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レポート

2021/01/26

第61回日本肺癌学会学術集会より

進行非小細胞肺がん治療の主軸は免疫チェックポイント阻害薬へ

早期の増悪や長期奏効例の少なさといった弱点を補うパートナーは?

中西美荷=医学ライター

腫瘍免疫のより早期に作用する免疫チェックポイント分子CTLA-4を阻害

 抗PD-1/PD-L1抗体に追加する薬剤として、もっと現実的なのは抗CTLA-4抗体イピリムマブである。

 PD-1は、活性化したT細胞が癌細胞を攻撃する腫瘍免疫の、最終段階ともいえる“エフェクター期”に関与する免疫チェックポイント分子。これに対してCTLA-4は、より早期の段階である“プライミング期”に関与するとされる。 プライミング期には、T細胞は樹状細胞から抗原提示を受けて、どの抗原を非自己として認識するのかを教育され、活性化される。

 腫瘍免疫の異なる段階で作用するPD-1、CTLA-4というふたつの免疫チェックポイントを両方とも阻害することで、より高い治療効果を得ようとする考え方である。

抗PD-1/PD-L1抗体+抗CTLA-4抗体で長期奏効例は増えるが初期増悪は残る

 第3相試験CM227では、EGFR/ALK 野生型の未治療NSCLCのPD-L1≧1%集団に対するプラチナ併用化学療法(化学療法群)とニボルマブ単剤(NIVO群)もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法(NIVO+IPI群)、PD-L1<1%集団に対するプラチナ併用化学療法(化学療法群)とニボルマブ+プラチナ併用化学療法(NIVO+化学療法群)もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法(NIVO+IPI群)が比較された。

 主要解析結果はすでに報告されており、2020年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、3年の長期追跡データが報告された(Surech S Ramalingham et al., ASCO2020 #9500)。林氏が「特筆すべき」としたのは、PD-L1<1%集団において、NIVO+IPI群では現在の標準治療であるNIVO群やNIVO+化学療法群に比べて長期奏効例が多い可能性が示唆されたことである。

 追跡期間中央値43.1カ月における解析で、3年PFS率はNIVO+IPI群13%、NIVO+化学療法群8%、化学療法群2%、3年OS率はNIVO+IPI群34%、NIVO+化学療法群20%、化学療法群15%だった。

 ただ、「化学療法を用いないICIだけの治療(NIVO+IPI群)では最初の3カ月で4割程度の患者がPDとなっており、やはりICI特有の初期増悪は問題点として残されている」(林氏)。

ICI 2剤併用でも残された初期増悪打破のために化学療法を併用

 この初期増悪を打破すべく検討されているのが、ニボルマブ+イピリムマブと化学療法の併用である。第3相試験CM9LAにおいて、ニボルマブ+イピリムマブに2サイクルの化学療法を加えたICI 2剤+化学療法群は、プラチナ併用化学療法(化学療法群)と比較してOS、PFSの有意な改善を示した。

 追跡期間中央値12.7カ月におけるPFS中央値はICI2剤+化学療法群6.7カ月、化学療法群5.0カ月でハザード比0.68(95%信頼区間 0.57-0.82)、OS中央値はそれぞれ15.6カ月、10.9カ月でハザード比0.66(95%信頼区間 0.55-0.80)だった(Martin Reck et al., ASCO 2020 #9501)。

 CM9LA試験は、まだ追跡期間が短いが、たとえばニボルマブ+イピリムマブ療法が標準治療として認識されているメラノーマでは、3年OS率がニボルマブ単剤の52%に対してニボルマブ+イピリムマブ療法では58%で、イピリムマブの併用により6%改善することが示されている(Wolchok JD et al., N Engl J Med. 2017; 377(14): 1345-1356)。

 林氏は、「イピリムマブは長期奏効に関して期待される薬剤であり、今後、長期追跡によりイピリムマブの特徴が生かされているのかどうかを確認する必要がある」とし、「NSCLCでも(メラノーマと)同様のこと(長期生存の改善)が再現されるのか、またそもそも何%の改善が得られればイピリムマブ併用の意義があるかを考える必要がある」との見解を示した。

 またこの治療法には毒性についての懸念もあるという。予想の範囲内ではあるものの、ICI 2剤+化学療法群では皮膚障害、内分泌障害、腸炎、肝障害などの免疫関連有害事象(irAE)が高率で発現しており、特に毒性中止となった患者割合は、19%に上った(化学療法群は7%)。

毒性が増えてもイピリムマブを追加すべき患者とは?

 一般にイピリムマブを追加すると、抗PD-1/PD-L1抗体単独に比べて皮膚や内分泌、消化管や肝臓のirAEが増えることが知られている。

 たとえばCM227試験におけるNIVO+IPI群、NIVO群それぞれにおけるirAE(全グレード/グレード3-4)は、皮膚障害が34.0/4.2%、21.1/1.0%、内分泌障害が23.8/4.2%、13.0/0.5%、消化管障害が18.2/2.4%、12.8/1.0%、肝障害が15.8/8.2%、10.7/3.8%だった(Hellmann MD et al., N Eng J Med 2019; 281: 2020-2031)。

 林氏は、「イピリムマブを、毒性を増やしてでもあえて追加するかどうかを判断するためには、化学療法+抗PD-1/PD-L1抗体との比較データ、もしくはイピリムマブを用いるべき集団を選択するためのバイオマーカーの同定も必要」との見解を示した。

 バイオマーカーについては、抗PD-L1抗体デュルバルマブと抗CTLA-1抗体トレメリムマブを併用した第3相試験MYSTICにおいて効果と遺伝子変異量(TMB)との関連性が検証され、TMB-highの方が抗CTLA-4抗体の追加効果が高い可能性が示唆されている(Peters S et al., AACR 2019 #CT074)。

 またメラノーマでは血清中の可溶性CTLA-4濃度が高い方がイピリムマブの有効性が高いという報告がある(Pistillo MP et al., Cancer Immunol Immunother 2019; 68(1): 97-107)。

 しかし現時点においてイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)の明確なバイオマーカーは存在せず、さらに検討していく必要があるという。

ICIの効果を上げるためにはirAEのマネージメントも重要

 一方、ニボルマブでは有効性とirAEの発現が相関することが、さまざまな腫瘍に対するさまざまな治療で報告されている。林氏らも2次治療以降でニボルマブを投与されたNSCLCの134例を対象として、投与開始後6週までにirAEを認めた患者(irAE群)と認めなかった患者(無irAE群)の予後を比較し、irAE群においてPFS、OSが明らかに良好だったことを報告している。
 
 PFS中央値はirAE群(44例)9.2カ月(95%信頼区間4.4-未達)、無irAE群(61例)4.8カ月(95%信頼区間:3.0-7.5)、OS中央値はirAE群(46例)未達(95%信頼区間:12.3-未達)、無irAE群(61例)11.1カ月(95%信頼区間:9.6-未達)だった(ログランク検定でそれぞれp=0.04、p=0.01)(Haratani K et al., JAMA Oncol. 2018; 4(3): 374-378)。

 林氏は、メラノーマなどでは抗CTLA-4抗体でもirAEと有効性が相関するとの報告があることに触れ、有効性を上げるために併用療法を行うとすれば、それに伴いirAEも増えることが予想され、今後、irAEマネージメントの重要性がさらに高まることを指摘した。最近では、irAE マネージメントについても臨床試験での検証が行われるようになってきているという。

 たとえばイピリムマブ併用療法では消化管障害である腸炎が多いことが知られているが、irAE腸炎発症モデルマウスを用いた実験では、抗TNFα抗体を予防的に併用投与することにより、抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体の効果を減弱させることなく、炎症の指標とした腸管壁の肥厚が抑制されたことが報告されている(Perez-Ruiz E et al., Nature 2019; 559(7756): 428-432)。

 この成績をもとに、現在フランスでは、抗TNF-α抗体の予防的投与の安全性と効果を検討する第1相試験TICIMEL が進行中である。

“Cold Tumor”でも免疫チェックポイント分子の阻害は有効か?

 がん細胞は、免疫細胞に発現しているPD-1 やCTLA-4 などの免疫チェックポイント分子を利用して抗腫瘍免疫応答を抑制することで、免疫細胞からの攻撃から逃れ、増殖する。ICIは、免疫チェックポイントを阻害することによって免疫応答を復活させるような薬剤である。

 ICIの弱点を補うパートナーが盛んに研究されているが、そもそも、なぜ長期奏効例が限られているのか、その原因を探るような研究も行われている。

 林氏らは近畿大学における検討で、Treg表面に発現する酵素で、免疫抑制性のアデノシンの生成を促進して腫瘍微小環境中へ放出させることにより免疫活性を抑制するCD73 (Antonioli L et al., Trends in Cancer 2016; 2(2): 95-109、Young A et al., Cancer Discovery 2014; 4(8): 879-888)が、EGFR変異陽性で、特にPD-L1を高発現する腫瘍に多く発現していることを報告している(Isamoto K et al., Clin Cancer Res 2020; 26: 2037-2046)。

 林氏は、「このCD73に限らず、他の免疫チェックポイントに関わるような因子に関しても、PD-L1が高発現しているような、もともと免疫環境が良好な、いわゆる “Hot Tumor”に対して、免疫環境を邪魔するような働きをしているのではないか。また免疫環境が悪い腫瘍(Cold Tumor)に関しては、どう頑張っても免疫環境が低い(ために免疫チェックポイント分子を阻害しても高い効果を得ることはできない)可能性があるのではないか。こうしたことについても、今後、更なる検討が必要」と話した。

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