステイに入っている間に自分のきょうだいや友人が来てくれて、一緒に少し酒を飲むなど楽しい時間を過ごせました」とBさんは話す。

 このようにケアプランは、利用者本人の希望や家族の状況によって異なる。近年、可能な限り自立した生活や体力、筋力が維持できるようにリハビリの重要性が高まっているが、理学療法士や作業療法士などによる訪問リハビリの利用料金は1回307単位、1割負担の人で307円(1単位=10円で計算)だ。リハビリは訪問看護で実施したり、通所リハビリを利用したりする人もいる。

 できる限り長く自分らしい生活が送れるようにするためには、利用者本人の希望をケアマネジャーに伝えることが大切だ。同居の家族がいる場合には介護者の負担の軽減にも配慮したケアプランを組んでもらうようにしたい。


自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護 Vol.1
がん患者が介護保険を使うには?


自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護Vol.2
介護保険は、いつ頃どこへ申請するの?


自分らしく生きるために-知っておきたい・がん介護Vol.3
要介護度はどう決まる?

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