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レポート

2021/01/26

第61回日本肺癌学会学術集会より

進行非小細胞肺がん治療の主軸は免疫チェックポイント阻害薬へ

早期の増悪や長期奏効例の少なさといった弱点を補うパートナーは?

中西美荷=医学ライター

 これまで進行非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物治療は細胞傷害性抗がん薬と分子標的治療薬の2本柱だったが、新たな柱として免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が加わった。そして現在、ICIを治療戦略の主軸として、どのような薬剤を併用すればICIの弱点を補うことができるかが検討されている。

 2020年11月にウエブ上で開催された第61回日本肺癌学会学術集会における近畿大学医学部腫瘍内科の林秀敏氏による教育講演「免疫療法の課題と最新の話題」の内容を紹介する。


ICIの弱点は初期増悪と長期奏効例が限定的であること

 NSCLCへの最初の薬物治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブの単剤療法は無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)を有意に延長することが、複数の第3相試験において示されている。しかし、抗PD-1抗体単剤療法には、「早期の増悪/死亡例が一定割合存在する」「長期奏効例はあるが、その数が限定的である」という弱点がある。

 ニボルマブやペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体は、腫瘍細胞におけるPD-L1蛋白質の発現(PD-L1 TPS)が高い患者において効果が高いことが期待される。PD-L1 TPS(以下PD-L1)≧50%の集団を対象としたKeynote(KN)024試験では、追跡期間中央値11.2カ月(95%信頼区間:6.3-19.7)におけるPFS中央値がペムブロリズマブ群10.3カ月(95%信頼区間:6.7-未達)、化学療法群 6.0カ月(95%信頼区間:4.2-6.2)で、ペムブロリズマブ群では増悪や死亡のリスクが50%低減される(ハザード比0.50、95%信頼区間:0.37-0.68、p<0.001)ことが示された(Reck M et al., N Engl J Med 2016; 375: 1823-1833)。

 6カ月PFS率はペムブロリズマブ群62.1%(95%信頼区間:53.8-69.4)、化学療法群50.3%(95%信頼区間:41.9-58.2)だったが、PFSイベント(増悪または死亡)は約3カ月まではペムブロリズマブ群の方が多く、PFS曲線は化学療法群よりも下に位置していた。

 KN042試験の追跡期間中央値12.8カ月における解析では、ペムブロリズマブ単剤療法はプラチナ併用化学療法に比べて有意なOSの改善を示した。PFSは、PD-L1≧50%の集団では有意に改善し、12カ月PFS率はペムブロリズマブ群37.1%、化学療法群26.9%だった。しかし、PFSイベントは6カ月付近まではペムブロリズマブ群の方が多く、PFS曲線は化学療法群よりも下に位置していた。

 PD-L1≧1%の集団ではOSは有意な改善が認められたが、PFSに有意差はなかった。12カ月PFS率はペムブロリズマブ群の方がやや高かったものの(28.0% vs. 26.6%)、PFS曲線が交差するのはほぼ12カ月の時点で、それ以前はペムブロリズマブ群の方が下に位置していた(Mock T et al., Lancet 2019; 393(10183): 1819-1830)。

 化学療法ではPFSイベントは経時的に発生し続けるが、ペムブロリズマブ単剤療法では初期のPFSイベント発生が多く、その時期を乗り越えられれば長期奏効を期待できることが示唆される。ただし、その長期奏効を得られる患者は限られている。こうした弱点を打破すべく考えられた治療の1つが、ICIと化学療法の併用である。

免疫力を低下させそうな化学療法は、実は免疫環境をよくする?

 化学療法は免疫力を低下させるというイメージがあるかも知れない。それを、なぜICIと併用しようとするのだろうか? それには2つの理論的根拠があるという(Attili I et al., Crit Rev Oncol Hematol. 2017; 119: 30-39、Gotwals P et al., Nat Rev Cancer. 2017; 17(5): 286-301)。

 1つは、抗がん薬による免疫原性細胞死(ICD)の誘導である。抗がん薬によって細胞が傷害されると、免疫細胞を活性化するシグナルとして働くDAMPsと呼ばれる分子が放出される。樹状細胞がこのシグナルを受け取ると、がん特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導されて、腫瘍細胞を攻撃・殺傷する。

 もう1つは、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)や制御性T細胞(Treg)、あるいは腫瘍増殖に促進的に作用するM2マクロファージなど、(腫瘍)免疫を邪魔するような細胞を抗がん薬によってたたくことで、免疫環境をよくしようとすることである。

 林氏によれば、これらの理論は臨床検体を使用したトランスレーショナルリサーチ(基礎と臨床の橋渡し研究)で証明されているわけではない。ただ、すでに行われている臨床試験において、化学療法との併用で早期の増悪・死亡例が抑制されることが示唆されている。

 たとえば、KN189試験の最終解析(追跡期間中央値18.7カ月)におけるPFS中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群9.0カ月、化学療法群4.9カ月でハザード比は0.49(95%信頼区間:0.41-0.59)だった(Gadgeel SM et al., ASCO2019 # 9013)。PFS曲線は初期からペムブロリズマブ+化学療法群が上に位置していて、化学療法との併用により初期の増悪・死亡例が抑制されたことが示唆される。

 24カ月PFS率はペムブロリズマブ+化学療法群で22.2%、化学療法群3.4%と報告されているが、KN042試験のPD-L1≧1%集団におけるペムブロリズマブ単剤療法での2年PFS率が22%だった(Mok TSK et al., ELCC2019 #542)ことに林氏は触れ、「ICI単剤での2年PFS率が10〜20%程度であることを考えると、(化学療法との併用により)長期奏効割合が改善されているかどうかに関しては疑問が残る」と話した。

免疫環境を改善する血管新生阻害薬に期待

 こうしたことから、ICIに対してどのような治療を追加すべきかが研究されている。講演では、期待されるものとして血管新生阻害薬と抗TIGIT抗体が紹介された。

 血管内皮増殖因子(VEGF)には、免疫チェックポイントの発現亢進、抗原提示細胞(APC)成熟化の阻害や、MDSCやTregの増強といった免疫抑制作用があることが指摘されている。したがって、VEGFを阻害する血管新生阻害薬は免疫環境を改善すると予想される(Hato T et al., Immunotherapy 2016; 8(3): 299-313)。

 実際、IMpower(IM)150試験では、プラチナ併用化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+抗VEGF抗体ベバシズマブに抗PD-L1抗体アベルマブを追加した4剤併用療法(ABCP群)で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(BCP群)と比較してPFS、OSの改善が認められた。

 追跡期間最短値9.5カ月(中央値ABCP群15.4カ月、BCP群15.5カ月)において、PFS中央値はABCP群8.3カ月、BCP群6.8カ月で層別ハザード比0.62(95%信頼区間:0.52-0.74、p<0.001)、6/12カ月PFS率はそれぞれ67/37%、56/18%と報告されている。また追跡期間中央値約20カ月におけるOS中間解析では、OS中央値はABCP群19.2カ月、BCP群14.7カ月で層別ハザード比は0.71(95%信頼区間:0.64-0.96、p=0.02)だった(Socinski MA et al., N Engl J Med; 378: 2288-2301)。

 ICIとレンバチニブの併用についても検討されている。レンバチニブは、VEGFを含む複数の受容体チロシンキナーゼを阻害する薬剤で、日本では甲状腺がんや肝細胞がんに対してすでに承認済みである。

 さまざまな固形がんを対象とする第2相試験におけるペムブロリズマブ+レンバチニブの奏効率(ORR)は48%で、NSCLCでは21例中7例で奏効が認められた(Taylor MH et al., J Clin Oncol. 2020: 38(11): 1154-1163)。現在、ICIへのレンバチニブ追加効果を検討する第3相試験(NSCLCはLEAP-007試験)が進行中である。

 日本では、西日本がん研究機構(WJOG)による第2相試験WJOG@Beで、PD-L1≧50%のNSCLCに対するベバシズマブ+アベルマブの有効性が検討されている。2020年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された成績はORR64.1%、PFS中央値15.9カ月と非常に良好で、注目を浴びたという(Seto T et al., ESMO2020 #LBA55)。

 ただこれまで、ICIと血管新生阻害薬を併用する意義について、ランダム化試験では検証されていなかった。WJOGでは現在、カルボプラチン+ペメトレキセド+アテゾリズマブを標準治療群として、これにベバシズマブを併用する治療群について検討する第3相試験APPLEを実施しており、すでに症例集積が完了している。

抗TIGIT抗体Tiragolumabの併用が有望か

 TIGITは、活性化もしくは疲弊したT細胞やNK細胞に発現しており、抑制シグナルによってT細胞応答を直接阻害するなど、いわゆる免疫チェックポイント分子として振る舞う(Manieri NA et al., Trends Immunology 2017; 38(1): 20-28)。マウスでの実験ではあるが、抗TIGIT抗体+抗PD-L1抗体の腫瘍縮小効果は、抗PD-L1抗体単独や抗TIGIT抗体単独に比べて有意に高いことが示されている(Johnston RJ et al., Cancer Cell. 2014; 26(6): 923-937)。

 またランダム化第2相試験CITYSCAPEでは、EGFR変異/ALK転座陰性でPD-L1≧1%の局所進行/転移性NSCLCにおいて、抗TIGIT抗体Tiragolumab+アテゾリズマブ(TA群)によってORRおよびPFSの改善が認められた(Rodriguez-Abreu D et al., ASCO2020 #9503)。追跡期間中央値10.9カ月おけるORRはTA群31.3%(95%信頼区間:19.5-43.2)、プラセボ+アテゾリズマブ(PA)群16.2%(95%信頼区間:6.7-25.7)で、PA群に対するTA群の層別オッズ比は2.57(95%信頼区間:1.07-6.14)、PFS中央値はそれぞれ5.4カ月(95%信頼区間:4.2-未推計)、3.6カ月(95%信頼区間:2.7-4.4)で層別ハザード比は0.57(95%信頼区間:0.37-0.90)だった。

 またサブグループ解析では、特にPD-L1≧50%集団において上乗せ効果が高いことが示唆された。ORRは、PD-L1≧50%集団においてTA群66%、PA群24%、PD-L1が1-49%の集団ではそれぞれ16%、18%だった。

 この成績を受けて、Tiragolumab+アテゾリズマブについては、EGFR変異/ALK転座陰性でPD-L1≧50%のNSCLCに対するSKYSCRAPER-01試験や、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)に対するSKYSCRAPER-02試験といった第3相試験が進められている。

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