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レポート

2019/05/07

つらくないがんの療養を目指して

痛みを伝えることから治療がはじまる

医療用の麻薬を正しく知ってがんの痛みを取る(2)

八倉巻尚子=医学ライター

 「麻薬」というと違法な薬が連想され、「こわい」「使い始めたらやめられなくなる」「寿命を縮める」という印象がある。しかし医師が処方する医療用麻薬はがんの痛みを減らし、生活をしやすくする。
 3月に東京と大阪で市民向けシンポジウム「がんの痛みは正しい知識で取る~医療用麻薬はどんな薬でどう使われるのか?」(主催:厚生労働省、共催:日本緩和医療薬学会)が開催された。シンポジウムの内容を3回に分けてお伝えする。第2回は、がんによる痛みと医療用麻薬による治療について。


「私の病気は“痛い”こと。だから痛みを取ってください」

 がんによる痛みと医療用麻薬による治療、緩和ケアの実際については、青森県立中央病院副院長・緩和医療科部長の的場元弘氏が解説した。

 痛みはがん患者さんの生活に大きな影響を与える。的場氏は大学に勤務していた時の患者さんの言葉を今でも覚えている。「俺の病気は“痛い”こと。痛みさえなければ普通に生活ができる。だから痛みを取ってほしい」。泌尿器科から紹介された患者さんが診察室で的場氏の目の前に座った途端に言った言葉だ。痛くて病院に来たが、がんが見つかり、主治医はどこのがんがどこに広がったという説明はするが、痛みが取れないと訴えた。この患者さんの言葉に的場氏は「なるほど」と思った。学問的に病気に伴う症状を学んだ医師にとって痛みは症状の1つと捉えるが、患者さんにとっては痛みが病気そのものだ。「まさにその通りだなと思いました」。

 痛みがあると動けない、起き上がるのも大変で、毎朝起き上がってからしばらくは動けない。痛いので食欲がない。「痛みと感情は必ず結びついて」、痛みがあると気分が憂鬱になる、痛いと不愉快になる。痛みが強くなれば、病気が悪くなったのではないかと不安になる。「そういった痛みを取ることは、患者さんにとって、また医療者にとっても大事なことだと思います」と的場氏は言う。

 以前は痛みの治療はがんが進んでから行われていたが、最近ではがんと診断されて痛みがある場合は早期から行うほうがよいとされている。「がん対策基本法」が2007年から施行され、その法律の第16条には「疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにする」ことが書かれている。

 また、体の痛みだけでなく、「気持ちを支える医療を提供しようというふうに変わってきています」。自分のつらさを吐き出し、症状も聞いてもらい、それに医療スタッフが対応する。痛みの治療を受けて「病気は治ってないみたいだが、なんかすごく良くなった感じがする」と患者さんは話すという。

痛みを伝えることから治療がはじまる

 痛みの治療を受けるために大切なのは、まず患者さんが痛みを伝えることだと、的場氏は強調する。しかし「痛みはどうですか」と患者さんに尋ねると、「我慢できます」という答えが非常に多いという。痛みが良くなっているかどうかを聞きたいが、「痛みがある」と答えたら、薬を増やされたり、病気が悪くなっていると言われるのではないかと心配するためだろうという。「何とかやっています」という答えも多く、「すごく気を使っていただいている感じがします」と的場氏。「落ち着いていると思います」「少しはいいようです」という答えも多い。しかしそういった答えでは、このまま様子を見るのがいいか、あるいは治療を変えたほうがいいかは判断できないため、痛みの状況を患者さんに詳しく聞くようにしているという。

 またこのときに「眠れる、動けるなど、生活に支障がないというのが大事だと思います」と的場氏は言う。患者さんには「痛みでできないことや困っていることはありませんか」という質問をする。痛みが多少あっても生活に支障がなければ、薬の量は変えずにそのままの状態を維持する。痛みをなくしたいと希望する患者さんには薬の量を増やすこともある。「つらいことや困りごとが少なく、療養や生活ができること」が一つの判断の基準になっているという。

 的場氏らが入院患者と外来患者を対象に行った痛みの調査では、強い痛みがあるのに痛みがあることを主治医に言わなかった患者が1割ほどいたという。その理由としては「聞かれなかったから言わなかった」「話すタイミングがなかった」「話しにくかった」という答えが多かった。診察室に入ると、治療の話や病気を治す話になり、自分のことを切り出すチャンスがなかったという。また「自分の主治医だからわかっていると思っていた」という答えもあった。

 しかし「痛みやつらさは本人にしかわかりません。本人が伝えなければ、気がつきません。痛みやつらさを医師や看護師が知ってはじめて、痛みの治療や緩和ケアが始まります」。

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