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レポート

2020/06/30

第72回日本産科婦人科学会学術講演会より

子宮体癌の手術は低侵襲化、化学療法は分子標的薬の併用や免疫療法など多彩に

妊孕性温存の検討も

八倉巻尚子=医学ライター

分子標的薬や免疫療法の臨床試験で有望な結果も

 子宮体癌を対象に分子標的薬を用いた臨床試験が行われ、米国のNCCNガイドラインでは「年々分子標的薬の記載が増えています」と進氏は言う。進行・再発例に対してTC療法への血管新生阻害薬ベバシズマブの追加や、細胞障害性抗癌剤抵抗性に対してベバシズマブ、進行・再発HER2陽性の漿液性癌に対してTC療法へのトラスツズマブ併用、類内膜癌に対してエベロリムスとレトロゾールの併用などがある。

 無作為化第II相試験GOG86Pでは、初回治療にTC療法を対照群として、ベバシズマブとテムシロリムスを用いた3つの併用療法が検討された。その結果、PFSには有意な改善はなかったが、TC+ベバシズマブを投与し、その後で維持治療としてベバシズマブ単剤を投与した群でのみOSを改善した(Aghajanian C, et al. Gynecol Oncol 2018;150:274-81)。

 mTOR阻害薬リダフォロリムス(ridaforolimus)の第II相試験ではPFSの改善が認められている(Oza AN, et al. J Clin Oncol 2015;33:3576-82)。またHER2/neu陽性の子宮体部漿液性癌においては、TC療法にトラスツズマブを追加する第II相試験で、PFSの有意な延長が示された(Fader AN, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2044-51)。PARP阻害薬についてはまだ臨床的なデータはないものの、基礎研究から細胞障害性抗癌剤の効果を増強することが示唆されているという。

 子宮体癌は、39種類の癌の中で、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の発生頻度が最も高いことが知られている。そのためMSI-HやDNAミスマッチ修復機能(MMR)が欠損しているdMMRの子宮体癌に対して、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されている。

 dMMRの子宮体癌を対象にした免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの試験では、奏効率は52%、病勢制御率は73%と良好な結果が得られた(Dung T, et al. Science 2017;357:409-13)。これら固形癌を対象とした試験結果に基づき、米国では2017年に摘出不可能な、または転移性の腫瘍で他の化学療法が有効でないMSI-HもしくはdMMRの固形癌に対して、臓器横断的にペムブロリズマブが承認された。日本でも2018年に「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対して承認されている。

 またペムブロリズマブのKEYNOTE-028試験では、PD-L1陽性子宮体癌24例において奏効率は13%(部分奏効PR)、病勢安定(SD)が13%であり、効果持続期間は中央値で24.6週だった(Otto PA, et al. J Clin Oncol. 2017;35:2535-41)。

 最近では分子標的薬レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法も行われている。単群の第II相試験KEYNOTE-146/Study111/E7080-A001-111(NCT02501096)で、「MMRが保たれている症例が80%」だったが、主要評価項目の24週時点の奏効率は39.6%だった(Makker V, et al. Lancet Oncol. 2019;20(5):711-18)。「MSI-HやdMMRといった分子プロファイルにかかわらず、全症例に対して40%近い奏効率が得られたということは注目に値する結果でした」と進氏は述べた。レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は第III相試験も実施されている。

 ほかにも免疫チェックポイント阻害薬は検討されている。TC療法とTSR-042を併用する試験ENGOT-EN6/NSGOや、アテゾリズマブとTC療法の第III相試験ENGOT-EN7/MaNGO/AtTEndもある。現在までのところ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験において、dMMR例での奏効率は27-71%、MMRが保たれている症例での奏効率は3-13%であるという。

妊孕性温存療法の最近の動向

 妊孕性温存療法の適応は、類内膜癌グレード1で、筋層浸潤がないこととされている。妊孕性温存療法として、黄体ホルモン製剤(MPA)の効果は、国内の多施設共同前方視的研究で、完全奏効(CR)率は67%で、子宮体癌に限ると55%、子宮内膜異型増殖症では82%だった。「病変は4カ月ほどで消失する場合が多い」が、再発率は異型増殖症で38%、子宮体癌で57%と、高い数値が示されている(Ushijima K, et al. J Clin Oncol. 2007;25:2798-2803)。

 韓国の後方視的試験KGOG2002では、148例において黄体ホルモン製剤でCR率は77.7%、再発率は30.4%(観察期間中央値66カ月)、5年間の無再発生存率は68%であった(Park JY, et al. Eur J Cancer 2013;49:868-74)。

 さらに日本のデータで、MPAにメトホルミンを併用した場合、CR率は81%、3年無再発生存率は89%と、再発率が抑えられていることが示されている(Mitsuhashi A, et al. Ann Oncol 2016;27:262-66)。現在、第III相試験が進行中であるという。

 反復治療も検討されている。韓国の後方視的研究で、CR後に再発した患者に対して、再度黄体ホルモンを投与したところ、85%がCRに至った(Park JY, et al. Gynecol Oncol 2013;129:7-11)。国内でも、ホルモン療法後再発例に対するホルモン療法の試験が行われている。「後方視的研究ですが、子宮内再発に対する妊孕性温存療法に着目した最多の症例数を対象とした研究です」(進氏)。初回治療として、また反復治療としてMPAの投与でCR率はともに90%以上が示された(Yamagami W, et al. J Gynecol Oncol. 2018;29:e21)。なお再発率は反復治療の後のほうが高く、妊娠率は反復治療のほうが低かったが有意差はなかったという。

 子宮体がん治療ガイドラインでは、2013年版では妊孕性温存療法後の再発例に推奨される治療法として、「再度の黄体ホルモン療法の有効性は明らかでなく、日常診療での実践は奨められない」とされていた(グレードC2)。しかし日本や韓国などでのデータの蓄積から、2018年版では、「妊孕性温存療法施行時の病変遺残例あるいは再発例に推奨される治療法」として、子宮全摘出術が薦められ(グレードB)、再発例で妊孕性を強く希望する場合には「厳重な管理のもとに」という条件付きではあるが、「再度の黄体ホルモン療法を考慮する」(グレードC1)と変更されている。

 現在、「子宮体癌、子宮内膜異型増殖症に対する妊孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第II相試験」(JGOG2051)が計画中であるという。

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