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レポート

2020/03/24

日本がん・生殖医療学会市民公開講座より

がん治療後に子どもをもつ選択肢、「特別養子縁組」と「里親」

福島安紀=医療ライター

埼玉県里親会会員の5.9%ががんを経験してから里親・養親に

 獨協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンター教授の杉本公平氏は、がん生殖医療に取り組む米国の「Oncofertility Consortium(オンコファティリティ・コンソーシアム)」が作成した、がん患者が妊孕性温存治療を受けるかどうか意思決定するための樹形図を紹介した。その樹形図では、選択肢の1つとして特別養子縁組を提示している。

 杉本氏は、里親・養親の不妊治療の状況やがん治療経験の有無、里親制度・養子縁組制度の情報提供の現状などを調べるために、埼玉県里親会の里親会員375組に対してアンケート調査を行い、その結果をこの市民公開講座で発表した。調査には205組(回答率54.7%)が回答。回答者のうち、里親・養親になる前に両親のどちらかががんを経験していたのは12組(母9人、父3人)で5.9%だった。里親・養親になっている人の3分の2が不妊治療を経験したが、そのうち約90%の夫婦は、生殖医療機関から、里親制度や養子縁組について情報提供されていなかったという。調査の結果、里子と実子、養子と実子を一緒に育てている人も多く、さまざまな形態の家族が存在することも明らかになった。

 「アンケートに記載されたコメントから、不妊治療を受けていた里親・養親のカップルは、早く情報提供が欲しいと考える一方で、治療中の情報提供は直接的ではなく慎重に行って欲しいとし、ポスターやパンフレットなどでの情報提供を望んでいるとみられます。まずは不妊治療や妊孕性温存療法を開始するときに、里親制度や特別養子縁組制度についても簡単に情報提供して頭の片隅に入れてもらい、治療が始まったらポスターやパンフレットで間接的な情報提供をしていく必要があるのではないでしょうか」と杉本氏。

 埼玉県内で、がん生殖医療、不妊治療を受けている患者向けに、里親制度や特別養子縁組制度を紹介するパンフレットを作成していく予定という。

親ががんになったときに家族も子どもも支援される社会を

 里親や養親になってから、がんになる場合もある。里子として委託された2人の子どもの子育てに奮闘するK氏は、里親になってから乳がんと診断され、手術と抗がん薬治療を受けた。2人目の里子の委託を受けてからそれほど時間が経っていなかったため、一時は、新しい里親を探したほうがいいのではないかと考えたと語った。しかし、児童相談所に連絡したところ、「新しい里親は探さないので、施設に行くから心配しないでください」と担当者に言われ考え直した。

 「どちらが幸せかわからないけど、施設に行くのなら、できるだけ我が家で頑張ろう」と、3歳だった下の子を他の里親に預けたり、保育園の一時保育や児童相談所の一時保護所を活用したりして、手術と抗がん剤治療を乗り切ったという。現在もホルモン療法を受けており、里子になった子どもたちに支えられていると話した。

 「2人に1人が、がんになる時代です。実親であろうと、里親・養親であろうと、誰もががんになることがあり得ます。そもそも、親ががんになったときに家族も子どもも支援される社会でなければ安心して子育てができません。がんになった人の子育て、がんになった人の仕事の継続をこの社会がどのように受け止め、支えていくのかという根本的な課題を検討すべきではないでしょうか」。前述の白井氏は、そう講演を締めくくった。

 里親になるためには、まずは、最寄りの児童相談所に申請し研修を受ける必要がある。養子縁組を希望する場合は、児童相談所や民間の養子縁組あっせん団体に申し込む。ただし、研修を受けて里親や養親希望者として認定・登録されても、必ず子どもの委託を受けられるわけではないことは理解しておきたい。

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