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レポート

2020/07/07

子宮頸がんの治療1. 手術

子宮頸がんの若年化で変わってきた手術の術式

妊孕性を温存する広汎子宮頸部切除術が普及

八倉巻尚子=医学ライター

 子宮頸がんの治療は、病期によって手術、放射線治療、化学療法が行われる。転移のないがんは手術と放射線治療が中心だが、放射線技術の進歩や化学療法との併用により放射線治療の役割は大きくなっている。一方、子宮頸がんの若年化により妊孕性温存のニーズが高まり、初期のがんの手術として子宮を温存する術式も行われるようになった。化学療法が治療の中心となる転移がんでは、分子標的薬による予後改善、さらに免疫チェックポイント阻害薬が期待されている。

 4月にWEB開催された第72回日本産科婦人科学会学術講演会の生涯研修プログラム「子宮頸がんの治療(手術,化学療法,放射線)」では、子宮頸がん治療の現状が解説された。第1回は手術について、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の岩田卓氏の講演内容を紹介する。


ⅠA1期とIA2期は円錐切除術で進行期を決定

 岩田氏は講演の中で、病期(臨床進行期分類)によって術式が異なる子宮頸がんの手術について、現在の標準治療を概説するとともに、子宮と卵巣を温存する広汎子宮頸部切除術と、腹腔鏡下での低侵襲手術についても紹介した。

 まずIA期の診断と治療について。「子宮頸がんは、主に内診で判断する項目で進行期を決定するが、IA1期とIA2期は組織学的に診断をする」と岩田氏は述べた。「子宮頸がん取扱い規約」では、IA1期とIA2期の診断は、「摘出組織の顕微鏡検査によって行われるので、病巣が全て含まれる円錐切除標本により診断することが望ましい」と記載されている。また進行期の決定のために行われる子宮頸部の円錐切除術は臨床検査とみなされることも書かれている。円錐切除術では、子宮腟部を底辺として、高さが約1.5cmから2cmの円錐形に子宮頸部を切除する。切除検体は12分割してプレパラートを作成し、鏡検して、病変の局在を確認する。

 IA期は病変の広がりと深さで細分類される。IA1期は、水平方向の広がりが7mm以下で、間質への浸潤の深さが3mm以内のもの。IA2期は、広がりが7mm以下で、間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm以内のものと定義されている。

 円錐切除術によって確定したIA期の治療は、円錐切除術のみから、単純子宮全摘出術、準広汎子宮全摘出術±骨盤リンパ節郭清まである。これら術式の選択には「リンパ節転移と傍子宮結合織浸潤が重要となる」。まずIA1期では、リンパ節転移率は1%以下だが、そのリスク因子は脈管侵襲であり、脈管侵襲陰性例ではリンパ節転移陽性例はないとする報告がある(Sevin et al. 1992)。またIA2期を含むIA期全体において、複数の報告で子宮の周りの傍子宮結合織への浸潤陽性例は認められていないという。

 これらを踏まえて、IA1期の治療は、脈管侵襲が陰性の場合は、「リンパ節転移および子宮外進展の可能性が極めて低いと考えられる」ので、摘出標本で断端が陰性であれば、単純子宮全摘出術、または円錐切除術のみで慎重な経過観察が可能であるとした。摘出標本の断端が陽性の場合は、腫瘍残存の可能性があるので、単純子宮全摘出術が行われる。一方、脈管侵襲が陽性の場合は、「低いながらもリンパ節に転移している可能性がある」ので、原則として骨盤リンパ節郭清は必要で、単純子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出術に加えて骨盤リンパ節郭清が行われる(子宮頸がん治療ガイドライン2017年版)。

 次にIA2期では、リンパ節転移について、805例を対象とした報告ではIA2期のリンパ節陽性率は4.8%であった(van Meurs et al. 2009)。また脈管侵襲陽性例での骨盤リンパ節転移率は12.0%であるのに対し、脈管侵襲陰性例では1.3%だった。

 これらのエビデンスに基づき、IA2期の治療は、脈管侵襲陰性の場合は、「リンパ節転移率は十分に低いと考えて」、準広汎子宮全摘出術のみを行うか、あるいは「安全性を重視して」、骨盤リンパ節郭清を加えた準広汎子宮全摘出術が推奨されている。脈管侵襲陽性の場合は、骨盤リンパ節転移の危険性が高くなるため、骨盤リンパ節郭清は必須とされ、骨盤リンパ節郭清+準広汎子宮全摘出術、あるいは根治的放射線療法が選択される。

IB期とII期の手術は広汎子宮全摘出術、日本と欧米で異なる進化

 IB期は、子宮頸部に限局しており、腫瘍径が4cm以下のIB1期と4cmを超えるIB2期に細分類される。IIA期は、腫瘍が膣壁下3分の1に達しないで、腫瘍径が4cm以下はIIA1期、4cmを超えるものはIIA2期に分類される。IIB期は、傍子宮結合織浸潤があるものの骨盤壁には達しないものである。

 IB期とII期に対する手術は、広汎子宮全摘出術が行われる。ここで岩田氏は、広汎子宮全摘出術の進歩について紹介した。最初に術式が報告されたのは1895年で、子宮頸がんの手術は子宮のみでなく、周囲の結合織も切除する必要があるとされた。その後オーストリアのWertheinによって改良が加えられ、子宮周囲のリンパ節を切除することが重要と唱えたが、「彼のリンパ節切除は腫大しているものを切除するに留まった」。その後、欧米では1919年にLatzkoが、子宮頸部から骨盤壁にひろがる子宮周囲組織である基靭帯の概念を提唱し、これによって所属リンパ節を系統的に郭清する術式が完成した。欧米ではLatzko術式が基本となった広汎子宮全摘出術が現在も行われている。

 一方、日本ではWerthein術式を京都大学の高山尚平が採用し、改良した高山術式を発表。さらに彼のもとで岡林秀一が1921年に基靭帯の概念、そして系統的リンパ節郭清を開発した。「この岡林術式はLatzko術式に比べて根治性が高いとされているが、一方で排尿障害などの副作用も多発する。このため日本では機能温存術が提唱されることとなった」。1961年に小林隆が骨盤神経温存術を提唱して以来、機能温存術は絶え間なく改良され、現在に至っているという。

 「このように同じWerthein術式をもとにしても、Wertheinに直接指導を受けることが可能であった欧米と、術書のみで立ち向かった日本では広汎子宮全摘出術は異なった進化を遂げた。日本と欧米の広汎子宮全摘出術が似て非なるものと言われる所以はここにある」と説明した。

手術後の治療法は病理診断に基づいて

 広汎子宮全摘出術の基本的な考え方は、子宮を周りの組織とともに切除することである。子宮頸がんはリンパ流に乗って、基靭帯リンパ節、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節に進展し、その後外腸骨リンパ節から上方は総腸骨リンパ節、下方は鼠径上リンパ節に進展する。このため「リンパ節転移が陽性といっても、子宮近傍のリンパ節転移なのか、子宮辺傍のリンパ節なのかで予後が明らかに違う」。

 子宮頸がんの予後因子は、組織型、脈管侵襲の有無、リンパ節転移の有無・数・部位、傍子宮結合織浸潤の有無、間質浸潤の深度、腫瘍径が知られている。さらに治療前に決定される「臨床進行期分類も、予後因子の1つに過ぎないということが重要である」と岩田氏。そのため「臨床進行期分類はあくまでも初回の治療方針の決定に用いる分類であって、術後は病理診断に基づく予後因子の検討が重要となる」と話した。

 子宮頸がんの術後の治療法は、術後病理診断に基づいて再発リスク評価を行い、低リスク群、中リスク群、高リスク群に分類する。低リスク群は術後は経過観察となる。中リスク群(4cm以上の頸部腫瘤、深い頸管間質浸潤、脈管侵襲陽性)には術後の放射線単独療法、高リスク群(骨盤リンパ節転移陽性、傍子宮結合織浸潤陽性)には同時化学放射線療法(CCRT)が推奨されている。

広汎子宮全摘出術で起こるかもしれない副作用

 広汎子宮全摘出術では術後に、イレウスや下肢リンパ浮腫、排尿障害といった副作用が起こることがある。イレウスは手術操作による術後癒着が原因で生じる。特に術後補助療法として放射線照射を行った場合に、照射野内の小腸が障害され、高頻度に発生するとされる。しかし小腸への照射量を低減する強度変調放射線治療(IMRT)により、予防効果が期待されている。現在、子宮頸がん術後再発高リスク例を対象としたJCOG1402試験で、IMRTを用いた術後CCRTの安全性が検証中であるという。

 次に下肢リンパ浮腫について。リンパ液は心臓から血液と共に動脈を通り、末梢に運ばれる。末梢で血管外に漏出し、リンパ管を通り、毛細管現象の原理で心臓に戻る。腹腔内のリンパ節郭清を行うと、リンパ液は動脈を通って下肢まで運ばれるが、末梢で漏出したリンパ液はリンパ管が途中で切断されているため戻れず、浮腫が生じる。下肢リンパ浮腫も「術後放射線照射を行った場合、高頻度に発生し、重症例も多い」。子宮頸がんの所属リンパ節のうち、下肢浮腫の発症に最も関連するのは鼠径上リンパ節だが、この部位での子宮頸がんの転移は低率とされる。このため「鼠径上リンパ節に腫大がなく、転移が否定的であれば、一部を温存することで下肢浮腫の軽減が期待できる」と話した。

 また骨盤内には交感神経の下腹神経と副交感神経の骨盤内臓神経があり、これらは骨盤神経叢を形成し、そこから子宮枝と膀胱枝が伸びている。広汎子宮全摘出術の岡林術式ではこの両方を切断するため、排尿障害が生じる。しかし神経温存術式では子宮枝のみを切断して、膀胱枝を温存するため、膀胱機能が温存されるという。

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