このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2019/04/30

つらくないがんの療養を目指して

医療用麻薬は決して最後の手段ではありません

医療用の麻薬を正しく知ってがんの痛みを取る(1)

八倉巻尚子=医学ライター

がんの痛みに医療用麻薬を使うと依存症(中毒)になるのか

 「麻薬中毒になってしまう」「最後の手段かもしれない」「寿命が縮まってしまう」「危ない・怖い」といったイメージがあり、がんの痛みがつらくても、医療用麻薬を使わずに我慢してしまう患者さんは少なくない。しかし「これは誤解であることを、データで紹介していきたいと思います」。

 WHOが1996年に発表した「がんの痛みからの解放」の中で、「鎮痛を目的としたオピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)の投与を受けているがん患者には精神依存が発生しないことが明らかにされている」と記されている。鈴木氏も動物を使った実験で精神依存は起きないことを確認している(鈴木,薬学雑誌2001;121:909-914等)。

 神経伝達系において、痛みがない時は「報酬系」と呼ばれる神経系と「嫌悪系」の神経系のバランスが取れている。この状態でモルヒネを投与すると、報酬系に作用し、報酬系の神経系が過剰に興奮してバランスが崩れ、精神依存や耐性がつくられる。

 一方、痛みがある時は“痛い”という嫌悪系が強く働いているため、報酬系と嫌悪系のバランスは崩れている。この状態に痛みを抑えるためのモルヒネを投与すると、報酬系の神経系が活性化することで、報酬系と嫌悪系のバランスが取れるようになる。「過剰投与になってはいけませんが、痛みを抑える適切な量のモルヒネを投与すれば、精神依存や耐性がつくられることなく、好ましい状態を作ってくれます」と鈴木氏は解説した。

がんの痛みに医療用麻薬を使うと寿命を縮めるのだろうか

 がんと診断されてがんの治療が始まるが、従来、痛み治療はがん治療の後半になってから行われていた。これは「痛み治療で寿命が縮むという誤解をされてきたためです」と鈴木氏は言う。しかし現在では、がんと診断されて痛みがあれば、その時点から痛み治療を開始するようになっている。

 医療用麻薬が寿命を縮めることはないことは幾つものデータから示されている。例えば、切除不能と診断された膵がん患者で、神経ブロック療法による痛み治療が行われた結果、痛みが取れた人は痛みが続いた人に比べて生存期間が長かった(Lillemoe et al.Ann Surg.1993;217:447-457)。オピオイド鎮痛薬を用いた研究でも、「寿命が縮むことはない」ことが報告されている(Wong GY, et al. JAMA2004;291:1092-1099)。

がんの痛みに医療用麻薬は最後の手段か

 医療用麻薬を使うのは他の治療法がなくなったときの“最後の手段”というイメージも根強い。しかし1つの医療用麻薬が効かない場合でも、他の医療用麻薬に替えると効果が得られることがある(オピオイド・スイッチング)。また薬物療法以外にも、放射線療法や神経ブロック、理学療法的なアプローチ、あるいは補完代替療法などの方法もあるため、「決して最後の手段ではありません」と鈴木氏は述べた。

 ただし医療用麻薬には副作用もあり、便秘、悪心・嘔吐、眠気が3大副作用といわれている。モルヒネの場合、鎮痛効果を示す用量を1とすると、その50分の1の用量から便秘が起こり、10分の1の用量で吐き気・嘔吐が、鎮痛効果の用量を超えると眠気が起こる(鈴木勉、武田文和:オピオイド治療-課題と新潮流.鎮痛薬・オピオイド研究会編, 2000)。そのため医療用麻薬を用いるときには、便秘、吐き気・嘔吐、眠気などの副作用に対する対策も併せて行う必要がある(第3回に掲載予定の副作用対策も参考に)。

 最後にまとめとして、「医療用の麻薬と違法な麻薬は全く異なります。有効性と完全性が担保された医薬品である医療用麻薬は、がんの痛みの治療には欠かせない薬です」と鈴木氏は話した。

この記事を友達に伝える印刷用ページ