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レポート

2019/11/12

第81回日本血液学会学術集会より

急性骨髄性白血病で期待される新たな治療薬候補

今後は遺伝子変異のスクリーニングと多様な管理が必要に

森下紀代美=医学ライター

殺細胞性抗腫瘍薬でも新規治療薬が登場

 新規の「殺細胞性抗腫瘍薬」の1つ、CPX-351は、ダウノルビシンとシタラビンの2つの薬剤を、細胞膜に似た構造の脂質二重膜の「リポソーム」に入れたリポソーム化剤。リポソームの状態で血液中を循環するため、骨髄の白血病細胞に能動的に取り込まれる。半減期(血中薬物濃度が半分に低下するまでの時間)が長いことも知られている。

 CPX-351の第III相試験では、未治療の二次性AMLまたは治療関連AMLで60-75歳の患者において、CPX-351と従来の化学療法を比較した。CR率は、CPX-351群37.3%、化学療法群25.6%、CRiも含めた複合寛解率はそれぞれ47.7%、33.3%となり、奏効率はCPX-351で有意に改善した。生存期間中央値は、CPX-351群9.56カ月、化学療法群5.95カ月となり、CPX-351群で有意に延長し、さらに、CPX-351で治療後に造血細胞移植を行った患者で生存期間がより延長することがわかった。(JE Lancetら、J Clin Oncol. 2018)。

 細野氏は「リポソーム化剤を用いたCPX-351は、これまで難治性だった二次性AMLや治療関連AMLに有望な薬として期待されている」と説明。ただし、好中球減少が回復するまでの期間はCPX-351でよりかかることから、感染症の管理が重要になる。

 また、殺細胞性抗腫瘍薬のゲムツズマブオゾガマイシンは、日本では2008年に再発・難治性のCD33陽性AMLに承認されているが、米国では毒性への懸念から承認が一度撤回され、2018年に初発CD33陽性AML、再発・難治性のCD33陽性AMLに再承認された。この再承認では、ダウノルビシン、シタラビンと併用する場合はごく少量の分割投与とし、ゲムツズマブオゾガマイシンを単剤で投与する場合も、日本よりも少ない量での分割投与が推奨されている。

 通常の化学療法を行う群と、化学療法に少量のゲムツズマブオゾガマイシンを追加する群を比較した第III相のALFA-0701試験では、未治療のAMLで50-70歳の患者280人において、2年生存率は化学療法の41.9%から、ゲムツズマブオゾガマイシンの追加により53.2%に改善した。ゲムツズマブオゾガマイシンの追加により、血小板減少症の増加は認められたものの、毒性による死亡のリスクの上昇はなかった。無イベント再発率(EFS)、無再発生存率(RFS)も、ゲムツズマブオゾガマイシンの追加で改善した(S. Castaigneら、Lancet 2012)。

開発中の薬剤も多数、耐性・予後不良例への効果も期待

 これらの薬剤以外にも、AMLに対する新規治療薬の開発は続いている。1つはチロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブで、日本でも慢性骨髄性白血病と再発・難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に承認されている。ダサチニブはBCR-ABLを阻害するとともに、c-KITの増殖抑制効果も持つ。c-KITは、AMLの中でも特殊な染色体異常を持つCBF(core binding factor)白血病において、治療抵抗性と関連する蛋白質として注目されている。

 ドイツで行われた初発CBF AML患者89人の第Ib/IIa相試験では、寛解導入療法と地固め療法でダサチニブを追加投与したところ、毒性は受容可能な範囲で、累積再発率などで有望な成績が得られた(P. Paschkaら、Leukemia 2018)。この結果から、現在CBF AMLにおいてダサチニブの第III相試験が進行中であり、結果が期待されている。

 NAE阻害薬であるpevonedistatの第III相試験も進行中である。pevonedistatは、活性酵素のNEDD8を阻害することにより、白血病のプロテアソーム活性を阻害し、細胞死を誘導する。第Ib/II相試験では、60歳以上の初発AMLで標準化学療法が適さない患者64人にpevonedistatまたはアザシチジンを投与した。CR、全奏効率はpevonedistatで優れ、初発AMLと二次性AMLともに良好な治療成績が示された(RT. Swordsら、Blood 2018)。

 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)9阻害薬alvocidibも、高い有効性が期待されている。alvocidibはCDK9の阻害を介し、蛋白質のMCL-1を抑制して細胞死を誘導する。第II相試験では、再発・難治性のAML25人を対象に、alvocidibとシタラビンとミトキサントロンの3剤を併用したところ、CRとCRiを合わせて62%となり、難治性AMLの11人中7人(64%)でCRが得られた。全対象ではCRが得られた13人中10人が移植に移行できた。

 ただし、alvocidibでは強力な抗腫瘍効果の反面、腫瘍崩壊症候群に注意が必要である。下痢も特徴的な副作用で、AMLの従来の寛解導入療法ではなかった対応が必要とされる。

 他にも、第2世代のメチル化阻害薬guadecitabineは、未治療AML、再発・難治性AML、アザシチジンとdecitabineに不応性のMDSを対象に、第III相試験が進行中である。

 また、アザシチジンは注射薬がすでに承認されているが、経口薬(CC-486)の開発も進んでいる。第I/II相試験では、症例数は少ないが、再発・難治性AML患者、アザシチジンとdecitabineによる治療歴がある患者でも有効性が認められた。現在、CC-486は、第一寛解期のAMLに対する維持療法として、第III相試験が行われている。

 開発初期の段階であるが、p53活性剤APR-246もある。APR-246が体内に入ると、遺伝子変異を起こしたp53が野生型のような構造変化を起こすとされる。TP53変異陽性のAMLとMDSを対象とした第I/II相試験で優れた全奏効率と生存期間が示され、米国ではファストトラック指定(効果が高いと考えられる新規治療薬を優先的に審査する制度)を受けている。TP53変異陽性のAMLは、化学療法に耐性で、再発率も高く、予後は不良であることから、細野氏は「こうした薬剤が1日も早く承認されることを期待している」と話した。

新規治療薬の登場で目指す方向とは?

 米国で承認されたAMLの新規治療薬は、近い将来、日本でも使用可能になる日が来るとみられる。細野氏は「これらの薬剤を使うにあたり、AMLのゲノム異常のスクリーニングを行い、治療選択をしていく必要がある。それにより、AML治療は従来のOne-Fits-All(誰にでも行える医療)から、Precision Medicine(高精度医療)に進めると思う」と話した。

 ただし、一部の薬剤は従来の化学療法やアザシチジンなどとの併用になるため、これらの薬剤の有害事象を理解したうえで新規治療薬を併用し、管理していく必要がある。

 多くの新規治療薬が登場すれば、治療選択肢は広がるが、選択はより難しくなる。新規治療薬同士の試験が行われていないためだ。「目の前の患者さんにどの薬剤がベストかはわからないため、患者さんの背景、薬剤の毒性、プロファイルなどを考えて選択していかなければならない」と細野氏。

 さらに、新規治療薬同士の併用についても、臨床試験が現在進行中である。

 最後に細野氏は「私たちは血液疾患の専門医として、次々と発表される新しいデータを理解し、目の前の患者さんに最新の治療を提供できるよう、勉強していく必要がある」と述べた。

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