このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2020/01/21

かながわ血液がんフォーラム 3

治療の層別化で生存率アップを目指すリンパ腫の最新治療

福島安紀=医療ライター

 悪性リンパ腫は、ウイルスや細菌から体を守る働きをしている血液中のリンパ球のがん化によって発症する。血液がんで最も患者数が多く、国立がん研究センターの最新がん統計(2014年)によると、男性では8番目、女性には7番目に多いがんだ。小児や10代、20代でも発症するが70代、80代の高齢者の発症率が高いこともあって、患者が増加している。
 NPO法人キャンサーネットジャパンが、神奈川県横浜市で11月に開催した「かながわ血液がんフォーラム」では、東海大学医学部血液腫瘍科講師の大間知謙氏が「B細胞リンパ腫の病態と治療」、国立がん研究センター血液腫瘍科・病棟医長の丸山大氏が「T細胞リンパ腫の病態と治療」について最新の情報を講演した。


アグレッシブリンパ腫は進行が速いが治癒が期待できる

 リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、日本人には非ホジキンリンパ腫が多い。非ホジキンリンパ腫は、リンパ球の中のB細胞、T細胞、NK細胞のどこががん化したのかなどによって、90以上の病型に分類される。

 一部、EBウイルス、HIVウイルス、ヘリコバクターピロリが発症に関与しているものもあるが、ほとんどのリンパ腫の発症原因は不明だ。症状は、リンパ節の腫れで、一般的に痛みはない。全身のリンパ節のどこにでも発生する可能性があり、皮膚や鼻にリンパ腫ができることもある。1)38℃以上の原因不明の発熱、2)6カ月以内の原因不明の体重減少、3)シーツを変えなければいけないほどの寝汗――この3つをB症状と呼び、B症状の有無で治療選択が変わることがある。

 非ホジキンリンパ腫は、病気の勢いによって、インドレントリンパ腫とアグレッシブリンパ腫、高度アグレッシブリンパ腫の3つに分けられる。無治療の場合の経過が年単位で進行するものがインドレントリンパ腫、月単位で進行するのがアグレッシブリンパ腫、週単位で進行するものが高度アグレッシブリンパ腫だ。

 「インドレットリンパ腫は、50%生存期間(生存している人の割合が50%になる期間)が10年と比較的予後は良好ですが、治癒が困難です。それに対して、アグレッシブリンパ腫、高度アグレッシブリンパ腫は、自然経過は短いけれども、抗がん剤が効きやすく、化学療法で3~6割は治癒が可能です」

 大間知氏は、非ホジキンリンパ腫の患者の約5割を占める「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」と13~15%を占める「濾胞(ろほう)性リンパ腫」を中心に、標準治療を説明した。

支持療法で副作用をコントロールしつつR-CHOP療法完遂を

 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はアグレッシブリンパ腫であり、できるだけ早く治療を始める必要がある。標準治療は、抗CD20抗体のリツキシマブ(R)と、シクロホスファミド(C)、ドキソルビシン(H)、ビンクリスチン(O)、プレドニゾロン(P)を併用するR-CHOP療法だ。リツキシマブは、B細胞リンパ腫の表面にあるCD20というタンパクに結合して免疫力を強化し、抗腫瘍効果を発揮する抗体薬。以前はCHOP療法が標準治療だったが、リツキシマブと併用するR-CHOP療法になって、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療成績が大幅に改善した。

 「ただし副作用が出る治療なので、副作用をできるだけ抑える支持療法が大事です」

 そう話す大間知氏によると、リツキシマブで注意すべき副作用は、輸注関連反応だ。通常は外来で点滴治療をするが、初回は、発熱、インフルエンザのような症状、アレルギー反応といった輸注関連反応を起こしやすいので、1回目のみ入院して薬物療法を行うことが多い。シクロホスファミドは出血性膀胱炎を起こしやすいので、水分を普段より多めに取ることが大切だ。ドキソルビシンでは、心臓の筋肉へのダメージ、ビンクリスチンは末梢神経障害に注意が必要になる。プレデミゾンはステロイドなので、血糖値が上がる、胃酸が増えるなどの副作用がある。

 「末梢神経障害は、血液検査などの数値では分からず、どんどんひどくなってしまう場合があります。根本的な治療法がないので、指先の間隔がにぶくなってものがつかめない、手足がしびれて痛いなどの症状が出たら主治医に伝えるようにしてください」と大間知氏は強調した。

濾胞性リンパ腫の初回治療ではオビヌツズマブ+CHOP療法が選択肢に

 また、濾胞性リンパ腫は、年単位でゆっくり進行するインドレントリンパ腫だ。無症状の場合には、積極的な治療をせずに定期的に検査をして経過をみる無治療経過観察も選択肢になる。腫瘍量が多く症状がある場合には抗CD抗体薬併用化学療法とリツキシマブ維持療法を行うのが標準治療だ。抗CD抗体薬併用化学療法としては、R-CHOP療法、あるいは、リツキシマブとベンダムスチン(B)を併用するR-B療法がこれまで標準的だった。

 「濾胞性リンパ腫に対しては、2018年にオビヌツズマブ(G)という、リツキシマブに取って代わるかもしれない抗CD20抗体薬が登場しました。オビヌツズマブを併用したG-CHOP療法は、R-CHOP療法よりも無増悪生存期間(再発や進行なく生存している期間)を延長するというデータがあります。ただ、全生存期間には差がないので、本当にオビヌツズマブのほうがいいのかは議論のあるところです」と大間知氏。

 B細胞リンパ腫は患者数の多い病気であるだけに、新たな治療薬の開発が進んでいる分野。現在、骨髄腫の治療に用いられているレナリドミドは、近い将来、濾胞性リンパ腫など低悪性度のB細胞性非ホジキンリンパ腫にも使えるようになる見通しだ。また、B細胞由来のリンパ腫の一種で、慢性リンパ性白血病と同じ治療が行われる小リンパ球性リンパ腫(SLL)には、再発治療薬として19年11月からベネトクラクスが選択肢に加わった。

「EZH2遺伝子変異を有するB細胞非ホジキンリンパ腫に対する臨床試験が始まるなど、治療の層別化も始まっています。いろいろと選択肢が出てきた中で、薬をどう組み合わせて使うか、世界的にも検討中です」と大間知氏は話した。

  • 1
  • 2
この記事を友達に伝える印刷用ページ