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レポート

2019/05/28

第71回日本産科婦人科学会より

卵巣がんのタイプに合わせ治療の個別化が進む(手術編)

残存腫瘍がない状態を目指す

八倉巻尚子=医学ライター

初回手術(PDS)vs. 術前化学療法+手術(IDS)

 進行卵巣がんで腹膜播種や転移がある場合など、完全切除ができないと考えられるときは、術前に化学療法(NAC)を行い、その後で手術(interval debulking surgery:IDS)を行うことがある。術前化学療法+手術の有用性は4つのランダム化比較試験(RCT)で検討されている。

 欧州で行われたEORTC 55971試験で、IIIC期からIV期の患者を、初回手術(primary debulking surgery:PDS)群とプラチナ製剤をベースとした術前化学療法+手術(NAC+IDS)群に分けて比較した。その結果、PFSとOSに有意な差がなく、NAC+IDSのPDSに対する非劣性が証明された(N Engl J Med. 2010;363:943-53)。またイギリスが中心となったCHORUS試験でも、PFSとOSに有意な差がなく、非劣性が示された(Lancet. 2015;386:249-57)。「ただ1つ気になるのは、PDS群もNAC+IDS群も手術時間の中央値が120分だったことです。2時間で本当に完全手術ができるのかどうかは疑問です」。

 日本でも進行卵巣癌・卵管癌・腹膜癌を対象に、JCOG0602試験が行なわれた(Onda T, et al. ASCO2018 #5500)。PDS群では手術の後にTC療法(パクリタキセル、カルボプラチン)が8コース、NAC+IDS群は術前に4コース、術後に4コースが行われた。なおEORTC 55971試験とCHORUS試験では化学療法は合計で6コースだった。この結果、JCOG0602試験では標準治療であるPDSに対して、NAC+IDSの非劣性は認められなかった。さらに残存腫瘍径別にOSを見ると、PDSでもNAC+IDSでも、残存腫瘍径が0cm、すなわちR0になった群でOSが最も良いことが確認された。そのため結論として、「初回治療としてNAC+IDSはPDSの代替には必ずしもなり得ない。ただしNAC+IDSは全身状態が不良の症例、化学療法の奏効が期待できる組織型の症例にはPDSの代替になり得る可能性がある」とされた。

 イタリアの研究グループによるSCORPION試験ではNAC+IDSの優越性が検証されたが、PFS、OSに差がなく、この試験でも残存腫瘍を0にすることがOSを延長させることが示された(Fagotti A, et al. ASCO2018 #5516)。

 4つのRCTの結果から、予後に対して「最も良いのは初回手術のPDSでR0にすること。その次がNAC+IDSでR0にすることで、これはPDSでのoptimal surgery(最大残存腫瘍径が1cm未満)とほぼ同等である。その次がPDSでのsuboptimal surgery(最大残存腫瘍径が1cm以上)である」とした。このためPDSでsuboptimalが予測される場合はNACを行って、IDS時にR0を目指すことが重要です」と説明した。

 現在、ドイツが中心となってTRUST試験が行なわれている。「CHORUS試験で手術時間の中央値が120分と短かったことが疑問視され、完全手術をするために最大限の努力ができる機関で行うべきではないか」と考えられた。試験デザインは先ほどのRCTと同じだが、「1年間で最低でも36件の進行卵巣がんの初回腫瘍減量手術を行ない、かつIII期-IV期患者において50%以上の完全切除を行っている機関しか登録できない」といった厳しい基準が設けられた。またアジアでは上海の研究グループが中心となりAsia SUNNY試験が行われている。TRUST試験と同様に、登録基準の設定が厳しく「40%以上の完全切除ができる施設だけが登録できます」。この試験には日本の婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の参加も予定されている。

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