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レポート

2019/7/9

愛知県がんセンター公開講座より

脊椎に転移しても「動ける」ために

早期発見には痛みや痺れがあれば医師に伝えることが大事

八倉巻尚子=医学ライター

脊椎転移は放射線治療が基本

 放射線治療は、放射線をがん細胞に当てて、がん細胞を死滅させ、腫瘍を小さくする治療である。「放射線治療を行うと、6割くらいの方で痛みが緩和します。神経麻痺が出ていなければ、早く治療を行うことで神経麻痺を予防できると言われています」。

 しかし放射線治療には限界と弱点がある。放射線には骨折を治す効果はないので、重症の骨折を起こしたときは、放射線を当てても治らない。また骨折の痛みは放射線だけでは緩和は得られにくいという。さらに、がんの種類やがんの性格によって放射線が効きにくい場合もある。放射線療法の弱点は、効果が出るのに時間がかかること。放射線治療が始まって、数週間かけてがんは徐々に小さくなっていく。そのため「急いで治療しないといけない場合、手術を行った上で放射線治療をすることもあります」。

手術器具や機器の改良で脊椎脊髄手術は進歩

 「最近は、脊椎脊髄の手術が非常に進歩しています」と灰本氏は言う。例えば、脊椎の骨折には脊椎を固定する手術が必要になるが、手術に使う固定器具の改良が進んでいる。固定のために脊椎に入れる金属製スクリューの構造が良くなって、しっかり骨を挟んで強固な固定ができるようになった。そのため重症の骨折の患者さんでも手術を受けると、すぐに痛みが取れ、かつしっかり固定ができるので、手術後すぐに動けるようになるという。

 また画像誘導(ナビゲーション)技術も普及してきている。主にスクリューを正確に打ち込むための技術の開発がされているという。具体的には、スクリューの先端にモニターをつけて、実際に脊椎のどの位置をスクリューが通っているかを把握する。首の骨のように小さい骨でも、ナビゲーション技術によって細い場所に正確にスクリューを挿入でき、しっかり固定するのに役立つ。

からだへの負担が小さい低侵襲手術へ

 「脊椎脊髄手術の進歩で一番大きいのは、新しい手術法が出てきたことです」。灰本氏は、「最小侵襲脊椎安定術」と「経皮的椎体形成術」の2つの手術法を紹介した。

 最小侵襲脊椎安定術は、背筋を剥がさずにスクリューで脊椎を固定する方法。重症の骨折で、脊椎が不安定になっている場合に行われる。従来は、脊椎から筋肉を剥がしてスクリューを脊椎に入れていたが、新しい手術法では筋肉の間からスクリューを入れたり、筋肉を通してスクリューを入れる。背筋を剥がさないため体への負担が少なく、術後の痛みも少なくなった。手術後は安静にする必要はないため、すぐにリハビリテーションが開始でき、離床が可能になる。

 もう1つの経皮的椎体形成術は、骨セメントで骨折部を固める手術。圧迫骨折で痛みが強い場合に行われる。この手術では、「皮膚をほとんど切らずに脊椎に5mmくらいの針を刺して、圧迫されて潰れた脊椎の中で風船を膨らまし、潰れたところを持ち上げます。空間を作ったので、その中に骨セメントを注入して固めていきます」。全身麻酔で行われるが、出血もほとんどなく、脊椎は安定化して、すぐに痛みが取れて動けるようになるという。脊椎転移の患者を対象にした経皮的椎体形成術の報告では、術後1週間以内に痛みが取れて、動けるようになっていた(Lancet Oncology 2011)。

 また低侵襲の手術ではないが、神経麻痺が起こりそうな場合や放射線治療が効かない場合には、がんを取り除いて脊髄を除圧する「脊椎腫瘍摘出術」も行われる。手術用の顕微鏡を用いて脊髄を圧迫している腫瘍を取り除く手術だが、手術用の顕微鏡が改良され、脊髄の周りの腫瘍を安全に取り除くことができるようになっているという。また以前は出血が多く、「患者さんに負担をかける手術でしたが、最近は止血剤やカテーテル治療で出血量を減らすことができます」。

ピンポイント照射で脊髄への影響を減らす

 放射線治療もさらに進歩している。がんだけに集中して放射線をあて、周りの正常な組織にあたる放射線の量を減らすことができる定位放射線治療がその1つ。ピンポイント照射とも呼ばれる。海外ではかなり普及しているが、日本では全国の限られた病院で導入されている。

 通常の照射法では脊椎全体に放射線を当てるため、脊椎の中の脊髄にも放射線が当たるが、ピンポイント照射では脊髄を避けて照射することができる。また通常の照射法ではたくさんの量の放射線を当てることはできないが、ピンポイント照射ではそれが可能になる。特に、「放射線治療を行ったのに、がんが再発した場合に有効な治療です」。最初の放射線治療で照射を受けた脊髄に、これ以上放射線を当てさせないように、ピンポイントでがんだけに当てることができるためだ。

 ただし、「この治療は骨折を起こしやすいといわれていますので、骨折に対する処置も必要になってきます。脊椎にピンポイント照射をする場合は専門病院で治療を受けることをお薦めします」と灰本氏は言う。

 そして患者さんへのメッセージとして、「がんになっても長生きできる時代になりましたが、一方で、脊椎転移による症状で苦しむ患者さんは増えています。しかし脊椎転移に対する新たな治療法が登場して、早期に治療を開始できれば、QOLを維持しながら、がん治療を継続することが可能です」と話した。

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