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2019/10/08

最近話題の「がんロコモ」って? 第1回

がんと運動機能の意外な関係

帝京大学整形外科主任教授 河野 博隆 氏

 「がんロコモ」――「がん」と「ロコモティブシンドローム」を組み合わせて作られた言葉ですが、あまり聞いたことがないかもしれません。しかし、がんの治療を続けていく上では、とても重要な概念です。体が動きにくくなっても、がんだからといって我慢していませんか? その不調は、本当に我慢が必要なんでしょうか? がんロコモの専門家の方々に、がんになっても長くいきいきと楽しく過ごすコツを語っていただきます。
 第1回は、帝京大学整形外科主任教授の河野博隆氏に「がんと運動機能の意外な関係」についてうかがいました。
(まとめ:小又理恵子=日経メディカル開発)


帝京大学の河野博隆氏
(写真:柴 仁人)

 がんロコモについて紹介する前に、まずはロコモに触れておく必要があるでしょう。ロコモとは、「ロコモティブシンドローム」の略称です。ロコモティブシンドロームは「運動器(骨や関節、筋肉、神経など、身体を支えて動かす器官)が障害されて移動能力が低下した状態」と定義されています。

 これだけではちょっとわかりにくいかもしれませんが、年齢を重ねるにつれて、長い横断歩道を渡るのに以前より時間がかかるようになったり、立ち座りなど、日常生活で必要な動作がスムーズにいかなくなったりすることをイメージしてもらえばよいかと思います。あちこち痛くなったり不調を感じたり、歳のせいかな、と感じる運動機能の低下の多くがロコモと考えてもらえば、重要性を理解いただけるのではないでしょうか。

 ではこのロコモが、がんとどう関連しているのでしょうか?

 がんロコモは「がん自体あるいはがんの治療によって、運動器が障害されて移動機能が低下した状態」と定義されます。これもちょっとわかりにくいので、具体的に説明していきましょう。がんロコモは(1)がんによる運動器の問題、(2)がんの治療による運動器の問題、(3)がんと併存する運動器疾患の問題――の3つの柱から成っています。

 1つ目のがんによる運動器の問題とは、原発性骨悪性腫瘍や骨転移といった、運動器に発生・転移したがんのことです。2つ目のがんの治療による運動器の問題とは、運動器にがんが発生していなくても、治療のための入院期間が長くなるにつれて筋力が低下してきたり、がんの治療(抗がん薬)によって、骨粗鬆症や末梢神経障害といった副作用が生じたりすることを指します。

 3つ目のがんと併存する運動器疾患の問題とは、これまでの2つとは少し趣が異なります。高齢の方は、元々膝や腰などが悪く、ロコモの状態であることが多いのですが、がんになると、そのような運動器の治療が後回しになってしまいがちです。また、がんとは関係のない運動器の病気が、がんと関係あるのではないかと思われていることもあります。

 そもそもがんは、がん以外の様々な病気を抱えがちな高齢者に多くみられます。がんによる痛みやしびれと思われていた症状が、よく調べたら腰部脊柱管狭窄症や偽痛風といった全く別の整形外科的な病気だった、というケースは少なくありません。特に痛みは、がんの進行に伴って生じることが多いので、がんのせいだと考えられがちですが、思い込みは禁物です。一度は、詳しい整形外科医に診てもらうことをお勧めしたいと思います。

 次に、がんロコモがなぜ重要なのか、ということです。今、抗がん薬治療の多くが外来化学療法となり、がん治療は、入院して受けるものから外来通院して受けるものへと変化してきました。このため、患者さんがどの程度自分で「動ける」自立した生活を送れているか、ということは、今後抗がん薬治療を続けられるかどうかに直結します。

 整形外科医の適切な介入によって運動機能が改善すれば、諦めかけていた外来抗がん薬治療を継続できる可能性があるのです。また、買い物に行く、美味しいものを食べにレストランに行く、友達と会っておしゃべりをする、家族と旅行をする……どれも、人生を豊かに彩る出来事ですよね。がん患者さんのお話を聞いていると、そうした楽しみを「がんがあるから」と我慢してしまう傾向がみられます。

 もしかしたらその我慢の中には、整形外科医が解決できる症状があるかもしれません。以前は確かに整形外科医の側にも、がん診療に関わることに及び腰な部分がありましたが、大分考え方は変わってきています。早期のがん患者さんに対しても、色々と関わることができる環境が整ってきました。がんになっても自分自身の生活を続けるために、そしてがん治療に専念するためにも「がんロコモ」という概念を頭の片隅に置いておいていただき、もし運動器に関する悩みがあったら、積極的に整形外科医にご相談ください。

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