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レポート

2021/02/09

自分らしく生きるために―知っておきたい・がん介護 Vol.1

がん患者が介護保険を使うには?

福島安紀=医療ライター

 新型コロナウイルス感染症の拡大で病院や緩和ケア病棟の面会制限が続いていることから、在宅療養、そして在宅での看取りを選択するがんの患者さんが増えているという。在宅療養をする際、フル活用したいのが介護保険だ。ただし、誰もが使える健康保険とは異なり、介護保険を使えるかどうかには条件があり、まずは住んでいる市区町村への申請が必要になる。進行がんの患者さんは、急激に身体機能が低下することがあり、身の回りのことができなくなったときにどこで過ごすかも事前に考えておきたい。

 このシリーズでは、がんの患者さんが、治療や病気の影響によって自分で身の回りのことができなくなっても、自分らしく生き続けるために知っておきたい制度やコツを探る。


40~64歳のがん患者でも介護保険が使える場合も

 「介護保険は寝たきりや認知症などの高齢者が使うものだと思い込んでいて、がんでも使えるなんて知りませんでした。残された時間をどこで過ごしたいか本人にも聞けないまま、父は亡くなってしまいました。がんでも介護保険が使えると知っていたら、実家で父と一緒に過ごせたかもしれないのに残念です」

 肺がんだった62歳の父親を病院で看取った38歳の亜矢子さん(仮名)は、そう語る。

 がんの患者さんに介護が必要になったときに備えて、知っておきたいのが介護保険制度の利用法だ。介護保険制度は、40歳以上の人が全員加入している公的制度で、65歳以上の人を第1号被保険者、40~64歳までの医療保険加入者を第2号被保険者と呼ぶ。

坂本はと恵さん

 「がんの患者さんが介護保険のサービスを使えるのは、65歳以上で介護が必要な状態になったとき、あるいは、40歳から64歳未満なら、受けている治療が症状緩和など直接、根治を目的としていない場合です。亜矢子さんのお父さんは62歳で第2号被保険者ですが、回復の見込みがないとの説明を受けていたそうですから介護保険が使えた可能性が高いです」

 そう話すのは、国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター/がん相談支援センター・副センター長(がん相談統括専門職)の坂本はと恵さんだ。

介護保険の利用には市区町村への申請が必要

 介護保険で使える在宅サービスには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション(リハビリ)、通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具(特殊寝台、車椅子、床ずれ防止用具、歩行器など)の貸与、腰掛便座(ポータブルトイレ)、入浴補助用具などの特定福祉用具の購入などがある。介護保険を活用すれば1~3割の自己負担で、介護サービスが利用できる。自己負担割合は世帯所得によって異なり、合計所得金額が160万円以上かつ年金収入とその他の合計所得金額が単身者で280万円以上、夫婦世帯で364万円以上の場合は2割。合計所得金額が220万円以上かつ年金収入とその他の合計所得金額が単身者で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上の場合は3割、それ以外の人は1割だ。

 介護保険を利用するためには、住んでいる市区町村の窓口か地域包括支援センターで、本人または家族が介護保険申請をする必要がある。申請は、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに代行してもらうことも可能だ。申請の際には、第1号被保険者の場合は介護保険被保険者証、第2号被保険者の場合は健康保険証、そして、マイナンバー確認書類、写真付きの身分証明書などが必要になる。

がん患者の場合は通常より介護認定が迅速化

 介護保険の申請からサービス利用開始までの流れは、下記の図の通りだ。

介護保険の申請から利用までの流れ(厚生労働省のホームページを参考に作成)

 市区町村の調査員による認定調査は、入院中の病院や自宅で受けられる。要介護認定の判定は2段階だ。全国一律の調査票に基づいた基本調査で1次判定、その結果と訪問調査員の特記事項、「主治医の意見書」を合わせて市区町村の介護認定審査会で審査する2次判定で、「非該当(自立)」、「要支援1、2」「要介護1~5」のどれに該当するか判定される。

 なお、介護保険の申請をしてから認定結果が通知されるまで通常は約1カ月程度かかるが、がんの患者さんの場合には急激に容態が悪化することがあるため、厚生労働省が都道府県と市区町村に対して2010年に通知を出し、介護保険認定の迅速化を求めている。そのため、市区町村によっては、申請したその日に訪問調査を実施し、1週間後くらいに要介護度の結果の通知が行われるところもある。また、すぐに在宅介護サービスの利用が必要な場合は、要介護認定を受ける前に居宅介護事業者のケアマネジャーに「暫定ケアプラン」を作成してもらい、サービスを利用始めることも可能だ。

訪問診療をしてくれる在宅医を決めることも重要

 「在宅療養のメリットは、住み慣れた家で自分らしく過ごせることです。40歳以上の患者さんで回復の見込みがないとされて自宅での療養を希望されている場合、あるいは65歳以上で、がんの手術の後、人工肛門になったり心身の機能が低下したりして訪問看護サービスなどを利用したほうがよいと考えられる場合には、早めに介護保険申請をすることをお勧めします。申請の仕方がわからなかったら、かかっている医療機関の看護師、がんの治療を受けている病院の相談室、がん診療連携拠点病院の相談支援センター、地域包括支援センターなどで相談しましょう」と坂本さんは強調する。

 また、がんで介護が必要になったとき、介護保険の申請と同じように重要なのは、定期的に訪問診療をしてくれる在宅医を見つけることだ。24時間連絡が取れる体制で訪問診療を行う「在宅療養支援診療所」など、訪問診療に力を入れる医療機関は増えているが、地域によっては在宅医が限られる場合もある。

 「訪問診療医は、ケアマネジャーと連携しながらがんの患者さんの在宅療養を支えてくれる存在です。訪問診療を行う医療機関を選べる場合には、在宅緩和ケアなどがんの患者さんの診療経験が豊富な訪問診療医を選ぶとよいでしょう」と坂本さん。訪問診療を行う医療機関の情報は、 全国在宅療養支援医協会のホームページや最寄りの地域包括支援センター、病院の相談室、がん診療連携拠点病院の相談支援センターなどで入手できる。

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