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レポート

2020/07/14

子宮頸がんの治療2. 化学療法

子宮頸がんの根治的治療をサポートする化学療法

進行・再発がんはベバシズマブの上乗せで予後は改善、免疫療法も期待される

八倉巻尚子=医学ライター

 子宮頸がんの治療は、病期によって手術、放射線治療、化学療法が行われる。転移のないがんは手術と放射線治療が中心だが、放射線技術の進歩や化学療法との併用により放射線治療の役割は大きくなっている。一方、子宮頸がんの若年化により妊孕性温存のニーズが高まり、初期のがんの手術として子宮を温存する術式も行われるようになった。化学療法が治療の中心となる転移がんでは、分子標的薬による予後改善、さらに免疫チェックポイント阻害薬が期待されている。

 4月にWEB開催された第72回日本産科婦人科学会学術講演会の生涯研修プログラム「子宮頸がんの治療(手術,化学療法,放射線)」では、子宮頸がん治療の現状が解説された。第2回は化学療法について、奈良県立医科大学産婦人科の馬淵誠士氏の講演内容を紹介する。


子宮頸がん治療における化学療法の位置づけ

 子宮頸がんに対する根治的治療は放射線療法と手術療法であり、子宮頸がんは化学療法に比較的高い感受性を示すものの、根治的治療には含まれていない。「化学療法は根治不能例に対する症状緩和や延命、または根治的治療の効果を増強する目的に使用される」と、馬淵氏は化学療法の位置づけを説明した。

 子宮頸がん治療に使用される化学療法は4つに分けられる。根治可能症例に対する根治的治療(手術療法、放射線療法)の効果を増強するために術前に行う化学療法(NAC)、根治的治療と同時併用して行う同時化学療法、根治的治療の後に行う術後補助化学療法がある。さらに根治できない症例に対して延命や症状緩和の目的で行う緩和的化学療法(Palliative chemotherapy)である。

進行・再発がんの化学療法はプラチナ単剤からタキサンとの併用へ

 根治できない進行・再発がんに対する1次治療は、米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインにおいて、プラチナ系製剤(シスプラチン、カルボプラチン)とタキサン系製剤(パクリタキセル)の併用療法、およびそれら併用療法にベバシズマブを併用したレジメン、さらにトポテカン+パクリタキセルが推奨され、シスプラチン+トポテカンも選択肢となっている。

 これらのレジメンが推奨されている経緯について、馬淵氏は化学療法の開発の歴史を紹介した。子宮頸がんに対する化学療法の歴史は米国の婦人科がん研究グループ(GOG)が発足した1970年代に遡る。1970年から1990年代はシスプラチン単剤が進行・再発子宮頸がんに対する標準レジメンだった。第3相試験のGOG43試験では3種類の用量のシスプラチンが比較され、効果と副作用の観点からシスプラチン50mg/m2が標準治療になった。しかし「シスプラチン単剤の奏効率は30%程度で、効果の持続時間はわずか数カ月程度であり、生存期間をほとんど延長しなかった」。

 1980年代後半からはシスプラチン単剤を上回るレジメンを開発すべく、シスプラチンと他の抗がん剤を併用したレジメンが検討され始めた。それから約20年、様々なレジメンが試みられた。代表的な臨床試験の1つがGOG110試験で、これは化学療法が生存期間を延長することを示した初めての試験である。シスプラチンにイホスファミドを併用することで無増悪生存期間(PFS)が延長することが示された。一方、GOG149試験ではシスプラチン+イホスファミドにブレオマイシンを追加したが、上乗せ効果は認められず、逆に副作用が増強したため、3剤併用療法は否定された。その後、再び2剤併用レジメンの開発が主流となり、GOG169試験でシスプラチン+パクリタキセル、GOG179試験でシスプラチン+トポテカンの有効性が証明された。

 これらのレジメンのうち、どの2剤併用療法が最も有効なのかを検討したのがGOG204試験である。進行・再発がんに対し、4つの2剤併用レジメンが比較された。結果、統計学的な有意差はなかったが、最も高い有効性を示したのが、シスプラチン+パクリタキセル(TP療法)で、これが標準治療レジメンになった(Monk et al. 2009)。

 その後、より副作用の少ないレジメンとして、カルボプラチン+パクリタキセル(TC療法)の有用性が検討された。日本の第3相試験であるJCOG0505試験で、TC療法はTP療法に対して非劣性を示し、TC療法も標準治療レジメンとなった(Kitagawa et al. 2015)。ただしこの試験の事後(Post-hoc)解析で、プラチナ系製剤の投与歴別にTC療法とTP療法を比較したところ、全生存期間(OS)中央値がTP療法は23.2カ月、TC療法は13.0カ月だった。「Post-hocであるためエビデンスレベルはやや低くなるが、プラチナ投与歴のない患者では、TP療法のほうが有効である可能性が示された」。

分子標的薬ベバシズマブによる上乗せ効果、副作用には注意

 2000年代後半からは2剤併用療法に分子標的薬を併用する試験が始まっている。最も開発が進んでいるのは血管新生阻害薬のベバシズマブである。GOG240試験で、TP療法またはトポテカン+パクリタキセルにベバシズマブを上乗せする意義が検討された。その結果、主要評価項目であるOSは、ベバシズマブを上乗せすることにより、約4カ月延長することが示された(Tewari et al. 2014)。この結果を受け、日本でも2016年に進行または再発の子宮頸がんを対象にベバシズマブが承認された。

 なお、ベバシズマブを使用する際は副作用に注意する必要がある。GOG240試験において、「瘻孔、消化管穿孔といった命に関わる副作用」が13%に認められた(Tewari et al. 2014)。瘻孔が認められた全ての症例が放射線治療歴を有していたため、放射線治療歴がリスク因子だろうと推測されている。しかし「日本人ではどうなのか、放射線治療歴のない患者は心配しなくて良いのかという疑問は解決されていない」と馬淵氏は述べた。

 そこで馬淵氏らは近畿地区の14施設を対象にベバシズマブの副作用について調査を行った。「本邦の副作用データとしては最も大きなものの1つだと思う」と馬淵氏。進行・再発子宮頸がん238例が集積され、瘻孔は11例(4.6%)、穿孔は14例(5.9%)に認められた。穿孔症例のうち3例は死亡に至っていた。瘻孔・穿孔症例の84%は放射線治療歴があったが、放射線治療を行っていない場合でも注意は必要で、「ベバシズマブの投与にあたり、十分なインフォームドコンセントが必要になることが示唆される」と話した。

 プラチナ系製剤+タキサン系製剤の次に使用する2次治療については、第2相試験しか存在しないため、優劣は不明だが、ナブパクリタキセルやイリノテカン、ペメトレキセドなど様々な薬剤が検討されている。奏効率は12%前後、PFS中央値は約3カ月、OS中央値は約7カ月で、「有効な治療薬の開発が必要といえる」。

 進行・再発子宮頸がんに対しては、「1次治療の化学療法は、プラチナ系製剤とタキサン系製剤の併用療法やベバシズマブの開発により予後は改善した。一方、2次治療の薬剤は効果が限定的で、今後の開発が期待される」と話した。

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