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レポート

2019/07/09

愛知県がんセンター公開講座より

脊椎に転移しても「動ける」ために

早期発見には痛みや痺れがあれば医師に伝えることが大事

八倉巻尚子=医学ライター

 背骨(脊椎)にがんが転移すると、脊椎の中の神経が障害されて、首や背中、腰に痛みを感じたり、手や足が痺れ、動かなくなったりする。しかし早く発見すれば、手術や放射線治療で普段の生活ができるようになる。治療法は進歩し、体への負担が少ない低侵襲の手術も行われるようになってきた。
 5月に開催された愛知県がんセンター公開講座「もっと知ってほしいがんロコモ!」で、愛知県がんセンター脳神経外科部の灰本章一氏が、脊椎転移という病気について、早期診断の重要性、そして新しい手術法と放射線治療について紹介した。


 脊椎転移とは、骨転移の1つで、背骨にがんが転移したことをいう。転移とは「がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパ管に入り込み、別の臓器・器官へ移動し、そこで増えること」と灰本氏は説明した。がんが転移しやすい場所は、肺、肝臓、骨、脳、リンパ節などだが、特に骨転移は多く、「進行がんの患者さんの約3人に1人に見つかるといわれています」。さらに骨転移の中でも頻度が高いのが脊椎転移だという。

 「骨に転移したら末期ですか、と患者さんに聞かれることがありますが、最近はがん治療が進歩して、骨に転移しても長生きされる患者さんは多くなっています」と灰本氏。ところが逆に、骨転移による症状に苦しむ患者は増えてきているという。「脊椎転移はQOL(生活の質)を低下させる大きな原因となります」。

 また「がん治療を続けていくには体力が必要ですが、脊椎転移で“動けなくなる”と、体力が落ちて、がんの治療ができなくなってしまいます」。そのため「診断をしっかりして、治療していくことが非常に大事になっています」と灰本氏は話した。

脊椎転移の主な症状は痛みと神経麻痺

 脊椎転移の症状は大きく分けて2つ。1つは痛みで、首や背中、腰に痛みが出やすい。脊椎転移で神経が刺激されて、お尻や足が痛くなる坐骨神経痛や、あばらがチクチク痛んだりする肋間神経痛が起こる。また脊椎転移で骨が脆くなって、骨折をしてしまう(脆弱性骨折)と強い痛みが出る。

 もう1つの症状は神経麻痺。脊椎の中には脊髄という神経が通っているため、脊椎転移が進行すると、脊髄ががんに圧迫されて神経の働きが障害される。そのため手や足が動かなくなったり、手や足に痺れが出てきて、感覚が鈍くなったり、あるいは排尿や排便ができなくなる。

 神経麻痺が出て歩けなくなってしまった患者さんには、緊急手術をして、脊髄を圧迫しているがんを取り除くことがある。しかし「問題は、一度死んでしまった脊髄の神経細胞は再生しないということです」(灰本氏)。IPS細胞などを使って再生治療に関する研究はされているが、現時点では脊髄の細胞を再生させる治療はないため、「歩けなくなってしまってから手術をしても、歩けるようになれない患者さんが多いのが現状です」。

早期発見に大切な2つのこと

 「脊椎転移があっても“動ける”ためには、早期発見して治療していくことが大事です」。ところが脊椎転移は進行が早いため、早期発見がなかなか難しいという。「痛みを感じてから神経麻痺が出るまでに、何も治療がされてない場合は2カ月くらいです。そして神経麻痺が出てきてから、足の力が入らなくなって、歩けなくなるまでは1週間以内です」。

 そのため「脊椎転移を早期発見するために、患者さんにお願いしたいこと」として、(1)「脊椎転移という病気について知っていただく」。首の痛みや腰の痛み、しびれなどは日常生活でよく経験する症状であるため、患者さんもあまり重要視しないで、主治医に報告をせず、発見が遅れてしまうことがある。そこで(2)「痛みや痺れを自覚したら、必ずすぐにがんの主治医へ報告する」ことが重要だという。整形外科や脳神経外科を受診した場合は、がんの治療中であること、あるいは過去にがんの治療を受けたことを必ず担当の先生に伝えることも大事で、その情報をもとに医師は脊椎転移を疑って検査をしていくとした。

 脊椎転移を見つけるために必要な検査は、造影CTとMRI、レントゲン(X線)。各検査にはそれぞれ利点と欠点があり、造影CTやMRIでは脊髄や腫瘍の形・大きさがよくわかるが、レントゲン写真では脊髄が映らないため、早期発見ができない。「大事なことは、主治医の先生に症状を報告して、CTやMRIによる精密検査ができる病院を、とにかく早く受診することです」。

 愛知県がんセンターでは、患者さんががんの主治医に症状を報告すると、脊椎脊髄専門医や放射線治療専門医、画像診断専門医も診療に加わり、早期に診断し治療にあたるといった取り組みを開始している。実際に治療を行うときは、脊椎脊髄専門医あるいは放射線治療専門医が診察をした上で治療法を決める。治療は、放射線治療が基本で、放射線治療に手術を組み合わせる複合治療を行うこともある。そのため「放射線治療と手術のどちらも行える病院で治療を受けることが薦められます」とした。

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