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レポート

2021/03/16

自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護Vol.2

介護保険は、いつ頃どこへ申請するの?

福島安紀=医療ライター

 がんの患者さんでも、40歳以上なら介護保険を使って在宅医療が受けられることをご存じだろうか。ただし、誰でもすぐに使える健康保険とは異なり、介護保険は、申請をして「要介護認定」を受けないと使えない制度だ。どのようなタイミングでどこへ介護保険申請をすれば、いざというとき慌てないで済むのか。また、介護保険以外に早めに利用しておくとよいサービスは?

 首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で15カ所の在宅療養支援診療所を運営する医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳さんに聞いた。


急激に身体機能やADLが低下するのががんの特徴

佐々木淳さん

 「がんの患者さんの特徴は、病気がかなり進行しても通院、家事、仕事などの日常生活を続けられる身体機能が保たれること。身体機能や日常生活動作(ADL)がゆっくりと低下していく老衰や認知症などの患者さんとは異なり、がんの患者さんは、食欲が落ちて自分でトイレへ行けなくなって食事がとれず話せなくなるといった変化が2週間から1カ月という短い間に急激に起こります。患者さんができる限り最期まで自宅で過ごしたいと考えていても、ご本人が動けなくなってから介護保険申請をして、訪問診療医を探すなど在宅医療の体制を整えるのは難しいのが実情です」と佐々木さんは指摘する。

 急激な容態の悪化に驚いて家族が救急車を呼び、本人の希望とは異なる形で近くの病院に入院させるケースもある。動けなくなった段階で慌てて介護保険申請をしても家族の気持ちの準備と在宅療養の環境が整わず、要介護認定が出て福祉用具のレンタルで介護用ベッドとエアマットを入れたりした翌日に亡くなるというケースも少なくないという。

 制度的に、訪問診療が導入できるのは、通院ができない状態の患者さんとなっている。そのため、病院でがんの治療を受けている間は、がんの患者さんの在宅医療に力を入れる訪問診療医とはつながりにくい。介護保険サービスをはじめ、がんの患者さんの在宅療養を支える仕組みが、通院ができなくなり訪問診療を導入するときになって伝えられるケースがまだ多いことも、がんの患者さんの介護保険申請が遅れる要因となっている。

(佐々木淳氏提供)

著しい体重減少があったら介護保険申請の考慮を

 介護保険が使えるのは、(1)65歳以上の人に介護が必要な状態になったとき、(2)40~64歳で介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定されたときだ。特定疾病は現在がんを含む16種類の疾患で、がんの場合は、「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る」とされている。

 なお、介護保険制度では、65歳以上の人を第1号被保険者、40~64歳までの医療保険加入者を第2号被保険者と呼ぶ。第1号被保険者、第2号被保険者のどちらでも、介護保険によるサービスを利用するためには、市区町村へ介護保険申請を行い、介護が必要な状態であるという「要介護認定」を受ける必要がある。

 「特に、介護保険の申請や在宅医療の体制を整えるのが遅れやすいのが、40代から60代くらいまでの現役世代です。治療を前向きに頑張っているときに、介護保険申請をして人生の最終プロセスに入る準備をするなどということを意識したくないのは当然のことかもしれません。でも、病気が治らないと分かっていて、できるだけ家で家族やペットと心穏やかに過ごしたいと考えているなら、病院への通院が可能なうちに介護保険申請をするなど準備をしておいてもよいのではないでしょうか」と佐々木さんは話す。

 では、どのタイミングで介護保険の申請をするとよいのだろうか。佐々木さんが1つの目安として提案するのは、がんが他の臓器に転移して薬物療法を繰り返し体重が減ってきている段階だ。食欲の低下があったり食べていても体重が減る、あるいは、腹水を抜いたり、食事がとれないから狭窄した十二指腸を拡張したりするなどがんの進行による合併症の治療が必要になった段階で、自宅で快適に過ごすために介護保険申請をしておくと安心だという。最初は、例えば、介護用ベッドやエアマット、手すりなどの福祉用具を介護保険サービスで利用するだけでもよい。

65歳以上は少しでも福祉用具や介護が必要なら申請を

 65歳以上の人の場合は、がんが治る段階かどうかに関わらず、要介護認定を受ければ介護保険サービスが利用できる。例えば、一人暮らしの人が外来で術後の化学療法を受けていて副作用がつらい時期に家事援助や身体介護サービスを利用するということも可能だ。がんの診断と同時に認知機能の低下が発覚し、自宅で生活しながらがんの治療を受けるために介護保険を利用する高齢者もいる。

 介護保険の申請は、本人または家族が、住んでいる市区町村の役所か地域包括支援センターの窓口で行う。申請は、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに代行してもらうこともできる。申請書類は、各市区町村のホームページからダウンロードが可能だ。申請の際に必要な書類は、65歳以上の人は介護保険被保険者証、40~64歳の人は健康保険証、マイナンバー確認書類と写真付きの身分証明書。申請書には、主治医の名前と医療機関、その所在地も記入しなければならないので、申請窓口で書類を記入する人はメモを持参しよう。

介護保険申請からサービス利用までの流れ


早い段階で訪問看護を導入しておくと在宅医療への移行がスムーズに

 「がんの患者さんの場合は、通院はできる状態だけれども倦怠感が強く横になる時間が増えていたり、体重が減り始めたりした段階で、がんの患者さんのケアに慣れた訪問看護ステーションに訪問看護を依頼しておくとよいでしょう。必要に応じて健康観察をしてもらうために訪問看護ステーションとつながっておくと、急に身体機能が低下したときにも慌てないで済みます」と佐々木さんは強調する。

 がんの患者さんの訪問看護は訪問診療や薬の処方などと同様、健康保険で利用できる。がんの患者さんのケアに慣れた訪問看護ステーションの情報は、病院の地域連携室、がん診療連携拠点病院の相談支援センター、各市区町村の地域包括支援センターなどでも得られるという。

 新型コロナウイルス感染症拡大で家族の面会を制限する病院も多い。もしも自分で身の回りのことができなくなったときにどうするのか考え、少し先を見越した準備をしたり家族と話し合ったりしておく必要がありそうだ。


自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護 Vol.1
がん患者が介護保険を使うには?

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