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レポート

2019/11/19

最近話題の「がんロコモ」って? 第2回

あなたの痛みは本当にがんのせい?

ベルランド総合病院リハビリテーション科部長 大島 和也氏

 「がんロコモ」――「がん」と「ロコモティブシンドローム」を組み合わせて作られた言葉ですが、あまり聞いたことがないかもしれません。しかし、がんの治療を続けていく上では、とても重要な概念です。体が動きにくくなっても、がんだからといって我慢していませんか? その不調は、本当に我慢が必要なんでしょうか? がんロコモの専門家の方々に、がんになっても長くいきいきと楽しく過ごすコツを語っていただきます。
 第2回は、ベルランド総合病院リハビリテーション科部長の大島和也氏に「あなたの痛みは本当にがんのせい?」という気になるテーマについてうかがいました。
(まとめ:小又理恵子=日経メディカル開発)



ベルランド総合病院の
大島和也氏

 「痛み」と聞いて、どのような痛みのことを思い浮かべますか? 頭が痛い、歯が痛い、お腹が痛い、腰が痛い――どの痛みも、思い出しただけでつらいものです。とにかく早く治してほしい! 痛みをとってほしい! そう思うかもしれませんが、痛みの種類や原因によって、効果的な治療も変わってきます。痛いと言っているのに、どんな痛みなのかあれこれ尋ねられて面倒に感じるかもしれませんが、丁寧に症状を診ることが重要なのです。

 がんによる痛みには大きく分けて「じっとしていても痛い」安静時痛と「動いたら痛い」体動時痛があります。じっとしていても痛いのは、がんそのものが体の中で暴れていたり、がんによって体の組織である骨や筋肉、内臓が悲鳴を上げていたりするからです。このようなときは、薬で痛みを和らげることができます。

 一方、動いたら痛いのは、体を構成したり支えたりする組織が傷ついているからと考えられます。このようなときは、残念ながら薬ですぐに痛みを和らげることは難しいです。なぜなら、動くたびに体が不安定な状態になって痛みを感じるので、その都度、その瞬間の痛みを和らげることが簡単ではないからです。ですが、コルセットなどで体の外から不安定な部分を固定すれば、痛みが和らぐこともありますし、痛みが起こりにくいように動作を工夫することもできます。また、たとえがんが進行していても、痛みを和らげることを目的とした手術(緩和外科)を行うこともできます。このため、まずは痛みの原因を見つけ、その解決策を検討できる状況にもっていくことが重要なのです。

 痛みの感じ方は人によってあるいは時によって様々で、例えば、同じ注射をしても、ある人は平気なのに、ある人はものすごく痛みを感じたりします。自分が感じている痛みをいくら説明しても、なかなか分かってもらえないこともあります。それが痛みだと言ってしまえばそれまでですが、痛みを周りの人に分かってもらえないと不安にもなり、もっと痛みを強く感じてしまう悪循環にもなります。

 この悪循環を断ち切るには、どこが、どんなときに、どのように痛いかをできる限り具体的に伝えて、原因を知ることがカギとなります。例えば、「腰が痛い」という訴えを丁寧に尋ねてみると、実は背中だったり脇腹に近い部分だったりします。「すごく痛い」と言っても、ズキズキした痛み、刺すような痛み、しびれるような痛み、けいれんするような痛みなど色々なケースがあります。

 自分の痛みを上手く医療者に伝えることができれば、原因を見つけやすくなります。原因を知ることができれば、多くの痛みはある程度コントロールできます。コツは、できる限り具体的に分かりやすく痛みを伝えることです。「動いたら痛い」だけでなく、どちらの方向にひねると痛いのか、起き上がろうとすると痛いのか、歩くと痛いのかを伝えることです。いま一度、自分の痛みと向き合ってみてください。

 また、がんによる痛みと思い込んでいたら、がんとは関係のない病気による痛みのこともありますし、がんの治療による痛みのこともあります。丁寧に診なければ正確な診断が難しいことは多々あり、痛みの真の原因が見逃されていることもよくあります。がんになりやすい年齢では、がんとは関係なく、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、変形性関節症、五十肩、偽痛風といった整形外科の疾患になることも決してまれではありません。また、がんの治療(抗がん治療薬など)の副作用で、関節炎や筋力低下による痛み、末梢神経障害によるしびれや痛みが出ることもあります。

 「痛いけれど、きっとがんのせいだろう」「がんだから、痛みくらいは我慢しなくちゃ」などと思い込まずに、痛みを楽にしてほしいと声を上げてください。その一方で、痛みをなくすことを目標にしないことも大切です。がんで痛みが続くと、焦りや不安、怒りなど様々な感情が巻き起こりますが、がんや痛みだけに意識を支配されるのではなく、「寝ることもできない痛み」から「じっとしていると痛い」へ、そして、「動くと痛い」へと少しずつ痛みを和らげていくことを意識してください。

 がんを治すこと、痛みをとることに支配されず、がんであっても少しずつでも動けて、少しずつでもいつもの生活ができることの幸せを感じてもらえればと思います。


最近話題の「がんロコモ」って?

第1回 がんと運動機能の意外な関係

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