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レポート

2020/02/25

がんに負けないお金の話Vol.5

もしものときのために知っておきたい「介護保険」活用術

福島安紀=医療ライター

 がん患者でも公的な介護保険が使えることをご存じだろうか。介護保険は40歳以上の人に加入が義務づけられている制度だ。65歳以上、あるいは、40~64歳の人ががんを含む特定疾病で介護が必要になったとき、1~3割負担で、病院で使っているようなベッドや車椅子などの福祉用具の貸与、訪問介護、訪問入浴などの介護保険サービスが受けられる。もしも全額自費で賄えば、経済的な負担は重く、自宅での療養をあきらめざるを得ない人もいるが、介護保険を使えば負担は軽減される。がん患者が介護保険を上手に活用するコツを、国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター/がん相談支援センター・副センター長(がん相談統括専門職)の坂本はと恵氏に聞いた。


40歳以上はがんで要介護と認められれば介護保険を利用可能

 家族ががんになったことがある人でも、「がん患者が介護保険を使える」という事実を知らない人は少なくない。国立がん研究センター・がん対策情報センターが、2018年2~3月に20歳以上の家族が亡くなった遺族を対象に実施した「遺族調査」では、がん患者の遺族の回答者1630人のうち、介護保険を利用したことがあったのは65%の1063人。介護保険を利用したことがない452人のうち、55人(12%)が「介護保険を知らなかった」と回答した。「申請したが利用できなかった」という人も104人(23%)存在した。

 「がん患者が介護保険を使えるとは考えもしませんでした。介護保険は、脳卒中で麻痺のある人や認知症で介護が必要な人が使うというイメージだったのです。もしも介護保険を使えると知っていたら、父を自宅に連れて帰ってあげたかったと思います」。大腸がんだった父親が東京都内の病院で亡くなった50代の主婦はこう話す。

 介護保険は、40歳以上の全員が加入者として保険料を納め、介護が必要になったときにサービスが利用できる公的な社会保障制度だ。被保険者の区分には65歳以上を指す「第1号被保険者」と、40~64歳を指す「第2号被保険者」があり、介護保険を利用できる条件や保険料の決め方が異なる。介護保険が利用できるのは、65歳以上で介護が必要、あるいは、40~64歳で16種類の特定疾患により介護が必要と認められた場合だ。特定疾患の中に、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)が含まれる。

国立がん研究センター
東病院の坂本はと恵氏

申請書には「がん」と記入すればOK

 以前は、40~64歳のがん患者が介護保険を使える特定疾病として認められるのは「がん末期」に限定されていた。

 「自治体によっては、要介護認定の申請書に、患者さんが『がん末期』『末期がん』などと記載する必要がありました。ご自身のこととはいえ申請書の記入がしづらく、申請を迷っているうちに容態が悪くなって家へ帰るタイミングを逸してしまうケースもあったのです」と坂本氏は指摘する。

 前述の遺族調査や国のがん対策推進協議会で患者代表から出された要望などを受けて、厚生労働省は2019年2月、各都道府県の介護保険主管部に対して「がん患者に係る要介護認定等の申請に当たっての特定疾病の記載等について」と題した通知を出した。65歳未満の患者の要介護認定の申請書に、「末期がん」「がん末期」などと記載がなくても、「単に『がん』と記載されたもので(特定疾病として)申請を受理して構いません」と記されている。つまり、40~64歳のがん患者が要介護認定の申請書を記載する場合、申請書には、単に「がん」と記載するのみで受理してもらえる。

まずは市区町村へ要介護認定申請を

 介護保険を使うためには、まず、患者本人か家族が、住んでいる市区町村の介護保険窓口か地域包括支援センターへ行き、「要介護認定」の申請をする必要がある。申請は、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに代行してもらうこともできる。申請の際には、第1号被保険者の場合は介護保険被保険者証、第2号被保険者の場合は健康保険証、マイナンバー確認書類、写真付きの身分証明書などが必要だ。

 次に、申請を受けて、市区町村の職員が自宅や病院へ訪問し、心身の状態について聞き取り調査を行う。聞き取り調査には、全国共通の調査票が使われ、麻痺の有無、歩行、座位の保持、排尿・排便、洗髪、口腔清掃、洋服の着衣が自分でできるかなど日常生活自立度や認知機能についてチェックする。そういった基本調査と訪問調査員の特記事項、「主治医の意見書」を合わせて、市区町村の介護認定審査会で審査し、「非該当(自立)」、「要支援1、2」「要介護1~5」のどれに該当するか判定する。

 「通常は、要介護認定の審査は30日以内に行えばいいことになっていますが、介護保険の利用を希望するがんの患者さんは、急激に容態が悪化することがあるため、厚生労働省が2010年4月に都道府県と市区町村に通知を出して、要介護認定の迅速化を求めています。そのため、市区町村によっては、がんの患者さんに対しては、申請があったその日に要介護認定のための訪問調査を実施し、1週間くらいで要介護認定が受けられるところもあります。また、すぐに在宅で介護保険サービスの利用が必要なら、要介護認定を受ける前に、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談して『暫定ケアプラン』を作成してもらい、サービスの提供を受けることも可能です」と坂本さんは説明する。

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