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レポート

2020/07/07

子宮頸がんの治療1. 手術

子宮頸がんの若年化で変わってきた手術の術式

妊孕性を温存する広汎子宮頸部切除術が普及

八倉巻尚子=医学ライター

CCRTの登場で手術と放射線治療は同等の成績に

 子宮頸がんの術式が進展する一方で、歴史的には放射線治療も発展してきた。キュリー夫妻によってラジウムが発見されたのが1898年。ラジウム治療が始まったのは1903年とされている。「奇しくもWertheinが子宮頸がんの術式の確立に苦闘していた時期と重なる」。その後、放射線機器が登場し、手術と放射線治療の比較試験が行われていった。

 日本でも比較試験が行われたが、手術症例のほうが成績は良い傾向があり、生存率は15%から20%高かった。2001年のデータではIB1期の92%、IIB期でも60%以上に手術が選択されている。しかし1999年に同時化学放射線療法(CCRT)に関する4つの大規模な無作為化比較対照試験(RCT)が報告された。これらの報告の中でCCRTは従来の放射線単独治療に比べて、10%から20%の予後改善が示された。CCRTの登場と放射線機器の改良から「現在では手術と放射線治療は同等の成績というのが共通認識となっている」と話した。

 子宮頸がんの治療内容の推移を見ると、特にIIB期とIIIA期で治療法の変動が起きている。例えば、2007年にIIB期では手術の割合が53.6%、放射線治療が45.6%だが、2017年には手術が38.3%、放射線治療が60.1%と、治療法が逆転した(日本産科婦人科学会腫瘍委員会)。IIIA期では2007年は手術が15.2%、放射線治療が81.8%に選択されていたが、2017年には放射線治療が98.9%を占め、手術することはほぼなくなっている。

 では手術を選択するのはどのような症例なのか。1つには、術後追加治療が必要なく、手術療法単独で治療が完結する症例であること。また放射線治療による医原性閉経が懸念される若年者や、妊孕能温存を強く希望する症例には手術が選択されるとした。「近年の子宮頸がんの若年化、初期子宮頸がんの増加、女性のライフスタイルの変化によって、妊孕性温存治療の必要性が高まっている。これが広汎子宮頸部切除術の普及につながっている」と話した。

妊孕性温存治療としての広汎子宮頸部切除術の適応と安全性

 広汎子宮頸部切除術は、子宮体部と卵巣を残し、子宮頸部と周囲の組織を切除するもの。可能であれば子宮動脈を温存し、基靭帯は骨盤壁惻で切断する。そして残存頸管と膣壁を縫合する。ただし、広汎子宮頸部切除術は広汎子宮全摘出術に比べて切除範囲が狭いため、「最も重要なことは、安全性(予後)を重視した症例選択である」とした。適応条件として、腫瘍径2cm以下、リンパ節転移陰性、間質浸潤2分の1以下、特殊組織型でない、という4項目を全て満たすことが推奨されている(Machida et al. Gynecol Oncol. 2020;156:341-348)。

 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の登録施設を対象に行った予後解析で、4つの条件を全て満たした場合、6年無病生存率は95.5%で、「IB1期の広汎子宮全摘出術の成績に劣らない」。しかし、いずれか1つの条件でも満たさない場合は85.5%と低くなる。「このように子宮温存術を行うには、腫瘍学的予後を保証するため、適応を厳格にすることが何よりも大切である」と岩田氏は強調した。

 広汎子宮頸部切除術は開腹で行う方法と膣から行う方法がある。術後の妊娠率は、膣式では63%、開腹では49%であり(Bentivegna et al. 2016)、「妊娠を希望した症例の約半数が妊娠するというのが現状」。妊娠形式については、慶應義塾大学病院での成績では、自然妊娠は4分の1で、妊娠した症例の約4分の3は生殖補助医療(人工授精・体外受精)を必要としていたという。

 「広汎子宮頸部切除術において、安全性を担保しつつ、分娩成績を向上するためには、婦人科腫瘍専門医、生殖医療専門医、妊娠後の切迫早産を管理するための周産期専門医、出産後を担当する小児科医の協力をはじめ、麻酔科、泌尿器科、病理医など多くの科によるチーム医療が重要であることは留意すべき点であると思う」と話した。

子宮頸がんに対する低侵襲手術の現状

 最後に、子宮頸がんに対する低侵襲手術の現状について、LACC試験を中心に解説された。「LACC試験が発表されるまでは、後方視的解析で低侵襲手術の優位性を報告した発表が多かった」。腹腔鏡下の広汎子宮全摘出術は、開腹手術と比べて無病生存期間や全生存期間は変わりないが、出血量や合併症は少なく、入院期間は短いことが報告されている。日本でも2018年4月に子宮頸がんに対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術は保険適用となっている。

 このため当時、「誰も低侵襲手術式の非劣性を疑う人はいなかった」。ところが2018年にLACC試験の結果が報告された。LACC試験は13カ国33施設が参加した無作為化試験。開腹による広汎子宮全摘出術(開腹手術群)と腹腔鏡下またはロボット支援下の広汎子宮全摘出術(低侵襲手術群)が比較された。対象は、脈管侵襲陽性IA1期、IA2期、IB1期の子宮頸がん。開腹手術群、低侵襲手術群それぞれ366例、計732例の登録を予定していたが、登録終了を待たずに、安全性委員会からの勧告で試験中止となった。解析の結果、低侵襲手術群では開腹手術群に比べて無病生存率が低く、全生存率も下回った(Ramirez et al. 2018)。

 さらにデータベースを用いた大規模コホート試験において、開腹手術1236例と低侵襲手術1225例が比較された(Melamed et al. 2018)。LACC試験と同様に、低侵襲手術では開腹手術よりも有意に生存率が低かった。しかも2006年以降、低侵襲手術が増加するに従って、子宮頸がん症例の生存率が低下する傾向も示された。

 「これら2つの報告によって多くの施設で子宮頸がんに対する低侵襲手術が中止に追い込まれ、日本でも安全性についての再検証が余儀なくされている」。日本産科婦人科学会では、患者説明の際に、国内外の治療成績や自施設の実績などを提示し、文書を用いての説明と情報提供を行うことや、先進医療で認められた適用範囲(IA2期、IB1期、IIA1期)を超えないこと、などの指針を決定している。「これらを遵守することで安全な低侵襲治療の実現を目指している」と岩田氏は話した。

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