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レポート

2020/04/07

がんに負けないお金の話Vol.6

現役世代が、がんでも受給できる可能性がある「障害年金」

福島安紀=医療ライター

 障害年金は、老齢年金を受給していない65歳未満の人が、病気やけがなどで障害が生じたときに支給される公的年金だ。がんや治療の影響で働けなくなったり、自分で身の回りのことができなくなったりしたときにも、障害年金が受給できることをご存じだろうか。障害年金はどのようなときに受給でき、その手続きはどうしたらいいのか。
 国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター/がん相談支援センター・副センター長(がん相談統括専門職)の坂本はと恵氏が解説する。


がんや治療による内部障害でも障害年金が受給できる

 公的年金は、20歳以上の国民が加入を義務づけられている制度だ。自営業者や主婦、学生などが加入する「国民年金」と、会社員などが加入する「厚生年金」がある。年金というと、高齢者が受給する老齢年金のイメージが強いが、現役世代が病気やけがなどによって障害が生じたときには、その生活を支えるために障害年金が受給できる。

国立がん研究センター
東病院の坂本はと恵氏

 「障害年金は、直腸がんで人工肛門になったときや手足に麻痺が生じたときなど、身体の機能が変わるような障害が生じたときにしか受給できないと思っている患者さんも多いようです。また、仕事を辞めないと受給できないと思い込んでいる方もいます。しかし、がんやその治療の副作用で仕事が制限されたり介助が必要になったりしているような内部障害でも障害年金は受給できますし、給与が支払われていても支給の対象になる場合があります」。坂本氏は、そう説明する。

 受給は、65歳未満で公的年金に加入し、がんと診断された病院の初診日の前々月までの1年間あるいは、公的年金加入期間の3分の1以上保険料の未納がなく、障害の状態が支給要件を満たしていることが条件となる。

障害年金には1~3級があり、3級でも受給できるのは厚生年金加入者のみ

 障害年金には、1級から3級まで3段階の等級があり、1級が最も重い障害がある場合だ。身体障害者手帳の等級とは異なるので、混同しないようにしよう。1級と2級の場合は、国民年金加入者には障害基礎年金、厚生年金加入者にはさらに障害厚生年金が上乗せされる。3級でも障害年金が受給できるのは、厚生年金の加入者だけだ。初診日に、どの年金制度に加入していたかによって、受給できる障害年金の種類は異なり、もしも現在は会社を辞めていたとしても、初診日に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金が受給できる。

 基準となる障害の程度は、国民年金法と厚生年金法の施行令で定められている。がんの障害の程度は、下記の表のように、どの程度生活や仕事が制限されているかが基準となる。1級は著しい衰弱や障害のためにほぼ全面的な介助が必要になっている、2級は衰弱または障害のため介助が必要で軽労働ができない状態。3級は、歩行や身の回りのことはできるが仕事の内容や量が制限されている状態だ。

がん(悪性新生物)の障害の程度の目安

新膀胱造設と喉頭全摘術などは手術日、人工肛門は6カ月後が障害認定日に

 障害年金で重要なのは、がんと診断された病院を初めて受診した「初診日」と、障害の状態を判断する「障害認定日」だ。

 「障害の状態は、原則的には、初診日から1年6カ月経った時点の障害認定日の体の状態で判断されます。ただし、膀胱がんなどで新膀胱を造設したり、喉頭がんなどで喉頭を全摘出したりしたときには、造設日や摘出日が障害認定日(下表参照)になります。がんの再発・転移や抗がん剤の副作用による倦怠感、手足のしびれ、貧血、下痢、体重減少など、一見わかりにくい内部障害でも、仕事や生活に支障が出ているのであれば、障害年金が受給できる可能性があります」と坂本氏は強調する。

がんの場合の障害認定日

障害基礎年金は18歳以下の子どもの数で加算が受けられる

 受給できる年金額は、加入している年金の種類と障害の等級、子どもや扶養家族の有無で異なる。障害基礎年金は定額で、年間支給額は20年3月現在、1級なら97万5125円(月額8万1260円)、2級なら78万100円(月額6万5008円)。18歳以下(障害等級1級または2級の障害児の場合は20歳未満)の子がいる場合には、その子が18歳到達年度の3月末まで、第1子と第2子は1人当たり年間22万4500円、第3子以降は1人当たり7万4800円加算される。厚生障害年金の金額は収入(報酬月額)によって異なり、3級の最低保証額は58万5100円だ。1級と2級で、受給者の収入によって生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合には22万4500円が加算される。

障害年金の受給額のイメージ

 小児がんで造血幹細胞移植を受けて晩期障害が出ていているときなど、国民年金加入義務がある年齢になる前にがんになった人も、20歳になったときに1級か2級に当てはまる状態であれば、障害年金が受給できる。ただ、20歳より前に初診日がある場合には、所得制限がある。所得額が2人世帯で398万4000人を超えるときには年金額が2分の1になり、500万1000円を超えると受給できない。

障害年金の受給には本人の申請が必要

 「老齢年金もそうですが、障害年金は、申請しなければ受給できません。医師の診断書、病歴・就労状況申立書、住民票など必要な書類を揃え、年金手帳、年金請求書と一緒に、最寄りの年金事務所、または、街角の年金相談センターに提出する必要があります」と坂本さん。

 ただし、治療の副作用で倦怠感が強くて働けないなどの内部障害は障害の程度が理解されにくく、医師が記入する「診断書」、申請者が記入する「病歴・就労状況申立書」の書き方によっては、障害年金の支給が認められにくいケースもある。

 50代のタクシー運転手の男性は、直腸がんの手術の後、排便障害がひどく、病気の前と同じようには働けなくなった。腸閉塞になり入退院を繰り返したこともあり収入が半減したため、障害年金が受給できないかと考え、年金事務所に障害年金の申請をした。しかし、年金の支給が認められなかったという。

医師の診断書に生活や仕事の支障を具体的に記載してもらうのがポイント

 「医師の診断書や病歴・就労状況申立書は、どのくらい生活や仕事が制限されているか、数字を使うなど工夫をして具体的に書くことが大切です。例えば、病歴・就労状況申立書には、『1時間に1~2回トイレに行かなければならないこともあるため長距離のお客さんを乗せられず、夜間の勤務もできないため、発病前と比べて3割くらいしか働けない状態』というように、どの程度仕事や日常生活に支障が出ているか具体的に書く必要があるのです。また、その内容を裏付けるような内容が医師の診断書に書いてある必要があります。主治医には、生活と仕事への影響も含めて、診断書に書いてもらいたい内容をメモにして手渡してもよいでしょう。主治医が障害年金の書類の書き方に慣れていないようなら、かかっている病院の相談員や医療ソーシャルワーカーに、医師への橋渡しを頼んでもいいと思います」。坂本氏は、こうアドバイスする。

 倦怠感や体重減少などで、生活に支障が出ている人は、「座っているのもつらく、1日のうち4割くらいの時間は寝ている状態」、「簡単な料理はできるが買い物には行けない」など、障害の程度が判断できるように書くのがコツだ。特に、障害厚生年金3級は、仕事に制限が出ていることが、医師の診断書と病歴・就労状況申立書で具体的に明記されていることも重要だという。がん患者の障害年金の申請について、かかっている病院で相談が受けられないようなら、連携を取っている社会保険労務士がいないかを聞いてみるとよいだろう。

 「障害年金は、病気やけがで仕事や日常生活に支障が出たときに、年金保険料を納めている人が当然の権利として申請できるものです。障害年金を受け取れるのを知らず、生活に困って借金をしてしまったという方もいます。受給できるのに、障害年金のことを知らずに申請していないということがないようにしていただきたいと思います」と坂本氏は強調する。

 障害年金は5年前までさかのぼって請求することもできる。がんや治療の副作用や後遺症で介助が必要になったり仕事に支障が出たりしている場合には、障害年金が受給できないか、検討する余地がありそうだ。


がんに負けないお金の話

Vol.1 がん患者の「医療費控除」で少しでも多く税金を取り戻すには

Vol.2  がん治療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」フル活用術

Vol.3 該当するなら活用したい 高額介護合算療養費、傷病手当金、ひとり親家庭等医療費助成、ウィッグ・胸部補正具助成

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Vol.5 もしものときのために知っておきたい「介護保険」活用術

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