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レポート

2019/05/21

第59回日本呼吸器学会学術講演会より

肺がんの標準治療を正しく理解してほしい

長期的な視点での治療の選択が重要に

森下紀代美=医学ライター

免疫チェックポイント阻害薬では高い効果が持続する患者がいる

 次に、加藤氏は免疫チェックポイント阻害薬について説明した。ドライバー遺伝子変異がない場合は、免疫チェックポイント阻害薬の使用が推奨されている。

 免疫チェックポイント阻害薬の特徴は「Long tail effect」と呼ばれる効果で、全例ではないものの、一部の患者ではきわめて高い効果が得られ、持続する。2次治療として、抗PD-1抗体のニボルマブとドセタキセルを比較すると、2年の時点で増悪していない患者は、ドセタキセルではほぼいなかったが、ニボルマブでは約15%存在し、生存している患者の割合もニボルマブはドセタキセルの約3倍となった(Brahmer:NEJM 2015)。

 どういった患者に効きやすいかを示すバイオマーカーとしてPD-L1を用いたのが、抗PD-1抗体のペムブロリズマブである。PD-L1陽性細胞が50%以上の患者を対象に、1次治療としてペムブロリズマブと化学療法を比較したKEYNOTE-024試験では、ペムブロリズマブで増悪のリスクが50%と大きく低下することが示された。この試験でもLong tail effectがみられ、明らかに再発しないとみられる患者が存在した。さらに、化学療法で増悪した場合はペムブロリズマブへの変更が認められており、生存期間で差が出にくい条件だったにもかかわらず、生存期間もペムブロリズマブで有意に延長した(Reck NEJM 20116)。

 ただし、免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は、1次治療から2次療法では半減する。そのため、加藤氏は「抗PD-1抗体は、PD-L1が高発現している1次治療で使うことで、PD-L1のバイオマーカーとしての価値が生かせると考えられる」と指摘。1次治療を行う前にPD-L1を測定し、PD-L1陽性細胞が50%以上の患者をきちんと見つける必要がある。

 そして2018年末には、1次治療として、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が承認された。根拠の1つは、扁平上皮NSCLC患者を対象としたKEYNOTE-407試験で、カルボプラチンとパクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法に、ペムブロリズマブの追加の有無で比較した。ペムブロリズマブの追加により、無増悪生存期間(病勢の進行がない状態での生存)、全生存期間は有意に延長した(Paz-Ares:NEJM 2018)。

 同様の結果は、非扁平上皮NSCLC患者を対象としたKEYNOTE-189試験でも報告された。この試験では、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの併用療法に、ペムブロリズマブの追加の有無で比較している(Gandhi:NEJM 2018)。

 どちらの試験も追跡期間はまだ短いが、ペムブロリズマブの追加により差が開き、Long tail effectが示されたことは共通している。さらに、ペムブロリズマブの効果は、PD-L1陽性細胞の割合が50%以上と比べて、1~49%、1%未満では小さくなるものの認められた。このことは、PD-L1陽性細胞が測定できなかった場合でも、免疫チェックポイント阻害薬を使うことができる根拠となっている。

 さらに、血管新生阻害薬のベバシズマブの使用が可能な非扁平上皮NSCLCの患者を対象としたImpower150試験では、1次治療として、カルボプラチンとパクリタキセルとベバシズマブに、抗PD-L1抗体アテゾリズマブの追加の有無で比較した。アテゾリズマブの大きな効果が示されるとともに、それまで免疫チェックポイント阻害薬は効かないとされてきた、EGFR遺伝子変異陽性の患者にも有効であることがわかった(Socinski:NEJM 2018)。

 何らかの理由で、免疫チェックポイント阻害薬を1次治療で使うことができず、2次治療以降で使ったとしても、PD-L1陽性細胞の割合にかかわらず、Long tail effectが得られる患者はいる。EGFR-TKIのような高い奏効率は得られなくても、長期生存の期待は持てる。

 ただし、免疫チェックポイント阻害薬では、化学療法薬や分子標的薬にはない独特の「免疫関連有害事象」に注意が必要だ。活性化したリンパ球ががん以外の場所で反応を起こすために起こり、肺臓炎、甲状腺の機能低下症や機能亢進症、大腸炎、腎炎などが含まれる。

 免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法では、このような有害事象と効果は関連し、適切に管理できれば長期生存につながることがわかっていた。ただし、化学療法との併用になると、有害事象が発現する背景も複雑になり、対応に悩むことが増えてきたという現状もある。

III期の肺がんにも免疫チェックポイント阻害薬が効果

 最後に加藤氏は、III期の肺がんに対する化学放射線療法について説明した。

 これまでIII期のNSCLCに化学放射線療法を行った場合、2年生存率は約50%、5年生存率は約20%だった。標準とされるレジメンは、白金系抗がん薬(シスプラチンまたはカルボプラチン)と細胞障害性抗癌薬の併用療法である。

 化学放射線療法の後に、抗PD-L1抗体のデュルバルマブを1年間投与する維持療法を評価したPACIFIC試験では、プラセボと比べて死亡のリスクが32%低下することが示された。この試験では、対象のPD-L1細胞の割合は問わなかった。化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を加えるため、肺臓炎のリスクが心配されたが、デュルバルマブを加えても増加することはなかった(Antonia: NEJM 2018)。この試験の5年生存率はまだ発表されていないが、シミュレーションでは40~50%となる可能性が示唆されている。

 加藤氏もこの試験に参加しており、「III期の患者さんでは以前から治癒を目指すことができていたが、その割合が倍になるとすれば、機会があればデュルバルマブを使う必要があると思う」と話した。メカニズムの詳細は不明であるが、化学放射線療法の後に、放射線が当たっていない骨転移や脳転移などでも増殖を抑制する効果が観察されたという。

 現在、免疫チェックポイント阻害薬は、早期がんで手術を受ける患者への使用の評価も始まり、治癒を目指す取り組みが行われている。

 進行肺がんの治療は、化学療法だけの時代から、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬も使える時代になった。加藤氏は「難しいのは、最初の診断と、診断後にどこまで先のことを考えて治療を選ぶかということ。後からやり直すということが困難になってきているため、各施設、各医師が短期間に判断することが求められている」と述べた。

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