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レポート

2020/01/14

日本放射線腫瘍学会第32回学術大会より 3

高線量で前立腺の中から照射する小線源治療

再発リスクが高い限局性前立腺がんでもホルモン療法との併用で高い生存率

八倉巻尚子=医学ライター

 がんが前立腺の中にとどまっている限局性前立腺がんの治療には手術療法や放射線療法が行われる。手術では手術支援ロボットを使った内視鏡手術が増え、放射線療法では放射線を正確にかつ集中して照射できる技術が進み、がんの制御だけでなく、排尿機能や男性機能への影響も少なくなってきた。
 11月に名古屋で行われた日本放射線腫瘍学会第32回学術大会のシンポジウム「前立腺癌各種治療法の特徴」では、手術療法と各種の放射線療法の現状について紹介された。第3回は、放射線療法の1つである小線源治療について、がん研究会有明病院放射線治療部の吉岡靖生氏の講演内容を紹介する。



 小線源治療(ブラキセラピー)は、治療する部位に放射性物質(小線源)を挿入して、体の内から照射する内部照射法の1つ。シード線源とも呼ばれる密封小線源を組織内あるいは体腔内に挿入して照射する。小線源治療は、体の外から放射線を照射する外部照射法に比べて、高い線量の照射が可能で、膀胱や直腸など周りの正常組織への照射を減らすことができる。

 小線源治療には、低い線量の線源(ヨウ素125)を入れたカプセルを永久的に前立腺内に埋め込む低線量率小線源療法(LDR)と、高線量の線源(イリジウム192)を一時的に前立腺に挿入する高線量率小線源療法(HDR)がある。

 小線源治療の開発は、歴史的にはLDRから始まったが、前立腺癌の再発リスクのうち、中リスクと高リスクには効果が十分でないことから、LDRと外部照射との併用療法が行われた。その後、HDRが登場し、HDRと外部照射との併用療法が始まり、そしてHDRを単独で用いる治療法が開発されてきた。

 吉岡氏の施設でも、低リスクから中リスクまでの前立腺がん治療にはシード線源によるLDRが用いられるが、高リスクに対してはHDRが用いられる。シード線源の場合は同じ強さの線量で照射されるが、HDRでは線源の停留時間を変えることで、前立腺の外側だけ強く当てて内側は少し減らすなど、線量の強さを調整できる。また前立腺をおおう被膜を超えて広がったがん(病期分類でT3)に対しても、線源が入った針を前立腺の被膜に沿って移動させることで照射できるという。

 そういった効果のある小線源治療だが、「評判が良くない」面もある。麻酔下で前立腺に複数の針を刺して小線源を挿入するが、LDRでは留置した小線源が抜けないように少なくとも1日の入院が必要になる。HDRでは前立腺に針を刺し、その状態で数日間はベッドで過ごさなくてはいけないからだ。しかし最近では臨床試験の段階だが、治療期間を短くする方法も開発されてきている。

小線源治療による再発抑制効果は

 HDRはまず外部照射法との併用療法が検討された。外部照射単独と比較したランダム化第3相試験において、HDR+外部照射は、PSA上昇で示される生化学的再発のリスクを低下させることが報告された(Hoskin et al. Radiother Oncol 2012; 103:217-22)。

 日本の15施設3000人を超える前立腺がんのデータでも、後ろ向き解析の結果、中・高リスクの患者が多い対象において、HDR+外部照射によって、10年間のPSA制御率は81.4%、10年生存率は85.6%と報告された(Ishiyama H, et al. Brachytherapy 2017;16:503-510)。なお、生存率はホルモン治療の有無で異なり、高リスク群では放射線療法前のホルモン治療(アンドロゲン除去療法:ADT)のみの場合よりも、放射線療法後にもホルモン治療を行ったほうが生存率は良かった。

 その後、HDR単独療法も検討されるようになっていった。日本の5施設524人を対象とした後ろ向き解析データによると、観察期間中央値6年において、5年間のPSA制御率は低リスクでは95%、中リスクは94%、高リスクは89%と良好な成績だった(Yoshioka Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2017; 97: 952-961)。5年生存率も低リスクで98%、中リスクは98%、高リスクは94%だった。

 副作用については、「小線源治療の特徴として直腸への線量は下がるので」、5年時点で、重篤な副作用を示すグレード3の消化器障害は0.2%、グレード2-3でも3%と少なく、グレード3の尿路系障害は5年時点で1%だった。

 米国のガイドライン(NCCNガイドライン)でもHDR単独療法は標準治療になってきた。LDRと同様に、低リスクから予後の良い中リスクに対してHDR単独療法は推奨され、予後の悪い中リスクから高リスクには外部照射との併用療法が勧められている。また高リスクに対しても、ADTとの併用であれば、外部照射を併用しない方法も考えてもよいとなっている。

 そこで高リスクでの効果を見るため、先ほどの後ろ向きデータから、524人のうち高リスクの244人を抽出して、高リスク群(T3a以下、グリソンスコアが8以下、初診時PSAが50ng/mL以下)118人と、超高リスク群(T3b以上、グリソンスコアが9以上もしくは初診時PSAが50ng/mL以上)126人に分けた。なお、高リスク群ではホルモン治療の併用が86%、超高リスク群は95%と多く、ホルモン治療の期間が中央値で10カ月と22カ月だった。

 解析の結果、5年時点で、PSA制御率は高リスク群91%、超高リスク群88%だった。また前立腺がんで死亡していない割合(がん特異的生存率)は高リスク群99%、超高リスク群98%であった。244人中、前立腺がんで死亡したのは5人で、このうち4人は遠隔転移、1人は骨盤リンパ節転移だったという。再発は、局所再発が1人(0.4%)で、骨盤リンパ節転移は上記の1人を含む計2人(0.8%)だった。このため小線源治療において、局所効果を改善するために「線量の増加や照射野を変更する必要はないだろう」と話した。

 またHDR(19Gy/1回)と通常のLDR(144Gy)を比較したランダム化第2相試験では、IPSS(国際前立腺症状スコア)はHDR群のほうが有意に良く、前立腺がん患者のQOLを評価する質問票EPICで排尿機能はHDR群が優れていた(Hathout L, et al. Adv Radiat Oncol 2019; 4:631-40)。

HDRの課題は標準的な線量分割を決めること

 ただ世界的にもHDRの標準的な線量分割はまだ決まっておらず、HDRの1回照射と2-3回照射を比較する臨床試験が行われている。海外3施設で19Gyの1回照射は良い成績が得られていない一方で、19Gyあるいは20Gyの1回照射は13-13.5Gyの2回照射の効果とほぼ同じとする報告もある。国内でも多施設共同試験が進行中だ。1つは、前立腺がんの放射線治療後のPSA再発例を対象に、サルベージ治療としてHDRを検討する第1/2相試験で、HDRは22Gyを2回に分けて行う。またHDRを27Gyで2回に分けて行う多施設共同検証試験も行われている。

 吉岡氏の施設も試験に参加している。治療は全身麻酔をし、経直腸的超音波検査(TRUS)をしながら針を刺入し、さらにCT撮影をして針を進め、1回あたり13.5Gyで照射する。今までは針を刺入したまま数日過ごすことが要されたが、この治療では針を抜去して、1カ月後にもう1回行う。針を刺す治療は「いやだと20年言われてきたが、やっと治療室以外では何もなかったかのような治療を開発することできた」と吉岡氏は語った。

 そして、前立腺がんに対するHDR、特に単独療法は、「局所効果のさらなる改善を望む必要はなく、同等の効果を保ちながら治療期間を1-2日に短縮させつつある」と話した。また実際の治療では、各種放射線療法を説明し、患者さんには好きなものを選んでもらうが、HDRについては、針を刺すが麻酔をするので気づかないうちに終わっていると説明するという。


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