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レポート

2021/04/20

自分らしく生きるために-知っておきたい・がん介護Vol.3

要介護度はどう決まる?

福島安紀=医療ライター

 40歳以上のがんの患者さんに、電動の介護用ベッド(特殊寝台)などの福祉用具の貸与、訪問介護、訪問入浴などのサポートが必要になったとき、ぜひ、活用したいのが介護保険。介護サービスが1~3割の自己負担で利用できる。ただ、介護保険を利用するためには、申請、訪問調査、要介護認定などの手続きを踏む必要がある。要支援1、2、要介護1~5まで、介護保険のサービスがどの程度利用できるかを左右する要介護度は、どう決まるのか。


訪問調査と主治医の意見書による一次・二次判定で要介護度が決定
 
 介護保険を利用するためには、市区町村の窓口か地域包括支援センターへの申請が必要になる。がんで介護保険が利用できるのは、65歳以上で介護が必要な状態になったとき、40~64歳未満の人なら、がんで回復の見込みがないと診断されたときだ。

 介護保険申請をすると、市区町村の調査員が事前に日程を調整したうえで自宅や病院を訪れ、心身の状態を本人と家族から聞き取る「訪問調査」を行う。進行がんの患者の場合、容態が急激に悪化することもあるため、介護保険申請をした当日や翌日に、訪問調査を実施する市区町村もある。

 訪問調査にかかる時間は30分から1時間程度。その際に「基本調査」として聞かれる内容は全国共通の74項目で、「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会生活への適応」の5分野と、過去14日間に受けた医療行為について調査する。例えば、「寝返り」「起き上がり」については、「(1)つかまらないでできる、(2)何かにつかまればできる、(3)できない」の中から回答を選ぶ形だ。「移乗」「移動」「食事摂取」「排尿」「排便」なども、「(1)介助されていない、(2)見守り等、(3)一部介助、(4)全介助」の中から当てはまるものを回答する。

 市区町村では、その訪問調査の結果と「主治医の意見書」を基に、まずは、コンピュータによる一次判定を行う。主治医の意見書は、市区町村の依頼で作成する。一次判定では、介護老人福祉施設や介護療養型医療施設などに入所・入院している約3500人の高齢者を対象に、「48時間のうちどのような介護をどれくらいの時間受けたか」を調査した結果による「1分間タイムスタディ・データ」から「要介護認定基準時間」の推計値を算出する。次に、保健・医療・福祉分野の学識経験者で構成する介護保険審査会で、一次判定と主治医の意見書、訪問調査での「特記事項」を基に二次判定を行い、介護が必要な状態かどうかと要介護度が決まる。

がん患者が早く介護保険申請をできるような配慮も

 40~64歳のがん患者が介護保険申請をする際、以前は、主治医の意見書に「末期がん」という記載がないと介護保険が利用できなかったが、2019年4月以降は「がん」と記載すれば、受理されるようになった。「末期がん」でないと介護保険申請ができないというのは患者にとって抵抗感があるため申請の遅れにつながりやすく、医療者側にも、「患者の予後を予測するのは難しく、末期がんと明記しにくい」との声があったためだ。ただし、がんの患者すべてに介護保険の利用が認められるわけではなく、「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断するものに限る」とされている。

坂本はと恵さん

 「介護保険を利用して、できるだけ長く自宅で過ごしたいという希望のある患者さんには、抗がん剤治療中であっても、体力が低下して今まで通り家事やこなすのが難しい、医療処置を自宅に持ち帰ることになったが自己管理に自信がないなど、体の変化に応じて介護保険の申請をお勧めしています。また、がんの部位によっては、ある日を境に自力でトイレに行くことが困難になるなど、急激に体調が変化する可能性がある方もいらっしゃいます。そのような場合は、認定調査員にその旨を伝えると共に、主治医の意見書にも書いてもらうようにするとよいでしょう」。国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター副センター長の坂本はと恵さんは、そうアドバイスする。

急激に悪化する恐れがあるがん患者の介護認定は迅速化

 要介護度は、要支援1、2、要介護1~5の7段階。判定結果は、郵送で通知される。介護保険の申請から判定の通知は、一般的に、30日以内に行うことになっている。ただし、がん患者の認定に対しては、厚生労働省老健局老人保健課が、2010年4月、各都道府県及び市区町村等介護保険主管課宛てに「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」と題した通知を出し、要介護認定と介護サービスの提供の迅速化を求めた。

 この通知が出た後、がん患者に対しては、介護保険の申請から1~2週間で要介護認定を行うようになった自治体も多い。しかし、未だに、「母ががんでもう治療ができない状態で、急変する可能性があると医師に言われたから介護保険の審査を急いで欲しいと伝えたのに、要介護認定に1~2カ月かかると言われました」と訴える家族がいる。がん患者に対する要介護認定にかかる期間には、市区町村によって差があるようだ。

 「がんの患者さんで、すぐに介護保険のサービス利用が必要な状態の場合は、認定結果が出る前に、ケアマネジャー(介護支援専門員)に暫定ケアプランを作成してもらい、訪問介護、福祉用具の貸与などの介護サービスの利用を始めることもあります」と坂本さんは話す。

介護の必要量が増えたときには区分変更申請を

 要介護度がどこに当てはまるかによって異なるのは、1カ月に受けられる介護サービスの基準単位数だ。例えば、要介護1と2では2940単位、要介護2と3では7343単位も、利用できるサービスの単位数に差がある。

 受けられるサービスの内容も多少異なり、通常は、要支援か要介護1だと、特殊寝台、特殊寝台付属品など福祉用具の貸与が受けられない。ただ、2010年10月に厚生労働省から通知が出され、「がんの急速な状態悪化等、疾病その他の原因により状態が急速に悪化し、短期間のうちに日常的に起き上がりや寝返り等が困難となることが確実に見込まれる者」については、要支援か要介護1でも、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換機といった福祉用具の貸与が受けられるようになっている。

 「病気が進行して薬物療法も受けられないような状態になっていても、がんの患者さんの場合、認知機能の低下や手足の麻痺といった機能障害が生じていなければ、着替えや排泄など、身の回りのことを自分でできることが多く、介護保険認定の結果は、最初は要介護1~2になることが多いのが実情です。急速に容態が悪化して介護量が増えたときには、要介護度を上げてもらうように、市区町村の窓口へ区分変更申請をすることができます」と坂本さん。

 また、介護認定の結果に納得できなければ、不服申し立てをすることもできる。しかし、がんが進行した状態の患者の場合、残された時間には限りがあることも少なくない。不服申し立ての場合、結果が出るまでに3カ月程度かかるため、認定結果に納得できないというときにも、不服申し立てより早く検討してもらえる「区分変更申請」をする方法もある。

 「がんの患者さんは、状態の急速な悪化が見込まれる場合があるため、多くの自治体では区分変更の迅速化も進んでいます」と坂本さん。介護保険の手続きは煩雑で、がんの在宅医療を支える家族や支援者がイライラすることも多いが、あきらめずに介護保険申請、暫定ケアプラン、区分変更申請なども活用し、できるだけ患者本人が希望に即した療養生活が送れるようにしたい。


自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護 Vol.1
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