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レポート

2019/6/25

愛知県がんセンター公開講座より

がんロコモって何ですか?

骨転移や治療による運動器の障害をどう防ぐ

八倉巻尚子=医学ライター

 骨や関節、筋肉といった運動器が障害されると、歩くなど動くことが難しくなる。こういった状態をロコモティブシンドローム、略して「ロコモ」というが、がん治療の影響やがんの骨転移でもロコモは起こるので、早め早めのロコモ対策が大切だ。
 5月に開催された愛知県がんセンター公開講座「がんロコモって何ですか?」では、愛知県がんセンターリハビリテーション科の吉田雅博氏が、“ロコモ”と“がんロコモ”の解説、さらにロコモ度チェックとロコモ体操について紹介した。



ロコモは国民病、しかし認知度は低い

 「健康寿命や要介護の予防を阻害する三大因子は、“メタボ”と“ロコモ”と認知症です」。吉田氏はこう切り出した。健康寿命とは、健康に日常生活を送れる期間のことで、平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約12年。メタボはメタボリックシンドロームの略だが、2005年に世界統一の診断基準が作成され、2006年には流行語大賞を受賞。国民の「メタボ」に対する認知度は90%という報告もある。

 一方、ロコモは、2007年に日本整形外科学会が高齢化社会を見据えて提唱したロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略で、「運動器の障害のために移動能力が低下した状態」のことだが、2018年度の調査では認知度は48%と、メタボに比べて低い。

 ちなみに、ロコモの他にも高齢者の活動が低下した状態を示す言葉として、サルコペニアとフレイルがある。サルコペニアは「sarx=筋肉」と「penia=喪失」を組み合わせた言葉で、加齢に伴う骨格筋量の減少を示す。フレイルには「弱い」「虚弱」という意味があり、「身体的・社会的・心理的な問題があり、健康と病気の間の状態」を示す言葉である。ロコモの原因は、関節や脊椎の変形、骨粗鬆症に伴う骨折や円背(背中が円くなること)、そして筋量が減少してサルコペニアの状態になることだといわれている。

 ロコモによって寝たきりや要介護になることも少なくない。実際、要支援・要介護になった人の原因として、骨折や関節疾患などの運動器の障害が25%を占めている(2016年厚生労働省 国民生活基礎調査)。また、ロコモにつながる変形性関節症や骨粗鬆症の推定患者数から、ロコモの人口は予備軍も含めて4700万人と推定され、「ロコモはまさしく国民病といえます」と吉田氏は話した。

がん患者の運動器に起こること

 そして「がんロコモ」だが、「がん自体あるいはがんの治療によって運動器の障害が起きて、移動機能が低下した状態を言います」(吉田氏)。具体的には、がんによる運動器の問題、がん治療による運動器の問題、そしてがんと併存する運動器疾患の進行、という3つに分けられる。

(1)がんによる運動器の問題
 がんによる運動器の問題とは、骨や筋肉などにがんが発生した場合、あるいはがんが骨に転移した場合に、痛みや骨折、神経麻痺などが起こること。がんで骨が弱くなっていると、弱い力でも何かのはずみで骨が折れてしまうことがある(病的骨折)。

 骨転移は、男性では肺がんや前立腺がん等で、女性は乳がん、肺がん等で起こりやすく、年齢別に男性は60歳代、女性は50歳代で発生頻度が高くなっている。骨転移の発生部位は、脊椎、骨盤、大腿骨など、8割は体幹部の周辺で、体重がかかる場所に発生することが多い。そのため病的骨折や神経麻痺によってロコモが発生するリスクが高くなるが、「骨転移は末期がんではありません。そこからどうやってがんロコモを防いでいくかが大事なのです」と吉田氏は話した。

 骨転移の治療には薬物療法や放射線療法、手術療法が行われる。手術療法では、大腿の付け根に転移があり骨折しそうな状態のときは人工骨頭置換術を行うことで「歩けるようになります」。脊椎に転移があったときは、神経の圧迫を取り除き脊椎を固定する後方除圧固定法などの手術を行って「がんロコモにならないようにしています」。

(2)がん治療による運動器の問題
 がんの治療によって、骨や関節、神経に障害が出ることもある。1つには、安静にしている時間が続くことで起こる。1日寝たきりでいると筋力は2%ほど低下するといわれ、「化学療法などで2週間寝ていれば30%くらい筋肉が落ちているのです」。1日安静にして落ちた体力を回復するのには約1週間かかり、1週間安静にすると回復に1カ月かかるという。「そうなる前に、がんリハビリテーション(後述)を始めていかないといけないのです」と吉田氏は話した。

 また、抗がん剤による末梢神経障害もある。手足がピリピリ痺れ、手が痺れれば物がつかみにくく、足が痺れると歩きにくくなって、転びやすくなる。この場合はがんリハビリテーションに加えて神経障害に対する治療が必要になるとした。さらに、がん治療によって骨粗鬆症が発生することもある。前立腺がんや乳がんの治療に用いられるホルモン療法では骨粗鬆症が起こりやすいことが知られている。またがん治療や吐き気止めに使われるステロイド薬の大量投与で骨粗鬆症のリスクは高くなる。このためがん治療と並行して、「骨粗鬆症の治療をしていきます」。

(3)がんと併存する運動器疾患の進行
 膝痛や腰痛、加齢に伴う骨粗鬆症など、がんが直接の原因ではなく起こる運動器疾患もロコモの原因になるため、がん患者ではこれも予防しないといけない。

 ただし、がんの治療をしている途中に腰が痛くなった場合、がんの痛みか、脊椎の変形かは、診察しないとわからない。「がんの痛みとはかぎらないですが、がんの痛みかもしれないので、整形外科を早く受診することが大事です。早期に診断をすればそこで進行を食い止めることができるかもしれません」。

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