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レポート

2019/5/28

第71回日本産科婦人科学会より

卵巣がんのタイプに合わせ治療の個別化が進む(手術編)

残存腫瘍がない状態を目指す

八倉巻尚子=医学ライター

 卵巣がんの初回治療は手術が基本で、再発の危険性がある場合には術後に化学療法が行われる。また完全切除ができないと考えられるときは、術前に化学療法を行ってから手術する。
 4月に名古屋で開催された第71回日本産科婦人科学会学術講演会の教育講演で、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座の岡本愛光氏が「卵巣癌治療の最近の知見」と題し、手術(初回手術、術前化学療法+手術)と薬物療法について紹介した。前半は手術に関して掲載する。


 卵巣がんは上皮性腫瘍が9割を占め、組織学的に漿液性がん、粘液性がん、類内膜がん、明細胞がん等に分けられる。卵巣がんの初回治療は手術が基本で、手術によって組織型や進行期、腫瘍細胞の分化度(グレード)が決定される。また再発の危険性があるときは術後に化学療法が行われる。

 卵巣の外にがんが広がっているII期以上の進行卵巣がんに対して、「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」(日本婦人科腫瘍学会編)では、肉眼的に残存腫瘍がない状態(R0)を目指した腫瘍減量術(debulking surgery)が強く奨められている。

 その根拠となるデータの1つでは、手術によって残存腫瘍がない状態にできた場合、全生存期間(OS)中央値が、残存腫瘍があった場合に比べて、IIB-IIIB期の進行卵巣がんでは60.3カ月、IIIC期では46.9カ月、遠隔転移があるIV期では30カ月延長すると報告された(Cancer 2009; 15:1234-44)。そのため、いずれの進行期でも「完全に残存腫瘍をなくす手術(complete surgery)を行うことが重要です」と岡本氏は説明した。

 手術では卵巣と卵管、子宮、大網のほか、転移の範囲によって転移部位も切除することがある。また転移が起こりやすい周囲のリンパ節も切除することが多いが、骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節を摘出する「系統的リンパ節郭清を行うかどうかは、以前から臨床的な議論になっていました」。そこでドイツが中心となってLION試験が行われた(N Engl J Med 2019; 380:822-832)。

 試験はIIB-IV期卵巣がんで全身状態(PS)が良く、手術の際に腹腔内および腹腔外に残存腫瘍がなく、リンパ節の腫大がない患者を、系統的リンパ節郭清を行う群と行わない群に分けた。その結果、主要評価項目であるOSは2群間で有意差が認められなかった。無増悪生存期間(PFS)も差がなく、QOLにも違いが見られなかった。一方で、感染症や合併症のために再開腹術を行った頻度や術後60日間での死亡割合は、リンパ節郭清を行った群で有意に高かった。リンパ節郭清を行った群では55.7%にリンパ節転移の存在が認められたものの、結論として「肉眼的完全切除ができ、臨床的にリンパ節転移陰性の進行卵巣がん患者に対する系統的リンパ節郭清は省略すべきである」とされた。

 しかし「いくつかの疑問が湧いてきます」と岡本氏は指摘する。たとえば、日本人では明細胞がんが比較的多いが、LION試験では組織型のサブグループ解析が行われていない。そのため画像や触診でリンパ節腫大を認めない場合に「化学療法抵抗性とされる明細胞がんや粘膜性がんでも本当に省略できるのだろうか」といった疑問は残る。そういった疑問を解決するには「“Japanese LION Study”を立ち上げる必要があるのではないかと思う」と岡本氏は話した。

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