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レポート

2019/6/11

化学療法中に被災したときの備え

治療内容に合わせ年に2回は非常用グッズの見直しを

八倉巻尚子=医学ライター

 化学療法を受けているときに地震や台風などの災害に見舞われたら、どのように対応すればよいのだろうか。5月13日に開催された大阪府済生会吹田病院がんサロン「さくらの小路」で、同病院薬剤部の外来がん治療認定薬剤師である仁田美保子氏が、「化学療法中に被災したとき」と題し災害時の備えと化学療法中の副作用対策について説明した。


災害に備えて準備しておきたいこと

 ここ1年、大阪では自然災害が続いた。6月に大阪北部を震源とした最大震度6弱の北部地震が発生。7月は台風による豪雨があり、9月には非常に強い勢力の台風21号、24号による暴風や高潮で大きな被害に見舞われた。「吹田市でも避難指示が出たところがありました。地震や台風で自宅が被害を受けて家にいられなくなり、避難所に移動された方も多くいました」と仁田氏は振り返る。

 自然災害が起こったときは、まずテレビやラジオ、インターネットで情報を確認し、地方自治体などによる避難情報に従って行動する。緊急度によって「避難準備・高齢者等避難開始」、「避難勧告」、そして「避難指示」が出されるが、「避難指示が出て、避難場所に行こうと思っても、お子さんがいる方、足の不自由な方、高齢の方はすぐには移動できないことがあります。避難指示が出る前の段階で、準備をしなければいけないという認識を持っていただきたいと思います」。

 吹田市の場合、避難所には、非常用飲料水や食料、高齢者用食、粉ミルク、毛布、おむつなどが用意されている。場所によってはアレルギーを考慮した食品を用意している避難所もあるという。避難所には数日内に医療班が派遣されるが、災害が起きて避難所に移動するときは、数日分の薬は持参したほうがいいという。またお薬手帳があると、薬をもらうときはもちろんのこと、災害時にいつもとは違う医療機関を受診する場合に薬歴を伝えるのに役立つ。また避難所にいる保健師や看護師などの医療従事者に、がんの治療を受けていることを伝えておくことも大切だ。

化学療法の副作用への対応

 抗がん薬の種類によって副作用は異なるが、細胞障害性抗がん剤を用いる化学療法では、吐き気や下痢、便秘、口内炎などの副作用が出やすい。また自覚症状はないが、化学療法で骨髄が影響を受けて、白血球や血小板、赤血球の数が減少して、感染症などが起こりやすくなる。そのため避難時に持ち出す非常用グッズの中には、副作用のケアに必要なものや、自分にあった食べ物なども用意しておくほうがいいと仁田氏は話す。

●吐き気・食欲低下

 被災した際に避難所など、普段の環境とは違うところでは、食べ物やゴミ、タバコ、香水などの匂いが気になり、気持ちが悪くなって、吐き気が誘発されやすいといわれる。「いかに匂いをコントロールするかかが大事になります」と仁田氏。ゴミや吐物は、臭わないように袋の口をしっかり塞いで、臭いの管理をすることが大切だ。

 吐き気があるとき、食欲がないときは、水分の多い果物やおかゆが食べやすい。避難所では手に入りにくいこともあるので、果物の缶詰やレトルトのおかゆを備えておくといいようだ。消化を良くするために、少量をよく噛んで食べることを心がける。吐き気がして嘔吐してしまうと、脱水にもなりやすいので、水分をこまめにとるようにする。臭いの問題も含め、被災時には「気分が滅入ることもありますので、気分転換を図ったり、自分なりのリラックス法があれば、それを使っていただくほうがより快適に過ごせると思います」。

 吐き気や嘔吐に対して、前もって医師から渡されている薬があれば、処方通りにその薬をまず使う。吐き気止めには、メトクロプラミドやドンペリドンなどが使われている。「精神的につらくなって気持ちが悪くなる方もいますので、抗不安薬のロラゼパムなどが処方されている場合もあります」。食欲不振には漢方薬の六君子湯、消化管の動きをよくするモサプリドクエンなどが使われる。

●下痢・便秘

 下痢とは、便の中の水分が増えて、便が柔らかくなる、あるいは液状の便が続く状態のことで、1日の排便回数は3回以上になる。下痢では脱水症に注意することが重要で、スープなどの汁物やスポーツ飲料などで水分を積極的にとるようにする。おかゆや、大人用ではないが離乳食、幼児用の柔らかいものもいいようだ。また避難所で提供される食べ物や炊き出しはよく煮たものが多いが、中でも消化しやすいおじや、雑炊、うどんを選ぶようにする。しかし「症状が強く、1日の排便回数が7回以上になったときは、被災している時でも医療機関で診てもらってください」と仁田氏は言う。

 便秘の場合も水分をしっかり摂って、できるだけ野菜や果物など、繊維を多く含む食品をとるようにする。被災時は野菜や果物がなかなか手に入らないこともあり、また運動が制限されるなど、環境が変わって、便秘が悪化する可能性がある。便秘対策の薬をもらっているときは、それを使用し、改善しないときは受診する。

 下痢に対しては、ロペラミドや整腸剤が使われる。「排便回数が多い時は薬を使っていただくほうがいいのですが、下痢を止めすぎて逆に便秘になってしんどいという方もおられます」。排便の回数や腹痛などの症状に応じて薬は使い、不安なときは医療機関に相談する。便秘には、センナという植物に由来するセンノシド、大腸の蠕動運動を促すピコスルファートナトリウム、便に水分を含ませて排便をしやすくする酸化マグネシウムが使われる。

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