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レポート

2020/06/30

第72回日本産科婦人科学会学術講演会より

子宮体癌の手術は低侵襲化、化学療法は分子標的薬の併用や免疫療法など多彩に

妊孕性温存の検討も

八倉巻尚子=医学ライター

 子宮体癌は子宮体部にできる癌で、そのほとんどが子宮内膜から発生するため子宮内膜癌とも呼ばれる。子宮体癌の治療は手術が基本であり、最近は腹腔鏡下手術やロボット支援下手術など侵襲性の低い手術が行われるようになっている。手術ができない場合は化学療法や放射線治療が行われる。化学療法では従来からの細胞障害性抗癌剤に加え、分子標的薬やがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)も期待されている。

 4月にWEB開催された第72回日本産科婦人科学会学術講演会の教育講演で、国際医療福祉大学医学部産婦人科の進 伸幸氏が「国内外における子宮体癌診断・治療の動向」と題して、手術療法、化学療法、そして妊孕性温存療法について解説した。


手術療法は腹腔鏡下手術やロボット支援下手術で低侵襲化の方向に

 子宮体癌の主な治療は手術療法で、一般的に子宮、両側付属器(卵巣・卵管)、リンパ節を摘出する。子宮体癌で転移が広がりやすいリンパ節の範囲(所属リンパ節)には骨盤リンパ節と、骨盤より上の傍大動脈リンパ節が含まれる。標準手術では骨盤リンパ節の郭清が行われるが、転移のリスクが高い場合は傍大動脈リンパ節の郭清も行われることがある。また最近では開腹手術だけでなく、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術など、低侵襲性手術が行われるようになった。

 産婦人科内視鏡手術ガイドライン2019年版において、再発低リスクのI期子宮体癌に対する腹腔鏡下手術は「開腹手術とならぶ選択肢」として推奨されている(推奨度2)。また子宮体癌の前癌病変といわれる子宮内膜異型増殖症に対しても、腹腔鏡下単純子宮全摘出術が選択肢として推奨されている(推奨度2)。一方、明らかな子宮外進展が考えられる場合は、標準治療として腹腔鏡下手術は行わないことが推奨されている(推奨度2)。

 腹腔鏡下手術を検討した代表的な試験がLAP2試験である。およそ2600例を開腹手術群と腹腔鏡下手術群に無作為化割付をして比較された。約5年の観察期間で、累積再発率、累積全生存率に有意な差は認められなかった(Walker JL, et al. J Clin Oncol. 2012;30(7):695-700)。

 子宮体癌における低侵襲手術について、腫瘍学的に予後は開腹手術と有意差がないこと、術後のQOLは良好で周術期合併症頻度は増加しないこと、出血量は少量で、腸閉塞などの術後合併症の頻度は低いことを進氏は解説した。また肥満が高度なほど開腹手術に移行する率が高いことが報告されているが、肥満患者でも開腹手術より合併症は少ないという。

 子宮体癌に対する開腹手術には公的医療保険が適用され、腹腔鏡下手術も傍大動脈リンパ節(PAN)郭清を伴わないものは保険適用であり、PAN郭清を伴うものは2017年から先進医療として行われている。またロボット支援下腹腔鏡下手術もPAN郭清を伴わないものは2018年から保険診療として認められているが、PAN郭清を伴うものは臨床試験として行われている。

 子宮体癌の手術においてはリンパ節郭清を伴うことが一般的だが、リンパ節郭清によって合併症が起こることがある。そこで最初に癌がリンパ節に行き着く場所(センチネルリンパ節)を術中に検索して、センチネルリンパ節への転移がないと病理診断でわかれば、ほかの所属リンパ節の郭清を省略できるのではないかと考えられている。「これがセンチネルリンパ節ナビゲーション手術です」(進氏)。

 現在のところ、センチネルリンパ節ナビゲーション手術は子宮体癌では臨床研究の段階だ。子宮体がん治療ガイドライン2018年版(日本婦人科腫瘍学会編)では、センチネルリンパ節生検結果によるリンパ節郭清の省略について、「病理医の協力体制の整った施設で手技に習熟したチームにより試験的位置付けで行う原則のもと、センチネルリンパ節転移陰性でのリンパ節郭清の省略を考慮する」(グレードC1:行うことを考慮してもよい、あるいは行うことを提案できるが、未だ科学的根拠が十分でない)と位置づけられている。

 臨床試験では良好な結果が得られている。I期と判断される子宮体癌患者を対象としたFIRES試験で、インドシアニングリーン(ICG)を蛍光トレーサーとして用いたセンチネルリンパ節生検で、感度は97.2%、陰性的中率は99.6%であった(Rossi EC, et al. Lancet Oncol. 2017;18:384-92)。センチネルリンパ節が検出された場所として、骨盤リンパ節に同定されたのは86%、傍大動脈リンパ節に23%が確認され、傍大動脈リンパ節だけにみられたのは1%未満だった。また慶應義塾大学のデータでは、検出されたセンチネルリンパ節で最も多かったのは、傍大動脈リンパ節で、そのほか左右の外腸骨リンパ節や閉鎖リンパ節だった(Kataoka F, et al. Gynecol Oncol. 2016;140:400-04)。

術後再発リスクに手術後の化学療法と放射線治療の併用が注目される

 転移巣は、腫瘍径が0.2mm未満を孤立癌細胞(isolated tumor cell)、0.2mmから2mm未満を微小転移、2mmを超えるとマクロ転移と定義される。転移巣のサイズと予後の関係を検討した報告では、マクロ転移でのみ予後は不良だった(St. Clair CM, et al. Ann Surg Oncol. 2016;23:1653-59)。「しかし孤立癌細胞や微小転移が予後に影響を与えないかどうかはまだ明らかになっていません」と進氏。「その理由はこれらの小さい病変は化学療法によってレスキューされている可能性があるためです」。

 子宮体癌は組織型によって予後が異なる。類内膜癌グレード1/2の予後が最も良く、漿液性癌や明細胞癌は予後が悪いといわれている。これらの組織型とリスク因子(筋層浸潤、脈管侵襲、頸部間質浸潤、子宮外病変)によって術後再発リスクは3段階に分けられ(子宮体がん治療ガイドライン)、術後の治療方法が選択される。

 術後補助療法について、子宮体がん治療ガイドライン2018年版では、再発高リスク群には術後化学療法が推奨されている(グレードB:行うよう奨める)。術後化学療法としては、AP療法(アドリアマイシン/ドキソルビシン、シスプラチン)がグレードBで、タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法も提案できるとなっている(グレードC1)。中リスク群には、術後化学療法が提案され(グレードC1)、再発高リスク群と同様の薬剤が提案されている(グレードC1)。一方、低リスク群には術後補助療法は奨められていない(グレードD:行うよう奨めない)。

 術後放射線治療については、骨盤内再発を減少させるための選択肢の1つとして考慮される(グレードC1)という位置付けだ。また術後補助療法として、黄体ホルモン療法は奨められないとなっている(グレードD)。

 再発高リスク群に対する術後補助療法について、第III相試験のJGOG2043試験が日本で行われている。780例を対象に、術後AP 療法を標準治療として、DP 療法(ドセタキセル、シスプラチン)、TC療法(パクリタキセル、カルボプラチン)を比較した。その結果、無増悪生存期間(PFS)は「DP療法がやや上回っていたが、有意差は得られていない」。全生存期間(OS)も3群間で有意差がなかった(Nomura H, et al. JAMA Oncol. 2019;5:833-40)。このため「タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法はAP療法を凌駕する予後の改善は得られなかったが、AP療法に代わる選択肢の1つとして挙げられるというのが結論でした」。ただし、PFSのサブグループ解析で、70歳未満、残存腫瘍がない場合、組織型がグレード1/2、リンパ節転移が陽性の場合はDP療法のほうがAP療法よりも良好だった。またTC療法がAP療法より良好だったのは、リンパ節転移が陽性の場合だった。

 また術後療法として最近注目されているのが、化学療法と放射線療法の併用である。中リスク群を対象とした第III相試験GOG249で、骨盤外照射に対して、腹腔内照射(brachytherapy)後に化学療法(TC療法、3サイクル)を加えることが検討された(Randall ME, et al. J Clin Oncol.2019;37:1810-18)。この結果、2群で無再発生存期間(RFS)、OSで有意差が見られず、「進行期I、II期では、化学放射線併用療法と骨盤外照射の予後は同等で、骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節の転移頻度は併用療法で高かった。そのため骨盤外照射は標準治療として残っています」と進氏は説明した。

 一方、PORTEC-3試験では高リスク群を対象に、骨盤外照射に対して、シスプラチンを用いた化学放射線療法(CCRT)後に化学療法(TC療法、3サイクル)が検討された。この試験では、OSもFFS(failure-free survival:無作為化から再発または死亡までの期間)も化学放射線併用療法のほうが予後を改善していた(Boer SM, et al. Lancet Oncol 2019;20:1273-85)。

 進行期別に見ると、III期ではOSもFFSも化学放射線併用療法のほうが予後を改善したが、I/II期では有意差がなかった。また組織型では、漿液性癌では化学放射線併用療法で有意に予後を改善したが、他の組織型では有意差がなかった。ただし化学放射線併用療法では5年時のグレード2以上の有害事象の頻度が高く、「併用群で有害事象頻度が高かったことは注意すべき点かと思います」と進氏は述べている。また近年、子宮体癌は分子遺伝学的に分類され、米国The Cancer Genome Atlas(TCGA)のデータから4つのタイプに分けられる。上記の試験でも分子分類で効果が比較され、4タイプのうち染色体高コピー数型においてのみ併用療法群で予後が改善され、他の3つのタイプでは2群で有意差はなかった。

 さらにGOG258試験では高リスク群でIII/IVA期子宮体癌を対象に、シスプラチンを用いたCCRT後にTC療法4サイクルを行う群と、TC療法を6サイクル行う化学療法単独の群が比較された。その結果、RFSに有意差は認められなかった。再発形式別には、膣壁再発や後腹膜リンパ節再発は併用群のほうが再発率は低かったが、遠隔転移は化学療法単独群のほうが低かった(Matei D, et al. N Engl J Med 2019;380:2317-26)。

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