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レポート

2019/05/07

つらくないがんの療養を目指して

痛みを伝えることから治療がはじまる

医療用の麻薬を正しく知ってがんの痛みを取る(2)

八倉巻尚子=医学ライター

「どこが、いつから、どんなふうに、どのくらい」痛いかを伝える

 痛みを伝えるポイントは、どこが、いつから、どんなふうに、どのくらい痛いかを説明すること。まず「どこが」痛いのか。1カ所なのか広い範囲なのか。あるいは、どこが痛いのかはっきりしない場合もあるが、「患者さんと話をしていくと、痛い場所が変わることがわかりました。まずは話し合うことが大事です」と的場氏は言う。
 
 次に「いつから」痛いのか。突然痛くなったのか、1日中痛みがあるのか、あるいは食後に痛くなるのかなど。そして「どんなふうに」痛いのかを伝える。例えば、射し込むように痛い、鈍い痛み、電気がビリビリ走るような痛みなど。

 「どのくらい」痛いのかは、「初めはわからないと思いますので、弱、中、強でもいいと思います」。さらに詳しく痛みを評価するときは「痛みのない時が0、想像できる最悪の痛みを10として、今の痛みは幾つですか」と尋ねることもあるという。そして「痛みでできないことや困っていることを伝えることも大事です」。

 しかし診察室に入って上手に伝えるのはなかなか難しい。そこで、痛みや症状がある場所を絵に書いておくと説明しやすい。また伝えることを忘れてしまうこともあるので、受診までに相談したいことや聞きたいことを患者本人あるいは家族がメモをして持参することを勧めているという。「医師の説明の間に、私の痛みはといった話を急に滑り込ませるのはおかしいと思う患者さんが多いですが、メモだと見せることができますので、これはとても良い方法かなと思います」。

 医療用麻薬を痛みの強さに応じて使う痛みの治療によって、「8割から9割の人で痛みは満足できるレベルまで取れることがわかっています」。しかし「患者さんが心配して薬を増やしたくない、あるいは医師の側の知識不足でまだ麻薬は早いかなと思っていると、患者さんは痛みに苦しむことになってしまいます」。がんの治療では、この治療でいいのかなと思ったときは、セカンドオピニオンとして別の施設の専門家の意見を聞くことができるようになっている。痛みの治療に関しても、「主治医とよく話し合って、別の治療法を模索したり、別の施設の医師の意見を聞くこともあってもいいのかなと私は思います」と的場氏は話した。

がんの痛みの種類と治療

 がんの痛みにはいろいろな種類がある。骨や皮膚、筋肉への転移などで起こる「体性痛」は、組織が傷ついたために起こる痛みで、比較的痛みの場所がはっきりしている。治療には市販もされている痛み止めや、痛みの強さに合わせた医療用麻薬が使われる。内臓に転移したことで起こる「内臓痛」では、例えば「肝臓の中が痛いというよりも肝臓の表面を覆っている膜の組織が痛みを感じる」ため、痛みの場所があまりはっきりせず、範囲がやや広いのが特徴だという。また神経や脊髄へのがんの圧迫や浸潤で起こる痛みもある。この場合はしびれや、焼けるような痛み、電気が走るような痛みを感じることが多い。こういった痛みには鎮痛薬ではなく、抗うつ薬や抗けいれん薬が使われることもあるという。

 さらに痛みの原因に合わせて、違う種類の薬を組み合わせることもある。例えば炎症の痛みと圧迫の痛みがある場合、炎症を抑える薬(消炎鎮痛薬)だけでは痛みが残るため、医療用麻薬などの薬を組み合わせる。「効果を見ながら残っている痛みに対して、薬の量を増やす、あるいは新しい薬を足していきます」。

 「医療用麻薬を使ったがんの痛み治療は、今はどこでも始められます」。外来でも、入院でも、自宅での訪問診療でもでき、介護施設で訪問してくれる医師が行うこともある。治療を受けても生活に制約はなく、旅行に行くこともできる。的場氏によれば、骨転移の痛みと骨折の痛みがあった患者さんが、医療用麻薬による治療で痛みが取れ、北海道旅行ができるようになった。また、痛くて動けないため入院した患者さんも、治療で痛みが取れ、1週間でピアノを弾くほどになっていたという。

 「麻薬を使うと寝たきりになって命が縮まっていくというイメージがあるかもしれません。しかし痛みが取れて元気になって、夜も眠れてご飯が食べられる人と、痛くて眠れなくてご飯も食べられない人とでは、どっちが長く生きられるのかを考えたらわかりやすいと思います」と的場氏は話した。

 講演の最後に、緩和ケアの始まりを作ったシシリー・ソンダース医師の言葉を紹介した。「もし私ががんの末期になって強い痛みになって入院したとき、私が望むものは牧師が早く痛みが取れるように祈ってくれることでも、経験深い精神科医が私の悩みに耳を傾けてくれることでもなく、私の痛みの原因をしっかり診断し、痛みを軽減する薬剤の種類・量・投与間隔・投与法を判断し、それを直ちに実行してくれる医師が来てくれることです」。

 緩和ケアや痛みの治療はがん治療を妨げることはなく、がんを悪化させることもない。がんを治す治療は大切だが、つらくないように生活することも大切で、がん治療と緩和ケアのどちらかを選ぶものでもない。「痛みを取るということを治療のおまけにしないで、優先してやっていくことが大事だろうと思います」と的場氏。そして「つらくないがんの療養を目指しましょう」と話した。

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