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レポート

2020/05/05

膵臓・胆管がんのロボット手術Vol.2

ロボットを用いて膵臓の高難度手術での合併症減少を目指す

森下紀代美=医学ライター

海外では腹腔鏡下手術からロボット手術に移行

 海外の状況も変化している。米国外科学会が主導するデータベースシステムACS-NSQIP(American College of Surgeons National Surgical Quality Improvement Program)では、膵頭十二指腸切除術は、腹腔鏡下手術からロボット手術に移行していることが示されている。その理由について、若林氏は「腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術による再建、膵管粘膜空腸吻合の技術的な難しさにある」と説明した。

 膵頭十二指腸切除術を含むロボット支援下膵切除術についての国際コンセンサス会議も開催された。中国Chinese People’s Liberation Army(PLA)General HospitalのRong Liu氏と若林氏が中心となって開いたこの会議では、現在のエビデンスに基づいた推奨が発表されている(HepatoBiliary Surg Nutr 2019;8(4):345-360)。

 膵頭十二指腸切除術の推奨として、「悪性腫瘍に対するロボット手術は、開腹手術と比べてR0切除率(肉眼だけでなく顕微鏡でも完全に腫瘍が切除できた割合)が高いが、リンパ節郭清の数は同等」「ロボット手術は、開腹手術と比べて出血量が少なく、手術時間は長い。手術中に輸血が必要となる割合には差がない」「ロボット手術は、開腹手術と比べて周術期(手術前後と手術中を含む期間)の死亡率、術後の合併症の発生率、膵液漏の発生率は同等であるが、入院期間は短い」などが記載されている。

今後の課題はデータの蓄積や術者の養成など

 若林氏は今後の重要な課題の1つに、データの蓄積を挙げた。国際コンセンサス会議で推奨されたように、海外のデータから、ロボット支援下膵頭十二指腸切除術は、開腹手術と比べて出血量が少なく、入院期間が短く、膵液漏の発生率には差がないことなどが示されつつあるが、膵液漏を減らすというデータはまだない。

 手術のランダム化比較試験を行うことは難しいが、ロボット支援下膵頭十二指腸切除術の症例を積み重ね、他のデータと合わせ、傾向スコア分析などを行うことができれば、開腹手術よりも膵液漏が減少することを示すデータが得られる可能性がある。

 また、ロボット支援下膵頭十二指腸切除術の保険点数は腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術と同じで、ロボット手術を行うことによる加算はついていない。ロボット手術はNational Clinical Database(NCD)に術前症例登録を行うことになっているため、そのデータが集積された時点で腹腔鏡下手術と比較し、優位性を示すことができれば、加算を要望できる可能性があり、今後の課題となっている。

 術者がまだ少ないため、教育をどのように進めるかということも重要な課題だ。若い医師が日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医の資格を取るためには、現時点ではまず開腹手術の症例で評価を受ける必要があり、ロボット手術はその次のステップとなる。若林氏は「開腹手術で膵頭十二指腸切除術を正確に行えることが大前提だが、米国では初めての膵臓手術がロボット手術という医師も出てきている。日本でもいずれそうした時代が来るのではないか」と予測している。

 最後に若林氏は「保険適用下でロボット支援下膵頭十二指腸切除術が行えるようになったことは、大きなインパクトで今後の臨床を変えていくと思う」と話した。


膵臓・胆管がんのロボット手術Vol.1
膵臓の高難度手術にもロボット手術が保険で可能に

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