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レポート

2019/11/12

第81回日本血液学会学術集会より

急性骨髄性白血病で期待される新たな治療薬候補

今後は遺伝子変異のスクリーニングと多様な管理が必要に

森下紀代美=医学ライター

 急性骨髄性白血病(AML)に対する新規治療薬が次々に登場している。米国では2017-18年に計8剤が承認された。これらの薬は、AMLの発症に関与する遺伝子を標的とする「選択的阻害薬」、腫瘍の増殖に関与するシグナル伝達を阻害する「シグナル阻害薬」、そして「殺細胞性抗腫瘍薬」に分けられる。現時点で日本で使用可能なのはこのうちの2剤だけだが、近い将来、他の薬剤も使用可能になることが期待されている。
 10月に東京都で開催された第81回日本血液学会学術集会の教育講演では、福井大学医学部附属病院血液・腫瘍内科副科長の細野奈穂子氏が「AMLに対する新規治療薬」と題した講演を行い、「日本で未承認の薬剤や適応外使用による臨床試験に関する情報が含まれている」としたうえで、これらの薬剤で期待される治療効果と管理の注意点、さらに現在開発が進んでいる薬剤について解説した。


FLT3阻害薬は再発・難治性AMLで生存期間を延長

 まず、AMLの発症に関与する遺伝子を標的とする「選択的阻害薬」である。米国NCCNガイドラインでは、新たに白血病と診断された場合の最初の評価として、遺伝子変異をスクリーニングすることが推奨されている。明らかになった遺伝子変異に応じて、リスクを考慮した後で治療方針が選択される。

 日本人の初発AML患者197人の解析でも、米国と同様の遺伝子変異が報告されている(R. Kiharaら、Leukemia 2014)。最も頻度が高いのはFLT3変異の25.4%で、KIT変異は14.2%、IDH1変異とIDH2変異はそれぞれ6.1%に認められた。ただし、日本では遺伝子変異のスクリーニングが保険適用となっておらず、実際の診療では難しい現状がある。

 米国で承認された選択的阻害薬の1つに、FLT3阻害薬がある。FLT3阻害薬のギルテリチニブは、FLT3陽性の再発・難治性AMLに対し、世界に先駆けて2018年9月に日本で承認された。第III相試験では、FLT3変異陽性の再発・難治性AML患者371人において、救援化学療法と比べてギルテリチニブが有意に全生存期間(OS)を延長したことが報告されている(A. Perlら、AACR 2019)。

 さらに日本では、FLT3阻害薬のキザルチニブも今年6月、FLT3変異陽性の再発・難治性AMLに承認された。現在、これらのFLT3阻害薬は、化学療法との併用、または化学療法後の維持療法、移植後の維持療法としての臨床試験が進んでおり、適応拡大が期待される。

IDH1/2阻害薬も再発・難治性AMLに効果

 選択的阻害薬には、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)1、2の遺伝子変異を標的とする薬もある。IDH1は細胞内、IDH2はミトコンドリア内に存在するが、IDH1、2に変異が起こるとDNAの脱メチル化が抑制され、造血細胞の正常な転写が進まなくなり、AMLを来すと考えられている。

 IDH2阻害薬enasidenibは、米国ではIDH2変異陽性の再発・難治性AMLに承認されている。米国の第I/II相試験では、IDH2変異陽性の再発・難治性AML患者239人において、全奏効率40.3%、完全寛解(CR)率19.3%、生存期間中央値9.3カ月、1年生存率は39%となった(EM. Steinら、Blood 2017)。単剤の内服としては良好な成績と判断された。

 IDH1阻害薬ivosidenibは、米国ではIDH1変異陽性の再発・難治性AML、またはIDH1変異陽性の75歳以上のAMLに承認されている。米国の第I/II相試験では、IDH1変異陽性の再発・難治性AML患者125人において、全奏効率41%、CR率22%、生存期間中央値は8.8カ月となった。CR、またはそれに準じる部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)が達成された患者では、生存期間がより延長することも示された(CD. DiNardoら、N Engl J Med. 2018)。

 enasidenibとivosidenibは、代謝拮抗薬のアザシチジンと併用する第I/II相試験が進行中である。まだ初期のデータであるが、ivosidenibとアザシチジンの併用の全奏効率が78%となるなど高い効果が示されており、試験の結果が期待されている。

 ただし、IDH阻害薬の有害事象として、IDH分化症候群が7-10%に起こるとされている。主な症状は白血球増加、発熱、浮腫、呼吸困難、肺浸潤影などで、発症までの期間の中央値は約29日。これらの症状が現れた場合は、IDH阻害薬の減量や休薬、ステロイド剤や利尿薬の投与、状態によっては、細胞減少治療薬のヒドロキシウレアによる白血球数のコントロールが必要となる。

BCL-2阻害薬が高齢の初発AMLで高い完全寛解率

 次に、腫瘍の増殖に関与するシグナル伝達を阻害する「シグナル阻害薬」である。BCL-2遺伝子を標的とするベネトクラクスは、日本でも2019年9月に再発・難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)に承認されたばかりだ。米国では初発AMLにも承認されており、その対象は75歳以上、または強力寛解導入療法が適応とならない患者に承認され、低用量シタラビンまたはアザシチジンやデシタビンと併用することとされている。

 米国の第I/II相試験では、60歳以上の初発AML患者82人において、ベネトクラクスと低用量シタラビンの併用療法により、CR率は26%、血液の回復が不完全な完全寛解(CRi)率は28%と高い治療効果が示され、効果の持続を示す奏効期間中央値は8.1カ月となった。生存期間中央値は10.1カ月、1年生存率は、CRが得られた患者で100%、CRiの患者では49%だった(AH Weiら、J Clin Oncol 2019)。

 ベネトクラクスの別の第I/II相試験では、65歳以上の初発AML患者145人において、アザシチジンとの併用療法のCR率は37%、CRi率は30%となった。生存期間中央値は17.5カ月、2年生存率46%と高い効果が示された(CD DiNardoら、Blood 2019)。

SMO阻害薬は低用量シタラビンとの併用で効果

 シグナル阻害薬には、SMO阻害薬のglasdegibもある。glasdegibは、腫瘍の増殖と進展に重要なヘッジホッグシグナル伝達経路のSMOと呼ばれる部分を阻害する。米国では、初発AMLで75歳以上、または強力寛解導入療法が適応とならない患者に承認され、低用量シタラビンと併用することととされている。SMOは味覚を認識するシグナル伝達経路でもあるため、glasdegibを内服した患者では味覚障害が高い頻度で起こる。

 glasdesibと低用量シタラビンの併用を検討した第II相試験では、未治療のAMLまたは骨髄異形成症候群(MDS)の患者132人において、CR率が低用量シタラビンのみで2.3%、併用により17.0%に改善し、生存期間中央値も4.9カ月から8.8カ月へと有意に延長した(JE Cortesら、Leukemia 2019)。

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