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レポート

2019/07/02

愛知県がんセンター公開講座より

食道がん手術を乗り越えるために

早い回復のために体を動かすことが大切

八倉巻尚子=医学ライター

伊藤敬太 氏

呼吸リハビリテーションがなぜ大切か

 理学療法士の伊藤氏は、術前後の呼吸リハビリテーションで行われる腹式呼吸と痰を出す排痰法について紹介した。

 われわれが呼吸をするとき、座位や立位では、横隔膜が下がることで肺が膨らみ、息を吸うことができる。しかし仰向けで寝ていると、横隔膜が上がり、重力で肺が潰されて肺は膨らみにくくなる。また手術で、肺が障害されたり、炎症によって胸に水が溜まると息が吸いにくくなる。あるいは術後の痛みによって息が吐きにくくなることもある。

 手術前の肺活量を基準にすると、開胸手術の後では肺活量は40%減少、上腹部手術では60%減少し、減少した状態が一週間ほど続くという。呼吸器合併症は手術後3日間に好発する。そのため「術後早期から段階的に座位や立位をとり、積極的に歩行をして、肺を膨らみやすくする必要があります」と伊藤氏は説明した。

 また手術後に息が吐きにくくなると、痰も出しにくい。痰が気管に詰まると、空気が行き届かなくなり(無気肺)、それが悪化すると肺炎を起こしてしまう。そのため「痰が出せるように排痰法を練習する必要もあるのです」。

 肺炎などの呼吸器合併症を予防するには、手術前から、横隔膜を動かして肺を膨らませる腹式呼吸を行うこと。また創の痛みを抑えながら、痰が出せるように排痰法の練習を行う。加えて、手術前に運動を行って体力を備えること。そして手術後は、早期から歩行を行って、横隔膜を下げて肺を膨らませることがポイントだという。「こうした手術前後の呼吸リハビリテーションや早期歩行により、呼吸器合併症が減少し、手術後の入院期間が短縮する効果があるといわれています」(伊藤氏)。

 実際に同センターでは、手術の2週間前の外来受診時から、腹式呼吸、排痰法、コーチ2という呼吸訓練器の指導を行なっている。

 腹式呼吸について、伊藤氏は動画を映写しながら以下のように説明した。「手を常にお腹に当てて動きを確認します。吸うときはお腹を膨らませ、吐くときはお腹が凹むようにします。吸うときは鼻から吸って、吐くときは口から約2倍の時間をかけてゆっくりと吐きます」。

 排痰法は、「吸うときは鼻からゆっくりと大きく吸います。吐くときは口を開いて、ハッと強く息を吐きます」。お腹にクッションを当てて抑えると、お腹の傷の痛みを和らげることができるという。

 さらにウォーキングの自主訓練も行う。ウォーキングはいつもより10分多く歩いたり、いつもより1000歩多く歩いてもらう。調査したところ、ウォーキング1日あたり6000歩という課題を10人中8人が達成できていたという。

 手術後は、看護師と理学療法士が患者さんの左右に付き添って、1周60mの病棟廊下を、1日目は1周を目標に、2日目は3周、3日目は5周を目標に歩いてもらう。調査では、1日目に1周以上、2日目は2周以上、3日目に3周以上という課題を10人中8人が達成できていた。また手術前に行なったコーチ2の訓練は手術後も継続して行う。

 そして社会復帰に向けた訓練として、活動量計を使用して、歩数や早歩きの時間を管理する。併せて有酸素運動をしたり、治療中に低下しやすい足腰の筋力訓練(スクワットなど)を行なっているという。

 講演の最後に、「食道がん手術を乗り越えるために、お土産として持って帰っていただけるような、ことわざを3つお伝えします」と伊藤氏。1つ目は“備えあれば患いなし”。「食道がんの手術を乗り越えるためには、手術前から呼吸訓練を行うことが重要です」。2つ目は“早期歩行は三文の徳”。「上記2つで、呼吸器合併症の予防や術後の入院日数の短縮といった効果があります」。3つめは“継続は力なり”。「無事退院された後も、ふだんの生活に再び戻るためには、退院後の活動管理や運動を継続することが重要です」と話した。

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