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レポート

2020/01/07

日本放射線腫瘍学会第32回学術大会より 2

前立腺がんのX線外部照射はいま劇的に進化している

長期治療成績は良好で有害事象は軽減

八倉巻尚子=医学ライター

 がんが前立腺の中にとどまっている限局性前立腺がんの治療には、手術療法や放射線療法が行われる。手術では手術支援ロボットを使った内視鏡手術が増え、放射線療法では放射線を正確にかつ集中して照射できる技術が進み、がんの制御だけでなく、排尿機能や男性機能への影響も少なくなってきた。
 11月に名古屋で行われた日本放射線腫瘍学会第32回学術大会のシンポジウム「前立腺癌各種治療法の特徴」では、手術療法と各種の放射線療法の現状について紹介された。今回は、X線外部照射療法について、京都大学大学院医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学の溝脇尚志氏の講演内容を紹介する。


 前立腺がんの放射線療法には、体の外から放射線を照射する「外部照射」と、前立腺の中から照射する「内部照射」がある。X線による外部照射は「体への侵襲が少なく、低コストで、内部照射のように前立腺に針を刺したり、麻酔の必要もない」と溝脇氏はその利点を説明した。

 限局性前立腺がんの治療をより改善するには、局所制御と領域制御、全身制御という3つアプローチが考えられる。放射線の線量を増加させることで局所制御は可能で、全身治療である薬物療法を併用することで局所制御と領域制御、さらに全身制御にも効果が期待される。実際、放射線療法にホルモン治療のアンドロゲン除去療法(ADT)を併用すると生存期間が延長することが知られている。そのため外部照射療法をベースに、放射線の線量を上げて、ホルモン治療を併用する治療法が有用だろうと溝脇氏は述べた。

PSAのコントロールは高線量の内部照射のほうが得意?

 ところが内部照射である小線源治療は、前立腺がんでは外部照射療法よりも高い線量の照射が可能である。外部照射と小線源治療を比較したASCENDRE-RT試験では、PSAのコントロールは小線源治療のほうが優れていたことが報告されている。

 高リスクと中リスクの前立腺がん患者398人を対象に、12カ月のADTと骨盤照射、(46Gy/23回)を行った後に2群に分けて、外部照射療法の追加照射(ブースト:32Gy/16回)を行う標準治療群と低線量率小線源治療(115Gy)によるブーストを行う群を比較した。観察期間中央値6.5年の結果、PSA上昇で評価する生化学的無増悪生存期間(bPFS)は小線源治療群のほうが有意に良好だった。5年時点で比べると、小線源治療群のb-PFS率が89%、外部照射群で84%だが、9年になると83% と62% だった。しかし全生存期間(OS)には差がなかった(Morris WJ, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2017;98(2):275-85)。

 「この結果で重要なのは、2群のbPFSで差が開いてきたのが5年後であること。それまでに再発する人は“潜在転移”があり、それに対してはどの局所療法を行っても変わらない。5年以降になると線量の大きさが効いてくる」と溝脇氏は説明した。

 ただし外部照射には照射方法によっていろいろな種類がある。CT画像などを使ってがんの形や大きさに合わせて照射する三次元原体照射(3D-CRT)や、コンピュータを使って線量を調節し、がんに集中的に放射線を当てることができる強度変調放射線治療(IMRT)が使われている。

 ASCENDRE-RT試験で使われた外部照射療法は3D-CRTによるもの。しかし溝脇氏の施設における以前のデータで、中リスクと高リスクの患者にホルモン治療を行い、その後、高線量IMRT(74-78Gy)を実施した結果、観察期間中央値10年でPSA制御率は中リスクで84%、高リスクは73%だった(Mizowaki et al. Int J Clin Oncol. 2016;21:783-90/ Aizawa et al. Int J Clin Oncol. 2019; 24:1247-55)。自施設での3D-CRT(70Gy)のデータと比べても明らかにIMRTで優れており、やはり5年以降で治療成績に差が出ていた。

 このため、「局所制御を含めた真の制御率を知るには10年フォローアップが必要で、実際にどのような放射線療法をしたかというアプローチの質がそこで評価される」と溝脇氏は話した。また放射線療法の成績を比較するときの問題点として、上記の試験のように、PSA制御の結果がOSに反映しないことや、治療効果は術後ホルモン治療の有無や期間の影響を受けやすく、治療手段によって患者選択にバイアスがかかっていることもあるという。そのため、少なくとも患者背景や術後ホルモン治療の有無を揃えないと、治療法を比較することは難しいと指摘した。

外部照射はこの10年で劇的に進化し確実な照射が可能に

 「この10年で外部照射療法は劇的に変わった」と溝脇氏は言う。IMRTの応用型で回転原体照射と強度変調の機能を持つ強度変調回転照射法(Volumetric Modulated Arc Therapy: VMAT)も使われるようになっている。最近では高解像度の3次元画像を用いて、がんの位置を特定し、患者さんに合わせて位置調整しながら照射できる画像誘導技術(IGRT)によって、さらに確実な照射が可能になってきた。「位置を合わせてから10分も経つと前立腺は動いてくるが、VMATは1-2分ででき、治療照射中(Intra-fraction)の精度も上がっている」という。また通常、腫瘍にしっかり照射できるように数mmから数cmの幅(マージン)を持たせて照射範囲が決められるが、IGRTによってマージンが縮小され有害事象も激減したと話す。

 「従来のIMRTの成績と現在の成績を比べると、プロペラ戦闘機とジェット戦闘機ほどの違いがある」と溝脇氏。そのため従来のIMRTの成績だけで放射線療法を評価することはできないとした。

 これまでの前立腺外部照射法では、骨盤骨を基準に毎回の照射位置を設定していた。「IGRTがなかったときは1cmくらいのずれが出ていた。そのため内部照射の小線源治療が有効だった」という。しかし線量漸増IMRT(78Gy/39回)+IGRT+術後ADT(2.5年)の治療で、5年生化学的無病生存(bDFS)率が中リスク患者では95.5%、高リスク患者では91.3%と良好な成績が報告され(Wilcox SW, et al.J Med Imaging Radiat Oncol. 2015;59(1):125-33)、これは小線源治療の成績に負けない結果だった。

 国内単施設での画像誘導IMRT(トモセラピー)とADT併用の長期データも報告されている。74-78Gy/37-39回の照射を行い、放射線療法前のADTは中央値で9カ月、放射線療法後のADT中央値は22カ月だった。観察期間中央値は8.5年で、10年bDFS率は低リスク群では100%、中リスク群は84%、高リスク群は90%、超高リスク群は72%だった(Tomita et al. Asia Pac J Clin Oncol. 2019; 15:18-25)。なおリスク群によってADTの期間は異なり、「中リスク群でbDFSが低いのは放射線療法後のADTが入っていなかった可能性がある」と溝脇氏はコメントした。

 「これからの5年で、こういった良い成績が出てくると思う。それをベンチマークに、各治療法の効果や侵襲、コストを議論するべきだろう」と話した。

 また京都大学では54Gy/15回の画像誘導IMRTのパイロット臨床試験を実施。低リスクから中リスクの患者を対象に行ったところ、PSAの一過性の上昇(バウンス)は1例だけで再発はなく、グレード2以上の急性期および晩期有害事象もなかった(Nakamura K, et al. J Radiat Res 2018; 59:656-663)。「臨床的な手応えがあり、副作用も少ない」ことから、現在、高リスク患者を対象とした検討を進めているという。

寡分割照射で治療期間も大幅に短縮

 さらに外部照射療法は、通常分割照射に比べて1回あたりの線量を上げて、照射回数を減らす「寡分割照射」に移行しつつあるという。「寡分割照射によって、外部照射の最大の弱点であった治療期間の短縮ができるようになった」。寡分割照射のアプローチには、1回あたりの線量が違う、中等量寡分割照射と超寡分割照射(SBRT)がある(Bekelman JE, et al. J Clin Oncol. 2018)。

 中等度寡分割は1回線量が2.4-3.4Gyで、治療期間が4週から6週間。通常分割照射と比較した3つの第3相試験で非劣性が証明されている(CHHiP試験、PROFIT試験、NRG Oncology RTOG 0415試験)。超寡分割照射は1回線量が5.0Gy以上で、治療期間が1週間から2週間。これも第3相試験で通常分割照射に対して非劣性が証明されている(HYPO-RT-PC試験)。

 新しい技術を用いた外部照射でPSAの制御は向上し、寡分割照射で治療期間は大幅に短縮している。ただ「少数だが、晩期尿路障害と2次性膀胱がんの問題が残っている」。8万人以上を対象とした研究で、外部照射は手術(根治的前立腺摘除術)に比べて10年で膀胱がんの発生率が0.71%高く、直腸がんの発生率は差がないことが示されている(Moschini M, et al. Eur Urol. 2019; 75:319-328)。膀胱がんの主症状は血尿であることから、「放射線治療が終わったときにはPSAだけでなく尿も調べるようにしている」と溝脇氏は話した。

 最後に講演のまとめとして、「X線外部照射の最大の利点は低コストで非侵襲的に治療が可能であること」と述べた。またX線外部照射は、IMRT/VMAT+IGRTで劇的に進化し、長期治療成績は良好で、有害事象は最小化しており、手術や他の放射線治療法と比較しても遜色ない治療成績を実現しているとした。そして「寡分割照射の併用で、治療期間も大幅に短縮され、小線源治療や重粒子線治療とも競合可能となった」と話した。


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