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レポート

2020/07/21

子宮頸がんの治療3. 放射線療法

放射線療法は子宮頸がん治療で幅広い役割

照射技術の進化で局所制御は向上し副作用は低減

八倉巻尚子=医学ライター

 子宮頸がんの治療は、病期によって手術、放射線治療、化学療法が行われる。転移のないがんは手術と放射線治療が中心だが、放射線技術の進歩や化学療法との併用により放射線治療の役割は大きくなっている。一方、子宮頸がんの若年化により妊孕性温存のニーズが高まり、初期のがんの手術として子宮を温存する術式も行われるようになった。化学療法が治療の中心となる転移がんでは、分子標的薬による予後改善、さらに免疫チェックポイント阻害薬が期待されている。

 4月にWEB開催された第72回日本産科婦人科学会学術講演会の生涯研修プログラム「子宮頸がんの治療(手術,化学療法,放射線)」では、子宮頸がん治療の現状が解説された。第3回は放射線治療について、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科の野田真永氏の講演内容を紹介する。


放射線療法はI期からIVA期まで幅広い位置づけ

 子宮頸がんは、国際産婦人科連合(FIGO)による臨床進行期分類でI期からIV期に分けられている。手術療法はI期(がんが子宮頸部に限局)やII期(がんが子宮頸部をこえるが骨盤壁または膣壁下1/3には達していない)の治療として大きな役割を果たす。放射線療法はI期とII期、さらにIII期(がんが膣壁下1/3または骨盤壁に達する)、IVA期(膀胱や直腸の粘膜に浸潤)の治療でも用いられ、「放射線療法は幅広い位置づけとなっている」と野田氏は説明した。IVB期(恥骨と仙骨の間の空間である小骨盤腔をこえて広がる)には全身治療が必要とされるため、化学療法が主な治療となる。

 野田氏は「子宮頸癌治療ガイドライン2017年度版」に基づき、新しい知見も加えて、進行期ごとの放射線療法の役割を解説した。なおFIGOは2018年に新FIGO分類を発表しているが、子宮頸癌治療ガイドライン2017年度版は旧FIGO分類に従っている。

III期・IVA期に同時化学放射線療法が推奨される

 III期、IVA期の子宮頸がんには、シスプラチンを併用した同時化学放射線療法(CCRT)が標準治療として行われている。「子宮頸癌治療ガイドライン2017年度版」においても、III期、IVA期の初回放射線治療として、放射線治療単独ではなく、CCRTが推奨されている(グレードB:行うよう奨められる)。

 90年代にCCRTが登場し、放射線単独療法との比較が行われた。18の無作為化比較対照試験(RCT)のメタ解析の結果、CCRTのほうが局所制御に優れ、生存率も向上させることが示された(J Clin Oncol. 2008; 26:5802-5812)。子宮頸がんの組織型は扁平上皮がんと腺がんがあるが、上記の研究で腺がんでもCCRTの有用性が確認されている。ガイドラインではIII期、IVA期の腺がんにCCRTが推奨されている(グレードB)。

 日本でも第2相試験のJGOG1066試験で、局所進行子宮頸がん(III-IVA期)に対してCCRTが良好な成績を示している(Toita T, et al. Gynecol Oncol.2012;126:211-216)。しかし腫瘍が大きいほど局所制御率は下がり、腫瘍径50mm未満では2年骨盤内制御率が85%であるのに対し、70mm超では54%だった。「この試験において、CCRTを持ってしても大きな腫瘍に対しては制御が困難という課題が浮き彫りとなっている」と野田氏は説明した。

腔内照射が改良されて局所制御率が増加、晩期障害は顕著に減少

 その後、放射線療法の進歩により、現在のCCRTの成績は、局所制御率が9割前後であり、「良好な局所制御が特徴となっている」。この良好な局所制御は、体内から放射線を照射する腔内照射の進化によるところが大きいという。従来はA点処方という子宮内の仮想の点を基準点とした線量処方で腔内照射が行われていた。そのためJGOG1066試験では「腫瘍径70mm以内に対しては良好な成績を収めるものの、腫瘍径が大きくなるにつれて、骨盤内制御、言い換えれば子宮頸部の制御が困難となっていた」。それ対してMRIやCT画像といった各種画像検索を駆使して、腫瘍の大きさや形に合わせて照射するなど、「腔内照射は改良され、大きな腫瘍に対しても局所制御を上げることができるようになっていった」。

 さらに近年は、局所制御率の向上に加え、放射線療法による晩期障害も従来法に比べると低減している。直腸や膀胱の障害はグレード3以上の重症例は少なく、国内の報告でも腸管毒性はほぼないといった良好な結果になっている。例えば、外照射と3次元画像誘導小線源治療による腔内照射の併用で、III-IV期子宮頸がんの2年局所制御率は87%、晩期障害はグレード3以上の直腸障害と膀胱障害は各2%だった(Okazaki S, et al. J Radiat Res 2019;60:490-500)。

  子宮頸がんに対する放射線療法の一般的なスケジュールは、IB2期からIVA期まで、総線量50Gy(グレイ)の外部照射(全骨盤照射30Gy/15回、その後、中央遮断照射20Gy/10回)を行い、シスプラチン週1回投与を併用するCCRTが標準となっている。また外部照射の途中から腔内照射を週1回行うが、腔内照射の前にはMRI検査を実施するという。「MRI検査を入れることが、腔内照射をより効果的にするための秘訣でもある」と野田氏は話した。

 外部照射も、腫瘍に放射線を集中させる強度変調放射線治療(IMRT)など進化を見せているが、子宮頸がんに対して腔内照射は必須だという。米国の疫学データベース(SEER)を用いた研究で、子宮頸がんに対する腔内照射の使用の有無で生存を比較したところ、腔内照射を用いた場合のほうが良好なOS延長が認められた(Han K, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013; 87:111-9)。現在、「米国NCCNガイドラインでは腔内照射は必須という位置づけになっている」という。

局所進行子宮頸がんにNACは推奨されない

 局所進行がん(III期、IVA期)に対し、主治療(放射線療法または手術療法)を行う前に化学療法(NAC)を行うことによって、主治療の効果を高める試みがなされてきた。しかし放射線療法と手術療法のいずれの場合も、それに先行するNACは推奨されないというデータが出ている。そのためガイドラインでも主治療前の化学療法は推奨されていない(グレードC2:十分な科学的根拠がなく、日常診療での実践は奨められない)。

 21の無作為化試験のデータを解析した研究の中で、NAC+手術療法は放射線単独療法とほぼ同等の成績であり(Eur J Cancer 2003;39:2470-86)、「間接的にCCRTのほうが優位性はあることが示唆された」。さらに昨年、CCRT単独群とCCRTの前にNAC(シスプラチン+ゲムシタビン)を行う群を比較した臨床試験が報告されたが、CCRT単独のほうが有効であることが示されている(da Costa et al. J Clin Oncol. 2019;3124-3131)。

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