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レポート

2021/04/13

第18回日本臨床腫瘍学会学術集会より

多発性骨髄腫治療の今を知る

新規薬剤の登場で微小残存病変(MRD)消失も望める時代に

中西美荷=医学ライター

新規薬剤登場後も移植は予後改善のための重要な治療

 新規薬剤が登場した今、ASCTが本当に必要かどうかを検討した試験が2つ報告されている。1つはASCTとレナリドミド+シクロホスファミド+デキサメタゾン(LCD)療法との比較(Lancet Oncol. 2015; 16(16) : 1617-29)、もう1つはメルファラン+プレドニゾロン+レナリドミド(MPL)療法との比較(N Engl J Med. 2014; 371(10): 895-905)で、OSはいずれもASCT群の方が良好だった。

 また、早期に移植をしても遅れて移植をしてもOSは変わらないという報告があるが、ガイドラインではQOLまで考慮して、早期の移植が推奨されている。

 なお、再発した場合にはサルベージ(救援)療法を行うが、本邦のガイドラインでは、移植ができる患者には、再度、移植を行うことを推奨している。そのため「移植適応の患者では、再発のことも考えて末梢血幹細胞を多めに採取して凍結保存しておくようにしている」(名和氏)。

移植非適応初発多発性骨髄腫には抗体医薬ダラツムマブを含む導入療法

 2019年に初発多発性骨髄腫に対するダラツムマブが承認され、移植非適応患者に対する導入療法としてダラツムマブ+メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ(D-MPB)療法、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd)療法が行えるようになった。

 ダラツムマブはCD38抗原に対するモノクローナル抗体で、多発性骨髄腫細胞のほとんどで高発現しているCD38に選択的に結合して多発性骨髄腫細胞を直接攻撃する。また、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、補体依存性細胞障害作用(CDC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を介して免疫反応を活性化させることで抗腫瘍効果を示す免疫療法でもある(Br J Haematol. 2018; 181(4): 447-459)。

 名和氏は「初発から免疫療法を使用することで、更なる予後の改善が期待できる」と話す。

 ALCYONE試験では、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニンの3剤(VMP)療法に、抗体療法であるダラツムマブを加えた4剤(D-VMP)療法により、3剤と比較してPFS、OSが向上することが報告されている(Lancet. 2020; 395(10218): 132-141)。特記すべきは、導入療法において22.3%のMRD陰性症例が認められたことだという。

 MAIA試験では、レナリドミド+デキサメタゾン(Ld)療法にダラツムマブを加えたDLd療法によって、48カ月PFS率が38%から60%に改善されることが報告されている。DLd療法ではMRD陰性症例が24.2%に達するなど、非常に良好な結果となっている(ASH 2020 #2276)。

 DLd療法については、これまでの標準治療の1つだったBLd療法と直接比較した試験はないが、民間のデータベースを用いて間接的に比較した研究によって、PFSがBd療法やBLd療法を上回ることが報告されている(Am J Hematol. 2020; 95(12): 1486-1494)。

再発・難治性多発性骨髄腫に対するサルベージ療法は選択肢が多いが選ぶのが難しい

 従来、再発・難治多発性骨髄腫(RRMM)に対する治療は、新たな骨病変の出現や貧血の進行、腎障害の悪化などの臨床症状が出現した「臨床的再発」の時点で再開されていたが、多数の新規薬剤を使用できる現在では、M蛋白が増加した「M蛋白再発」の時点で再開される。

 再発・難治性多発性骨髄腫に対するサルベージ療法には、PI、IMiDsを中心に複数の薬剤を組み合わせた多くの治療法がある。

 現在では、2020年に再発・難治性多発性骨髄腫に対して認可された抗体医薬イサツキシマブとポマリドミド、デキサメタゾンを併用するISA-Pd療法や、同じく2020年に承認された抗体医薬ダラツムマブとカルフィルゾミブ、デキサメタゾンを併用するDKd療法も行うことが可能となっている。

 イサツキシマブはダラツムマブと同じ抗CD38モノクローナル抗体で、ダラツムマブと同様の免疫作用に加えて、より強力なCD38の細胞外酵素活性阻害作用を持つとされる。

 ICARIA-MM試験ではISA-Pd療法とPd療法との比較が行われ、PFS中央値はISA-Pd療法群11.5カ月、Pd療法群6.5カ月、ハザード比0.596(95%信頼区間:0.436-0.814、層別ログランク検定 p=0.001)で、ISA-Pd療法群において病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40.4%有意に低減した(Lancet. 2019; 394(10214) : 2096-2107)。

 IMiDsであるレナリドミド耐性となった患者に対するサルベージ療法の選択肢としては、ポマリドミドベースのレジメンとPIベースのレジメンがある。レナリドミド耐性患者が90%近くを占める複数の臨床試験におけるPFSは、いずれも約10〜11カ月であり「どのレジメンを選択するか、非常に難しくなっている」(名和氏)。

 多くの選択肢があるサルベージ療法については、それぞれの直接比較試験が行われておらず、どの治療法がよいのか明らかになっていないという。ただ、ネットワークメタ解析という手法を用いた間接的な比較では、 ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd)療法、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(KLd)療法、エロツズマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(ELd)療法、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DBd)療法などの効果が高いことが示されている(J Clin Oncol. 2017; 35(12): 1312-1319)。

治療選択では高齢者機能評価を参考に

 多発性骨髄腫は高齢者に多い疾患であり、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、チャールソン併存疾患指数(CCI)などの高齢者機能評価(GA)を行い、その結果に応じた治療を選択していく必要がある。

 フレイル(加齢により心身機能・生理的予備能が低下した状態)は多発性骨髄腫の予後や毒性と関連性があり、フレイルの評価は適切な治療を提供する上で有用なツールになりうるとされている(Blood. 2015;125(13): 2068-2074)。

 米国Mayo Clinicの指針(Mayo Clin Proc. 2017; 92(4): 578-598)では、維持療法を行ったかどうか、フィット患者かフレイル患者か、緩徐な再発かどうかなどによって、治療法を分けている。

 たとえばレナリドミド維持療法中に再発したフィット患者では、カルフィルゾミブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(KPd)療法もしくはダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DBd)療法などが選択肢として挙げられている。

 同じレナリドミド維持治療中の再発でも、フレイル患者や緩徐な再発だった場合は、DBd療法またはイキサゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(ICd)療法などが選択肢となる。

抗体医薬は高齢者でも有効で忍容性も良好

 抗体医薬は、高齢者においても忍容性良好で予後も改善することが分かっている。

 再発・難治性多発性骨髄腫を対象に、ダラツムマブを含む治療法について検討したPOLLUX試験(DLd療法とLd療法の比較)およびCASTOR試験(DBd療法とBd療法の比較)では、75歳以上の患者でも75歳未満の患者と同じように、ダラツムマブを加えた治療群において、より良好なPFSが得られている(Haematologica. 2020; 105(2) : 468-477)。

二次治療以降はまだ使っていない薬剤を含む組み合わせの治療法を選ぶ

 二次治療以降は、基本的にはそれまで使用していないPIかIMiDsと抗体医薬を組み合わせた併用療法を行う(Mayo Clin Proc. 2017; 92(4): 578-598)。

 たとえばPIのボルテゾミブ/イキサゾミブとIMiDのレナリドミドに耐性となったdual(double)refractoryの患者に対しては、ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(DPd)療法またはイサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(ISA-Pd)療法や、カルフィルゾミブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(KPd)療法またはカルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(KLd)療法が選択肢となる。

 カルフィルゾミブにも抵抗性となったtriple refractoryの患者に対しては、DPd療法またはISA-Pd療法、あるいはポマリドミド+シクロホスファミド+デキサメタゾン(PCd)療法が用いられる。

 さらにポマリドミドも効かなくなった患者に対する治療としては、メルファランやシクロホスファミドなどのアルキル化剤ベースのレジメン、またはPI+非選択的ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬パノビノスタットが挙げられている。

骨病変に対する支持療法も重要

 多発性骨髄腫では骨髄腫細胞が破骨細胞(古い骨を壊して除去[骨吸収]することで骨の新陳代謝を担う)を活性化し、骨芽細胞(骨を再生する細胞)を抑制する。骨組織が破壊されることにより骨が脆くなり骨痛や病的骨折、脊髄圧迫による麻痺が起こったり、血液中へのカルシウム溶出により高いカルシウム血症となることもある。

 こうした骨病変に対する支持療法も重要で、治療薬としてビスホスフォネート製剤(BP)が用いられている。BPの中でも、ゾレドロン酸はクロドロネートに比べて、骨関連事象の発生率を低下させる(Lancet Oncol. 2011; 12(8): 743-52)だけでなく、OS延長にも寄与すること(Lancet. 2010; 376(9757) : 1989-99)が報告されている。そのため、初発多発性骨髄腫にはゾレドロン酸を使用することが重要だとされる。

 破骨細胞の分化誘導因子RANKと結合するリガンド(RANKL)であるデノスマブも、骨病変に対する治療薬として用いられる。デノスマブは、OS、有害事象(AE)はゾレドロン酸と同等だが、PFSは上回り(Lancet. 2018; 19(3): 370-381)、腎障害併発症例にも使いやすいため、「今後、使用が増えていくものと思われる」(名和氏)。

新たな多発性骨髄腫の治療法として免疫療法に期待

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、体細胞変異が多いがんに対して有効だとされているが、多発性骨髄腫の体細胞変異の頻度は、固形腫瘍よりは少ないが白血病など他の造血器腫瘍よりも多いことが報告されている(Nature. 2013; 500(7463): 415-21)。

 名和氏は、「ICIのほか、二重特異性抗体、二重特異性T細胞誘導、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、抗体-薬物複合体など免疫療法の開発が進められており(BMJ. 2020; 370: m3176)、新たな多発性骨髄腫治療法として期待される」と話した。

 たとえばCAR-T細胞治療法は、患者からリンパ球を採取し、腫瘍抗原を認識するように遺伝子操作したTリンパ球を培養して患者にもどすという治療法で、現在のところ、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と若年の急性リンパ球性白血病が適応となっている。高額であることや、投与までに2〜3カ月を要するというデメリットもあるが、日本でも再発・難治性多発性骨髄腫を対象とする治験が始まっている。

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