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レポート

2019/7/31

日本婦人科腫瘍学会より

照射技術が向上した子宮頸がんの放射線治療(1)

臨床病期ごとの標準治療

八倉巻尚子=医学ライター

 子宮頸がんの治療は進行の程度によって手術や放射線治療、化学療法が行われるが、その中で化学療法と放射線治療を同時に行う同時化学放射線治療も大きな役割を担っている。最近では照射技術の進歩で局所制御率が高まり、有害事象も減ってきている。
 7月に開催された第61回日本婦人科腫瘍学会学術講演会の教育プログラムで、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科の加藤眞吾氏が、子宮頸がんの放射線治療と化学放射線治療について、最近のデータも含め、標準治療とその根拠となるデータを紹介した。臨床病期ごとの治療法と実際の化学放射線治療について2回に分けて掲載する。
 前半は臨床病期ごとの標準治療について。


ⅠB1期・ⅡA1期の標準治療は手術または放射線単独

 子宮頸がんは進行によって、臨床病期がI期からIV期に分けられている。「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」によれば、病変が子宮頸部に限局し腫瘍径が4cm以内の「IB1期」と、病変は膣壁に広がっているが子宮頸部の周囲の組織には広がっておらず腫瘍径が4cm以内の「IIA1期」の治療は、「手術による広汎子宮全摘と並んで、放射線単独治療が標準治療となっています」と加藤氏は説明した。

 その根拠の1つとして、欧州で行われたIB-IIA期の子宮頸がんを対象にしたランダム化比較試験で、手術と放射線治療は全生存期間(OS)に関して同等の有効が示されている(Lancet 1997;350:535-540)。特に腫瘍径が4 cm以下では良好な生存率が示された。日本でも2004年から2007年に多施設共同前向き試験が行われている。その結果、放射線単独治療によって3年生存率が95%と「欧米の治療成績と同等であり、日本の放射線単独治療の安全性と有効性は証明されています」(Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2012; 82: e49-56)。

 このため子宮頸がんのIB1期、IIA1期の治療成績は、「手術と放射線治療では同等であることが示され、腫瘍径が4cm以下であれば放射線単独治療で十分根治が期待できます」。ただし「施設ごと、患者さんごとの事情を考慮して治療方針を決める必要があり、例えば、患者さんの年齢や卵巣・性機能温存の希望、肥満、合併症などを考慮して治療方針は設定されます」と話した。

I・II期手術後で病理学的に再発中・高リスク群には
術後補助療法として(化学)放射線治療


 I・II期で広汎子宮全摘術を行なった場合、術後の病理学的検討から再発リスクが高いと考えられる場合には補助療法が行われる。手術所見で骨盤リンパ節転移がなく、子宮周囲の子宮傍(結合)組織への浸潤はないが、脈管侵襲、深い頸部間質浸潤、大きな頸部腫瘤のいずれか2つ以上があった場合は中リスク群とし、それに対しては補助療法として放射線治療あるいは化学放射線治療が推奨されている。また、骨盤リンパ節転移あるいは子宮傍(結合)組織浸潤がある場合(米国NCCNガイドラインでは手術断端陽性もリスク因子に含まれる)は高リスク群に分類され、術後の化学放射線治療が補助療法として推奨されている。

 その根拠となったのは、中リスク群に関して、米国の婦人科がん臨床試験グループ(GOG)が行った臨床試験(GOG92)。IB期子宮頸がんで手術所見により中リスク群と判断された患者を対象に、手術単独群と術後補助療法として放射線治療(全骨盤照射46-50.4Gy)を行った群が比較された。その結果、術後の放射線治療は再発率、特に骨盤内再発を低下させ、無増悪生存期間(PFS)を改善させた(Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006; 65:169-176)。OSに有意差はなかったが、術後の放射線治療によって延長する傾向は見られた。ただし術後の放射線治療は、イレウス(腸閉塞)や骨盤骨折、リンパ浮腫などの有害事象の発生を増加させる傾向にあった。

 高リスク群でも、臨床試験(Intergroup0107)が行われている。IA2、IB、IIAで術後に高リスクと判断された患者を対象に、補助療法として放射線単独治療の群と、放射線治療に化学療法(シスプラチン、5-FU)を併用する群に分けた。その結果、術後の化学放射線治療は再発率、特に骨盤内再発を低下させ、PFSとOSを改善させた(J Clin Oncol. 2000; 18:1606-1613)。ただし術後の化学放射線治療は有害事象の発生を増加させる傾向が見られた。

照射方法の進歩で有害事象を軽減

 術後の放射線治療では、従来より骨盤部を前後・左右から照射する3D-CRT(3次元原体照射)が行われてきた。この方法では、治療の対象となる骨盤リンパ節領域と膣断端部だけでなく、小腸や大腸、膀胱、骨盤骨などの正常組織への線量も全体的に高くなってしまい、「これが術後の腸閉塞や骨盤骨折、リンパ浮腫などの有害事象を増加させる原因となっていました」。これに対し、現在では術後にIMRT(強度変調放射線治療)が行われることが多くなっている。

 NRG/RTOG1203試験では、術後に3D-CRTを行なった場合に比べ、IMRTを用いた場合は消化管と尿路の急性期有害事象を明らかに軽減させることが報告されている(J Clin Oncol. 2018; 36:2538-2544)。IMRTではリンパ節領域と膣断端部への線量の集中が可能になり、小腸や膀胱などの正常組織の線量を低く抑えることができるため、「有害事象の軽減や化学療法の強度の増強に期待が持たれています」とした。日本でも子宮頸がんの高リスク群に対して、IMRTを用いた術後同時化学放射線療法の多施設共同試験(JCOG1402)が行われている。

IB2・IIA2・IIB期は手術と化学放射線治療、III・IVA期は化学放射線治療

 病変が子宮頸部に限局し、腫瘍径が4cmを超える「IB2期」、病変が膣壁に広がっているが子宮頸部傍組織には広がっておらず、腫瘍径が4cmを超える「IIA2期」、病変が子宮傍組織に広がっているが骨盤壁には達していない「IIB期」においては、手術±術後(化学)放射線治療と化学放射線治療が標準治療となっている。病変がさらに広がっているIII期およびIVA期では、化学放射線治療が唯一の標準治療である。

 その根拠となる試験が、米国を中心としてIB2-IVA期を対象にいくつも行われ、化学放射線治療の有用性が示されている。たとえば、シスプラチン/5-FUの同時併用を検証した試験(RTOG90-01)では5年生存率は73%で、放射線単独治療群に比べて有意に予後を改善した(N Engl J Med 1999; 340:1137-1143)。有害事象については、「化学放射線治療のほうが放射線単独治療に比べて、急性期の有害事象の発生頻度は高くなっていますが、安全に施行可能と判断されました」。一方、遅発性の有害事象の発生頻度は同等であると報告されている。

 化学放射線治療に関して、3つのメタアナリシスが行なわれている。1990年代から2000年代に行われた15の第III相試験のデータ(3452人)を解析した研究では、化学放射線治療は通常の放射線治療と比べて明らかに予後を改善させることが示されている(ハザード比0.81、p=0.0006)(J Clin Oncol. 2008; 26:5802-5812)。そのため「高いエビデンスを持って進行子宮頸がんでは化学放射線治療が標準治療となっています」。

 日本においても、JCOG1066試験が2008年から2011年にかけて行われ、放射線治療とシスプラチンによる化学療法を同時併用した結果、「欧米の臨床試験の治療成績と同等で、日本の放射線治療方法での化学放射線治療の安全性と有効性は証明されました」(Gynecol Oncol. 2012; 126:211-216)。

術前化学療法+手術 vs. 化学放射線治療の結果は?

 「IB2期からIIB期に関して、術前の化学療法(NAC)を行った後に手術をするか、化学放射線治療をするかが議論になっていました」。これについては最近、2つの第III相試験の結果が報告されている。1つはインドの研究で、IB2期、IIA期、IIB期の扁平上皮がんを対象に比較試験が行われた。その結果、5年時点の無病生存期間(DFS)はNAC+手術群が69.3%、化学放射線治療群が76.7%(p=0.038)で、化学放射線治療が有意に予後は良好だった(J Clin Oncol. 2018;36:1548-1555)。

 また欧州の研究グループの試験(EORTC 55994)は、IB2-IIB期の子宮頸がんで扁平上皮がんと腺がんを対象に行われた。その結果、5年時点のPFSはNAC+手術群が57%、CCRT群が66%(p=0.021)で、有意に化学放射線治療群で良好であった(J Clin Oncol. 2019; 37, 15 suppl. 5503)。これらの結果から、「IB2、IIA2、IIBに関して、化学放射線治療の有効性が示されたと考えています」と加藤氏は述べた。

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