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レポート

2019/6/4

第71回日本産科婦人科学会より

卵巣がんのタイプに合わせ治療の個別化が進む(薬物療法編)

薬剤の開発は進むがバイオマーカーの発見が課題

八倉巻尚子=医学ライター

 卵巣がんの治療は、進行期や組織型、さらに遺伝子変異を考慮した治療戦略が考えられるようになってきた。血管新生阻害薬やPARP阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬の登場など薬剤の開発は目覚ましく、卵巣がんの治療はここ数年で大きく変わるといわれている。
 4月に名古屋で開催された第71回日本産科婦人科学会学術講演会の教育講演で、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座の岡本愛光氏が「卵巣癌治療の最近の知見」と題し、手術(初回手術、術前化学療法+手術)と薬物療法について紹介した。後半は薬物療法について。


 進行卵巣がんの薬物療法にはプラチナ製剤やタキサン製剤が用いられてきたが、2013年から血管新生阻害薬のベバシズマブも使われている。ベバシズマブの有効性は米国のGOG-0218試験で最初に確認された。III期-IV期進行卵巣がんを対象に、TC療法による標準治療群、ベバシズマブ同時併用群、同時併用+ベバシズマブ維持療法群が比較された。対象患者は漿液性がんと類内膜がんが9割を占め、グレード3が7割強だった。その結果、同時併用+ベバシズマブ維持療法群は有意にPFSを延長させたが、OSは延長しなかった。しかしIV期を対象とした事後解析で、同時併用+ベバシズマブ維持療法群では有意なOSの改善が示され、「IV期に対してより強くベバシズマブ併用を推奨できることが示唆されました」。

 欧州を中心としたICON7試験ではTC療法群とベバシズマブ同時併用+ベバシズマブ維持療法群の2群が比較された。なお対象にI/IIa期(明細胞がん、グレード3)も含まれていた。その結果、ベバシズマブを併用した場合のPFSは有意な延長を示した。特に高リスク群(III期でsuboptimal、IV期の症例)においてベバシズマブの有用性が顕著に示され、OSは30.2カ月から39.7カ月に延長した(ハザード比0.78、p=0.03)(Lancet Oncol 2015;16:928-36)。

 また昨年発表されたMITO16B試験では、初回治療にプラチナ製剤とベバシズマブを使った後に再発した卵巣がんに対し、プラチナ製剤ベースの化学療法だけを行う群と、化学療法にベバシズマブを併用する群が比較された。その結果、「プラチナ感受性再発におけるベバシズマブのBeyond PDでの有効性が証明されました」(Pignata S, et al. ASCO2018#5506)。

PARP阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の開発

 2018年1月にプラチナ製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、PARP阻害薬オラパリブが承認され、4月に発売された。オラパリブの維持療法としての有効性はSOLO2試験とStudy19試験で示されている。

 SOLO2試験はプラチナ製剤感受性で生殖系細胞にBRCA変異がある卵巣がんに対する維持療法として、オラパリブとプラセボを比較したフェーズ3試験。この結果、PFSのハザード比が0.30、p<0.0001で有意差を示した。Study19試験は高グレード漿液性卵巣がんを対象にしたフェーズ2試験で、オラパリブの維持療法はプラセボに比べて有意にPFSは延長し、ハザード比0.35、p<0.001となった。特にBRCA変異陽性の患者でハザード比0.17と、「2群が非常に乖離していました」。長期投与の解析では、5年の投与継続の患者が10%を超えていた(Lancet Oncol 2016;17:1579)。

 漿液性がんは高グレードと低グレードに分けられ、上記試験の対象となった高グレード漿液性がんは卵巣がんの中で最も頻度が高いがん。その約50%に相同組換え修復異常(homologous recombination deficiency:HRD)があり、BRCA変異は約20%に見られる(Cancer Discov. 2015;5:1137-54)。PARP阻害薬は細胞の合成致死というメカニズムを応用したものであるが、「プラチナ製剤感受性を示している卵巣がんでは相同組換え修復機能が破綻している場合が多く、PARP阻害薬によって細胞死に至る」と岡本氏は説明した。

 さらにオラパリブを再発後ではなく、1次治療の維持療法として検証したSOLO1試験も行われている。III期-IV期の高グレード漿液性がんもしくは類内膜がんで、BRCA変異が陽性、プラチナ製剤併用で完全奏効(CR)または部分奏効(PR)、ただしベバシズマブは併用していない患者を対象に、オラパリブとプラセボが比較された。この結果、「PFSのハザード比 0.3(p<0.0001)という非常に顕著なデータが示されました」(N Engl J Med 2018; 379:2495-2505)。

 このため「BRCA変異陽性には、TC療法を行い、オラパリブで維持していくという治療がこれからのスタンダードになっていく可能性があると言われています」。なおBRCA遺伝子検査は「ブラカテスト」と呼ばれるが、「BRCA遺伝子は本来のビーアールシーエー遺伝子と呼んでほしい」と岡本氏は話した。

 PARP阻害薬の維持治療を受け、その後また病状が進行した場合、もう一度オラパリブを投与できるかどうかを検証する試験(OReO試験)が現在進行している。また1次治療にプラチナ製剤、タキサン製剤、ベバシズマブを用いて、CR、PRになった患者を対象に、ベバシズマブ+オラパリブとベバシズマブ+プラセボを比較するPAOLA-1試験も行われている。

 PARP阻害薬には、オラパリブのほか、米国FDAで承認されたniraparib、rucaparib、まだ承認されていないveliparib、talazoparibがあり、「こういったPARP阻害薬が近い将来、臨床に導入される可能性もあるといった現状です」。PARP阻害薬を中心として免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることも検討されている。卵巣がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は、すでに単剤ではニボルマブやペムブロリズマブなどで示されている。

 現在、数多くの臨床試験が進んでおり、「この3年ほどで卵巣がんの治療戦略が変わってくる可能性があると思います」と岡本氏は話した。

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