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レポート

2020/03/31

CancerX Summit 2020より

AIの活用で患者にも企業にも恩恵のある持続的なプレシジョン医療に

福原麻希=医療ジャーナリスト

遺伝子パネル検査を持続可能なシステムとするために

 ディスカッションでは、遺伝子パネル検査の問題点についても話し合われた。

 加藤氏は、「実際にはがん患者全体の2~3%しか、公的医療保険によるがんに対する網羅的遺伝子検査を受けられていません。さらに、遺伝子検査に基づく治療を受けられるのは、そのうちの約1割です」と言う。また冒頭で説明したように、検査の結果、薬の適応外使用になることもある。その点について加藤氏は、「製薬会社にとって、特許が切れた薬は使えるようになっても儲かりません。それは製薬会社主導の治験が難しいことを意味します。治療薬を他の疾患の治療に転用するときのインセンティブを政策で検討したほうがいいでしょう」と意見を出した。
 
 検査データの取り扱いについても問題点が指摘された。医療におけるデータは、長年、電子カルテもデータフォーマットも標準化されていない。加藤氏は「企業の枠を超えて、それらを解決していくことが難しい。国がインフラとして課金を含めた形で構築する仕組みが必要ではないか」と提案する。「データは誰のものか」という議論も出た。瀬々氏は「メジャーな病気のデータは多いが、レアな病気は少ない。だから治療法がないという悪循環が続く」として、その解決策として「データは患者のもの。希少疾患になったらそのデータを企業に高値で売れることになったら、患者は喜んで提供するのではないか。それくらいのインセンティブがないとデータは流通しないだろう」と提案した。

 モデレーターを務めた日経CNBCキャスターの瀧口友里奈氏も取材経験を交えて「中国では企業とデータ提供者との間に『データを提供すればサービスがよくなる』という信頼関係ができていると聞きます。日本企業と患者との間には、まだそのような関係が構築されていないように感じます。患者側のインセンティブについても考えていくべきでしょう」と話した。

 さらに、持続可能なシステム構築に関する問題提起も出た。例えば、病院での遺伝子パネル検査は人件費がかかり、病院の持ち出しが多いと言われている。医師、看護師、病理医、臨床検査技師、遺伝カウンセラー等が集まり「エキスパートパネル」と呼ばれる会議を開催しなければならないが、それに見合った保険点数がついていないからだ。加藤氏はこうも言う。「個別化医療の実践によって、すでに世界的に薬の開発コストが加速度的に高騰している。日本は特に国民皆保険制度を導入しているため、このままでは国の財政を圧迫し、医療制度が崩壊する可能性もあるだろう。持続可能なシステムを構築するためには、医療崩壊せず、いかに患者に還元していけるか、AIを用いてその解決の手立てを示してほしい」。

 渡邉氏は「さまざまなステークホルダーのすべての方に、何らかのメリットがないと持続可能性はありません。国の予算から税金を投入して集めたデータで企業が儲けるのはどうかというご意見もありますが……。システムを持続可能にするためには、患者さん、病院、企業のすべてにメリットがある形にならなければなりません」と話す。

 最後のラップアップ(まとめ)で久保田氏は、「診断薬・検査会社にとって、このがん遺伝子パネル検査はデータの扱いで人件費がかかるなど、決して儲かる事業ではありません。それでも粛々と進めているのは、今だけでなく、将来、がん患者さんになるかもしれない人へもつなげていかなければならないという使命感があるからです。このためにもデータを適切に蓄積し、AIを活用することで、がん遺伝子パネル検査の将来価値をみんなで創造していく姿勢、理解と協力が重要です」と話した。

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