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レポート

2020/12/01

日本乳癌学会学術総会PAP(Patient Advocacy Program)より

副作用がつらくてもやめないで! 乳がん術後のホルモン療法

続けるための第1歩は、つらいと医師に伝えること

中西美荷=医学ライター

ホットフラッシュに対して抗うつ薬パロキセチンは避ける

 ホルモン療法を受けている患者の50%以上が経験するのがホットフラッシュだ。症状としては、ほてり、のぼせ、発汗等だが、これは化学療法による卵巣機能低下や、LH-RHアゴニスト(リュープリン、ゾラデックス)や、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬などにより、血中のエストロゲン(女性ホルモン)が少なくなることによって起こる。アロマターゼ阻害薬に比べて、タモキシフェン内服中の患者に多いことが報告されており、通常、症状は自然に軽快していくことが多いとされる。

 対処方法としては、服装の工夫や運動などを日常生活に取り入れることに加えて、薬物療法が挙げられる。

 薬物療法として、抗うつ薬のセルトラリン、抗てんかん薬であるガバベンチンは、ランダム化比較試験においてホットフラッシュの軽減効果が認められている。当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸といった漢方薬については、効果があるとの報告もある一方で、ないとの報告もあり、統一された見解はない。また最近、エストロゲンに似た構造を有する大豆イソフラボンは、乳がんの予後には影響しないが、ホットフラッシュの軽減効果があることが報告されている。

 近藤氏が「ホットフラッシュに対する薬物療法でやってはいけないこと」として指摘したのは、抗うつ薬パロキセチンの服用である。ホットフラッシュの軽減効果があると報告されているが、タモキシフェンの代謝酵素であるCYP2D6を阻害する作用があるため、タモキシフェンの効果が減弱してしまう可能性がある。

 もうひとつ避けたいのは、ホルモン補充療法だという。一般的な更年期障害の症状としてのホットフラッシュに対する治療として行われるが、乳がん術後の患者では、ホルモン補充療法を行うことで再発が増加することが複数の研究で報告されている。

54歳以下ならタモキシフェンによる子宮体がん発症リスクは低い

 タモキシフェンの内服では、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスク上昇が知られている。近藤氏は「具体的には(EBCTCの20試験21457例のメタ解析により)、5年内服で2.4倍に増加すると報告されている(相対リスク2.40±0.32、p=0.0002)。ただ54歳以下では、子宮内膜がんの増加はない。55歳以上の年齢に限って、約3倍に増加するという報告がある」として、そのメタ解析の結果を紹介した。

 それによれば、タモキシフェン5年間服用(コンプライアンス80%)による子宮体がん発症の相対リスクは、45歳未満で1.04±0.62(p=1.00)、 45〜54歳1.75±0.55(p=0.25)、55〜69歳2.96±0.44(p=0.0002)だった(EBCTC Lancet. 2011; 378(9793): 771-84)。

 こうした結果を受けて、米国産科婦人科学会では、タモキシフェンと子宮内膜がんについて以下の声明を出している(Obstet Gynecol 2014; 123(6): 1394-7)。

・患者さんにはタモキシフェン内服により子宮内膜の増殖・過形成・がんや子宮肉腫のリスクが上昇するという情報提供を行い、いかなる不正性器出血も精査すべきである。
・タモキシフェン内服中の閉経後女性は、子宮内膜の過形成・がんの兆候がないか、綿密にモニターすべきである。
・タモキシフェン内服中の閉経前女性は、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクを上げるというエビデンスはないので、ルーチンの婦人科ケアを超えてのモニタリングは必要ない。
・子宮体がん高リスク患者でない限り、定期的な子宮体がん検診は、子宮体がんの早期発見に有用であるというエビデンスはないので、推奨されない。

低リスクなのに検査を受けると偽陽性で負のスパイラルに陥ることも

 子宮体がんの検診については、日本産科婦人科学会も同様に、「50歳以上、もしくは閉経後で不正性器出血のある女性、あるいはリスク因子のある女性を対象に、選択的に施行する」との声明を出している。年齢を考慮せずに、無症状の女性にあまねく検診をすることは、有効性が確認できていないことおよび費用対効果の点から容認されないとしている(産科婦人科ガイドライン-婦人科外来編2014)。

 近藤氏は、タモキシフェン内服中は定期的に子宮体がん検診を受けなければいけないと思っている患者も多いが、そのことが逆に “負のスパイラル”につながってしまう可能性を指摘した。

 タモキシフェンは子宮内膜に対する増殖効果があるため、子宮内膜が肥厚する。そのような状態で検診を受けると、偽陽性で「がんの疑い」と診断されてしまい、3カ月〜半年に1回の定期的なフォローが必要となる。その時には、また子宮内膜が増殖していて、また偽陽性と診断されてしまう。そしてまた検査が必要になるという負のスパイラルに陥ってしまう。近藤氏は「このように(偽陽性と)診断されることによる精神的な不安も問題かと思う」と述べた。

関節痛・関節のこわばりには鎮痛薬が有用、鍼治療にも一定の効果

 関節痛、関節のこわばりは、アロマターゼ阻害薬服用によりエストロゲンが枯渇することが原因とされている。その発現率は報告により15~47%とさまざま。内服開始後2〜3カ月以内におこり、治療期間中は継続することが多いとされる。発症しやすいのは閉経後早期(5年以内)の患者である。

 対処方法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)あるいはアセトアミノフェンといった鎮痛薬の内服や、副作用の原因となったアロマターゼ阻害薬を他のアロマターゼ阻害薬やタモキシフェンに変更することなど。

 また近藤氏によれば、米国のSWOGという団体が、アロマターゼ阻害薬内服中の乳がん患者の関節症状への対処法として、鍼治療が有効だと報告している(Dawn L. Hershman et al. JAMA 2018; 321(2): 167-176)。226例を、実際に鍼治療を行う鍼治療群(120例)、経穴でない部位に針を刺すシャム鍼群(59例)、無治療群(57例)の3群に分けて、関節痛や関節のこわばりの変化を調べた研究である。

 14項目について、0-10ポイントで評価する平均簡易疼痛質問票「worst pain」 (BPI-WP)スコアを指標として痛みの改善を検討。対象患者はベースラインにおいて3ポイント以上だった患者で、2ポイント以上の改善を臨床的に意義ある改善とみなした。

 その結果、ベースラインから治療6週後における平均BPI-WPスコアの低下は、鍼治療群2.05 ポイント、シャム鍼群1.07ポイント、無治療群0.99ポイントだった。またベースラインのスコアと施設を補正した後の群間差は、鍼治療群とシャム鍼群で0.92ポイント(95%信頼区間:0.20-1.65、p=0.01)、鍼治療群と無治療群で0.96 ポイント (95%信頼区間:0.24-1.67、p=0.01)で、改善が示されたものの、事前に臨床的意義のある差として規定した2ポイントの差には達しなかった。

アロマターゼ阻害薬服用中は年1回骨密度を測定

 骨密度は、血中エストロゲン濃度の低下に伴い減少する。そのため、閉経によりエストロゲン濃度が低下すると骨密度が減少し、骨粗鬆症発症のリスクが高まる。エストロゲン濃度を低下させるアロマターゼ阻害薬の服用は、骨粗鬆症を助長する可能性がある。したがって、アロマターゼ阻害薬を服用する場合、年1回骨密度を測定し、骨粗鬆症を発症してしまった場合には対処が必要となる。

 対処法のひとつは、アロマターゼ阻害薬内服を継続しながら骨粗鬆症治療であるカルシウム製剤やビタミンD、ビスホスホネート製剤やデノスマブを使用することである。あるいはホルモン療法を、アロマターゼ阻害薬から、骨に対して保護的に働くタモキシフェンに変更することを考慮する。

タモキシフェンによる体重増加を避けるには適切なカロリー摂取や運動に努める

 タモキシフェンを内服している患者に多いのが体重増加である。タモキシフェンのエストロゲン作用によるものと考えられているが、有効な治療法や対処法は確立されていないのが現状だ。

 近藤氏によれば、一般には、体重が5kg増加すると乳癌死亡リスクが1.6倍程度増加することが示されているため、再発予防のためには、適切なカロリー摂取、適切な運動により体重を増加させないことが重要である。

薬剤変更・服用法変更は選択肢だが、タモキシフェン減量は望ましくない

 副作用が出現した時、まずは対症療法を行うが、それでも効果がない場合は、ホルモン療法の薬剤変更も選択肢のひとつになる。服薬により吐き気や頭痛が出るというような場合、服薬時間を朝から就寝前に変えることで抑えられる場合もあるという。

 内服法を変更できる場合もある。タモキシフェンは10mgを1日2回、20mgを1日1回のいずれであっても有効性には差がないが、副作用は10mg1日2回の方の方が若干少ないと報告されている(妹尾亘明ほか、薬理と治療1989;17(7):3605)。

 ただし、タモキシフェンの減量は効果減弱につながると考えられるため勧められないという。タモキシフェンは体内でN-Desmethyltamoxifenもしくは4-hydroxytamoxifenに代謝されることにより効果を発揮する。タモキシフェン1mg、5mgの服用では、20mg服用と比較して、代謝産物の血中濃度も低くなることが報告されている(Decensi A et al., J Natl Cancer Inst. 2003; 95(11): 779-90)。

自身の再発リスクを知ることも大事

 近藤氏は、ホルモン療法に期待される効果は一定だが、実際に発現している副作用の重症度によってリスクとベネフィットのバランスは大きく変わることから、「自身の再発のリスクはどのぐらいで、ホルモン療法によってどれぐらいの効果があるのかを知っておくことが重要」との見解を示した。

 ホルモン療法によって再発は約50%抑制できるが、それぞれの患者で再発の危険性は異なるため、見込まれる治療効果も一人ひとり異なる。たとえば再発リスクが40%であれば、ホルモン療法によりリスクが20%になるが、もともと再発リスクが非常に低く4%だったとすれば、ホルモン療法によるリスク低下は2%にとどまると推測される。

 インターネット上には、再発リスクを予測できる「predict breast cancer」というツールが公開されている。年齢や閉経状態、腫瘍径や核異形度、リンパ節転移(Ki67、ERの状態、HER2の状態)といった情報を入力すると、再発率や、ホルモン療法によってどのぐらいの抑制効果があるのかが、計算されて表示される(https://breast.predict.nhs.uk)。

自分自身にとってのリスクベネフィットバランスを知り、どうしたいか伝えよう

 近藤氏は最後に、「ホルモン療法によって自身が得られる再発、死亡抑制効果の大きさや、副作用とのバランスから継続の必要性についてどう考えるのかなどを、改めて確認していただきたいと思う。副作用が出た時も自己中断するということは避けていただいて、まずはしっかり、ご自分の担当医に相談していただくことが大事かと思っている」と話した。

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