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2020/03/17

小児がん治療で免疫を失った子へのワクチン再接種に公費助成を

福原麻希=医療ジャーナリスト

 小児がん患者は治療の後で、定期接種となっているワクチンの再接種を必要とすることがある。この再接種は原則自己負担だが、公費助成で支援しようという動きが全国で広がりを見せている。


 小児がんと診断され、抗がん薬の投与、あるいは造血幹細胞移植(骨髄移植など)の治療を受けた場合、以前に接種されたワクチンの効果が低下・消失してしまい、再接種を必要とすることがある。その場合、定期接種となっているワクチンでも任意接種の扱いとなり、原則全額自己負担になる。

 この状況に対して、数年前から、小児がんに罹患した子供の家族や関係者が公費助成を要望してきた。2018年に厚生労働省が小児がん患者へのワクチン再接種の費用助成について、全国1741の市区町村すべてを対象に調査した結果、何らかの(費用の全額・一部、あるいは、造血幹細胞移植だけ、抗がん薬治療も含めて等)支援助成事業を実施している自治体は90(5.2%)しかなかった。だが患者の声を受けて全国の市議会で取り上げられることが多くなったことから、現在は250以上の市区町村にまで増えている。しかし、全国一律ではないため住んでいる地域によって格差が生じており、また、助成の対象として抗がん薬治療を受けた患者は外れていることが多い。

 大阪府池田市に住む石嶋瑞穂さんの長男は4年前(当時7歳)、急性リンパ性白血病と診断され、抗がん薬治療を受けた。治療後、ワクチンの抗体検査で水痘(水ぼうそう)の抗体価が低下しているとわかったため、半年を待って再接種を受けることになった。治療直後は免疫がつかない可能性があるからだ。だが、運悪く3カ月目に、水ぼうそうにかかってしまった。頭の中や足裏、耳の中、口の中まで発疹ができただけでなく、高熱が3日間続くほど重症化し、1週間入院した。

 さらに、石嶋さんの三男は予防接種を受けていたうえに感染歴もあったが、長男から感染し、再度水ぼうそうにかかってしまった。長男と三男が一緒にいた時間はわずか半日だった。石嶋さんは「抗がん剤治療後の患者への再接種は、周囲にウイルスをまき散らさないためにも必要なことと実感しました」と話す。
 
 小児急性リンパ性白血病患者53人を対象にした調査では、抗がん薬治療を受けたあと9カ月経った時点でワクチンの抗体が残存していた人は、麻疹(はしか)42%、おたふくかぜ44%、水ぼうそう68%だった(東英一:免疫機能とVaccine-preventable diseases(VPD)、日本小児血液・がん学会雑誌vol55(5):355-365、2018)。

 再接種は、定期接種に分類されている四種混合(DPT=IPV:ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)、三種混合(DPT:ジフテリア、百日咳、破傷風)、MR(麻疹、風疹混合)、日本脳炎、ヒブ、小児用肺炎球菌、HPV(ヒトパピローマウイルス)、水ぼうそう、B型肝炎が対象になる。どのワクチンを再接種する必要があるかは個別に異なり、治療後に抗体価検査を受けることでわかる。骨髄移植等の造血幹細胞移植で免疫抑制剤による治療を受けた場合は、数年ごとにワクチンの抗体価が失われる(日本造血幹細胞移植学会:造血幹細胞移植ガイドライン 予防接種2018)。

 そしてワクチン再接種の費用を助成している自治体でも、造血幹細胞移植を受けた患者は費用の公費助成枠に入っているが、抗がん剤治療を受けた場合は枠から外れていることが多い。石嶋さんは長男のできごとから、このことに気付いた。

再接種による地域格差をなくす取り組み

 そこで、石嶋さんが代表を務める一般社団法人チャーミングケアと公益財団法人がんの子供を守る会は協働で、2018年、大阪府の再接種における公費助成の状況を電話で聞き取り調査した。その結果、造血幹細胞移植と抗がん薬治療の両方をカバーしていたのは枚方市だけだった。調査時、市役所の担当課は造血幹細胞移植後の再接種の必要性は把握していたが、抗がん剤治療後については知っている担当者が少ないこともわかった。
 
 石嶋さんはこう訴える。「治療が終了して、病院と自宅の二重生活が終わって一安心する間もなく、ワクチン接種にも費用がかかることは家計的に大変です。小児がんの患者は年間2000~2500人程度、これは単純計算で1自治体に1人か2人です。ぜひ抗がん剤治療後の患者にも再接種時の費用助成を支援して頂きたいです」。

 それまでのつなぎとして、一般社団法人チャーミングケアでは民間レベルでの助成プロジェクトも企画し広げている。これは有志の医師グループと提携して(1)チャーミングケア指定の病院で接種する場合は自己負担ゼロ(2)大阪府と兵庫県では他院にて有償で接種した場合は半額助成とするという内容だ。
 
 がんの子どもを守る会をはじめとする小児がん患者の家族会は国へ費用助成を要望している。また現在、厚労省の予防接種に関する検討会では、定期接種への枠組みに入れることを含めて議論されている。定期接種になると、再接種による健康被害が生じた場合、国の救済制度を利用できるようになる。
 
 ちなみに全国市長会は2017年から、骨髄移植等を行った患者への再接種を定期接種として位置づけるよう提言している。また全国各地の地方議会でも、再接種費用の助成制度の創設を国に求める意見書が可決されている。それぞれの地域で声を上げていくことも、大切な時期に来ている。

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