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レポート

2020/02/04

最近話題の「がんロコモ」って? 第3回

運動機能が回復すればがん治療を続けられる?

埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授 岩瀬 哲 氏

 「がんロコモ」――「がん」と「ロコモティブシンドローム」を組み合わせて作られた言葉ですが、あまり聞いたことがないかもしれません。しかし、がんの治療を続けていく上では、とても重要な概念です。体が動きにくくなっても、がんだからといって我慢していませんか? その不調は、本当に我慢が必要なんでしょうか? がんロコモの専門家の方々に、がんになっても長くいきいきと楽しく過ごすコツを語っていただきます。
 第3回は、埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授の岩瀬哲氏に「運動機能が回復すればがん治療を続けられる?」というテーマについてうかがいました。
(まとめ:小又理恵子)


埼玉医科大学の岩瀬哲氏

 私が所属する「緩和医療科」には、最期を看取る「ターミナルケア(終末期ケア)」というイメージがまだ強いようですが、緩和ケアは、がんと診断された時からがん治療と並行して始めるべきケアと定義されています。痛みがある場合に鎮痛薬で和らげたり、治療により予想される副作用がある場合にはその症状を防ぐような対策をしたり、患者さんの心の悩みに寄り添ったりするといった患者さんをサポートする様々なケアを行います。サポーティブケア(支持療法)やエンドオブライフケア、ターミナルケア(終末期ケア)など、幅広いケアを包括する概念ともいえます。

 前回までの連載で紹介してきたように、がんロコモは「がん自体あるいはがんの治療によって、運動器が障害されて移動機能が低下した状態」のことです。がんロコモの診療とは、移動機能の低下を改善するための運動器診療であり、それはがんを治す治療だけではなく、患者さんの苦痛を緩和する治療、すなわち緩和ケアを含んでいます。がんロコモ診療においては、患者さんの現状と今後の希望を確認し、適切な目標を設定してそれに向かってサポートしていく姿勢が重要になるのです。

 例えば、強い痛みがある場合、これまでは痛みを和らげることが最大の目標となっていました。確かに、痛みはあるよりはない方がいいに決まっていますね。特に、四肢や腰背部の強い痛みは骨転移から来ていることが多く、がんの勢いが強い場合には対応が難しいこともあります。だからといって、ベッド上で長期に安静にしていると、身体機能が低下して、結果的にさらに死亡リスクが高くなってしまいます。

 終日ベッドの上で安静にしていることは、本当に適切な目標と言えるのでしょうか。痛みがなくなったら自宅に帰りたい、友達に会いたい、以前のように生活したい、もっと動けるように、歩けるようになりたい……こうした希望を抱くことは、決して高望みでも的外れな願いでもありません。実際、がんは認知症や心血管疾患などに比べると予後の予測が比較的容易で、死亡の1~2カ月前に急速に状態が悪化することがわかっています。つまり、寝たきりになっているがん患者さんの一部は、がんの進行以外の、他に治療法がある運動器の障害などが原因で、寝たきりになっているかもしれないのです。

 現在の抗がん剤治療の多くは、患者さんが定期的に通院して点滴を受ける外来化学療法という制度のなかで行われています。患者さんが自立歩行して通院できなければ、抗がん剤治療を受けるのは難しくなってしまうのです。裏を返せば、整形外科医などの適切な介入によってうまく痛みがコントロールされ、自立して動けるようになれば、通院の難しくなった患者さんが外来化学療法を再開できる可能性も出てきます。

 動けることは、がん治療の成功の有無にかかわらず、人らしく生活していくために必須な機能です。がんを縮小するための治療と並行してがんロコモ診療を行い、少しでも患者さんの生活レベルを上げて、不安を減らしていくことが大切です。がんが完治しなくても、笑顔でその人らしい生活が送れるようになれば、健康寿命ひいては余命を延ばすことも可能だと考えます。

 「痛みが軽くなったのだから、これで満足しなければ」と思わずに、もっと自分らしい生活を送るためには、何ができるようになりたいのか、じっくりと考えてみませんか。具体的な望みを胸にがんと向き合うことは、きっとあなたの力になるはずです。もちろん無理は禁物です。今日の自分の体調を常に確認し、医療者と相談しながら、今できること、やりたいことに取り組んでみてください。


最近話題の「がんロコモ」って?

第1回 がんと運動機能の意外な関係

第2回 あなたの痛みは本当にがんのせい?

がんロコモをテーマにした新刊発行!
「がんでも歩こう!キャンサージャーニーを豊かにする運動のすすめ」
著者
ベルランド総合病院リハビリテーション科部長 大島和也 氏
埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授 岩瀬哲 氏
監修
ロコモチャレンジ! 推進協議会 がんロコモワーキンググループ
2020年3月16日発行
A5判 184ページ
ISBN 978-4-931400-96-2

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