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レポート

2019/12/17

かながわ血液がんフォーラムより 1

ドナーの都合でコーディネートに4~5カ月かかる骨髄移植の課題

福島安紀=医療ライター

 造血幹細胞移植は、白血病、悪性リンパ腫など血液がんの根治を目指す強力な治療法だ。血縁者やドナーの幹細胞を移植する同種移植と、事前に採取した自分の幹細胞を使う自家移植がある。
 認定NPO法人キャンサーネットジャパンが、11月に横浜市で初開催した「かながわ血液がんフォーラム2019」では、神奈川県立がんセンター副院長・血液内科部長の金森平和氏が、骨髄バンクを利用した移植ではドナーの都合で提供を断られる率が高く、コーディネートに120~130日かかる現状を講演した。


ドナーを探す間に死亡・病状悪化する患者も

 このフォーラムは、キャンサーネットジャパンが、血液がんに対する患者・家族、一般市民の理解を深めるため、神奈川県、一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン、はまっこ(多発性骨髄腫患者・家族の交流会)との共催で開いた。

 日本では年間約3600件程度の同種移植が実施されている。同種移植には、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の3種類がある。骨髄移植では全身麻酔をしてドナーの骨髄から幹細胞を採取する。末梢血幹細胞移植はG-CSFを使って骨髄から造血幹細胞移植を動員した末梢血を、血液成分分離装置を使ってドナーから採取する。臍帯血移植では、「さい帯血バンク」に保存されている、赤ちゃんの出産後に胎盤から採取した造血幹細胞を活用する。

 同種造血幹細胞を受けるには、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する血縁者かバンクドナー(非血縁者)から骨髄か末梢血の提供を受けるか、さい帯血バンクの臍帯血を活用する。HLAが一致する確率はきょうだい間で25%、両親や親戚では1%以下、他人同士では数百人から10万人に1人という。

 金森氏が問題提起したのは、骨髄バンクを利用した同種移植では、実際に骨髄を提供してくれるドナーにたどり着くまでに、平均120~130日もかかる点だ。「私も参加した厚生労働省の研究班で、2004年1月~13年12月の骨髄バンクコーディネートの現状を調べたところ、10年間で患者1万8487人に対して22万3842件のコーディネートが行われましたが、移植まで到達したのは1万1038人で、移植率(移植患者数/コーディネートドナー数)は4.9%でした」

 骨髄バンクドナーによる移植を希望しながら受けらなれなかった患者数は7449人で、その半分はドナーを探している間に死亡(43%)したか病状が悪化(7%)したためだった。骨髄提供が受けられた患者も、1人当たり平均約12人のコーディネートが必要だった。

移植未到達患者の終了理由の内訳
(平川経晃氏ら:「骨髄バンクコーディネートの現状」臨床血液59(2)p153-160、2018より引用)


20代~30代のコーディネート中止は仕事などドナー側の理由が多い

 「約21万件のドナーコーディネートが途中で終わっています。途中でコーディネートが中止になる多くはドナーさん側の理由です。50代ではドナー側の健康面で提供が受けられないことが増えるのですが、残念ながら20代では仕事を休めないなどドナー側の都合での中止が多くなっています」と金森氏。

年齢・性別ごとのコーディネート中止(21万件)理由
(平川経晃氏ら:「骨髄バンクコーディネートの現状」臨床血液59(2)p153-160、2018より引用)


 2015年度の実績では、日本骨髄バンクのコーディネートの93%がドナー理由で終了していた。健康理由以外でコーディネートが終了した理由の43%は仕事や育児を理由に「都合がつかず」で、「連絡がとれず」が35%、「家族の同意なし」が9%だった。こういった状況を踏まえて、骨髄バンクでは、今年からSNSを活用するなど、時代に合わせた連絡方法を取るようになってきているという。

骨髄提供ドナーや事業所の助成制度を設ける自治体も

 国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科の黒澤彩子氏らが、骨髄バンクドナーのコーディネート終了群と提供群に行ったアンケート調査では、コーディネートが早い段階で終了してしまった骨髄バンクドナーの77%が、職場・家族の調整が「非常に難しい」か「やや難しい」と感じたと回答した。実際に骨髄を提供したドナーでは、職場・家族の調整が難しいと感じた人が少なく、63%が「全く難しくない」「あまり難しくない」と答えたのと対照的だった。この調査では、提供群では、終了群に比べて、自治体の助成制度が利用できた人が多く、ドナー保険の加入割合が高かったことが分かっている。

 もう1つ、金森氏が骨髄バンクドナーからの移植の課題として挙げたのがドナーの高齢化だ。現役ドナーは52万人、登録した年齢は20代、30代と若いものの、現在の登録ドナーの年齢分布をみると40代にピークがある。

(造血幹細胞移植情報サービスHPより)


 「骨髄提供ができるのは55歳までですから、現在のドナーの多くが10年~15年経つと提供ができなくなります。安定して骨髄提供が受けられるようにするためには、若い人のドナー登録が必要です。社会的、心理的なことを含めて、ドナー自身だけでは解決できないこともあります。バンクドナーが第一ドナーとすると、それを支える第二のドナー、家族や職場を含めた理解が不可欠です」と金森氏は強調した。

 骨髄提供のためには、3泊4日程度の入院が必要だ。末梢血幹細胞の提供でも、入院が必要になる。骨髄提供ドナーが仕事を休みやすくするために、骨髄ドナー支援事業を実施する自治体も増えてきた。神奈川県内では横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市などの18市町が骨髄ドナー支援事業を実施し、仕事を休んだ場合にドナーや事業所へ県と市町が補助を行っている。骨髄提供ドナーへの助成を行う自治体や団体のリストは、日本骨髄バンクのホームページで閲覧できる(https://www.jmdp.or.jp/donation/about/post_202.html)。

血液ドナーの意思決定支援も重要

 この講演を受けて行われたパネルディスカッションでは、横浜市立大学附属病院中央無菌室HCTC(造血細胞移植コーディネーター)の秋山典子氏が、患者や血縁ドナーの意思決定支援を行う立場から次のように話した。「血縁ドナーは、突然治療の当事者になり、切羽詰まった中で骨髄や末梢血を提供するか選択を迫られます。もともと家族関係が難しかったり遠方で関係が希薄だったりする場合の血縁ドナーの支援は特に重要ですし、患者もドナーも子どもの場合、ドナーになるお子さんの権利をどう擁護していくかが課題です」

 HLAが合致した血縁ドナーがいない、あるいは、いても提供が難しい場合には、HLAが半分合致(不一致)している血縁ドナーからのパブロ移植、臍帯血移植が可能か、骨髄バンクドナーがいるか検討する。

 東海大学医学部付属病院血液腫瘍内科では、血縁ドナーが骨髄や末梢血を提供しないという選択もできるように、患者とは別の主治医がドナーへの説明を行う。同科准教授の鬼塚真仁氏は、「移植コーディネーターなくして造血幹細胞移植ができないくらい、患者や家族に寄り添うコーディネーターの役割は重要です。以前は、とにかく血液がんを治したい一心でしたが、最近は、QOL(生活の質)が元通りに戻るか、退院後の生活支援、職場復帰が移植医療のゴールになってきています。看護師、コーディネーター、リハビリ職種、栄養士などの多職種のチームでの支援が大切です」と強調した。

 神奈川骨髄移植を考える会で説明員のボランティアをし、2回の骨髄提供経験がある間島悠介氏は、「僕の場合は、家族や職場の理解は得られたのですが、骨髄提供のために仕事を休んだことを会社の人に話すと、『すごいね』『偉いね』などと言われて戸惑いました。ドナーになるのは特別なことではないと思ってもらうにはどうしたらいいか模索しています」と問題提起した。

 61歳だった2009年に成人T細胞リンパ腫/白血病(ATL)を発症し、骨髄移植を受けた神奈川大学特別招聘教授の浅野史郎氏(元宮城県知事)は、「ドナー登録するような人は立派な人だとみられると、私は普通以下だからやらないよとなりやすい。俺はそんな立派な人間じゃない、ちゃらんぽらんなんだけど、ドナーをやったという雰囲気作りが大事」と提言した。比較的早く骨髄提供ドナーが見つかり、骨髄移植は順調だったが、移植されたドナーのリンパ球が患者の正常細胞を敵とみなして攻撃するGVHD(移植片対宿主病)で肺炎になり生死をさまよったという。

 前出の金森氏は、骨髄提供経験のある俳優の木下ほうか氏と対談した経験から、「ラグビーのにわかファンのように、何となくドナー登録して、それから骨髄提供を真剣に考える人がいてもいいのではないか」とドナーのすそ野を広げる必要性を訴えた。

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