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レポート

2019/04/23

小児・AYA世代のがん治療

がん治療の影響から女性の妊娠力を守る

福原麻希=医療ジャーナリスト

卵巣の凍結保存は低年齢の制限がない

 小児のがん患者、あるいはAYA世代で早急にがんの治療を開始する必要がある場合は、「卵巣を摘出し凍結保存すること」も考慮されている。欧州では1997年に最初の卵巣凍結保存の症例が見られ、2004年に最初の出産例が報告された。日本では2006年に卵巣凍結保存の1例目が出て以降、2016年までの10年間で201例が実施された。近年は年間30~50件実施されるという。そのうちの4割弱は、聖マリアンナ医科大学病院で高江氏らが治療してきた。だが、国内ではまだ保険診療で認められていない臨床研究段階の治療法で、全国30の病院やクリニックで実施されているに過ぎない(http://www.j-sfp.org/ovarian/index.html)。

 卵巣を凍結保存する方法は、聖マリアンナ医科大学病院の場合は、腹部に2センチ程度の孔を開けて、そこから腹腔鏡を挿入し卵巣を摘出する。卵巣は1個(片側)、あるいは1個の部分切除になる。がんの治療後、卵巣を体内に手術で移植する。その妊娠率は約30%3)で、これまで約130人が出産した。

 患者は、卵子の凍結保存と同じように乳がん患者が多い。このほか、白血病などの血液のがん、脳腫瘍、子宮頸がん、卵巣がんと続く。一方、卵巣凍結保存には重篤なリスクとして、卵巣を体内に戻すとき、がんが再発したり転移したりする可能性がある。特に、白血病・神経芽細胞腫(神経細胞のがん)、バーキットリンパ腫(悪性リンパ腫の1つ)、卵巣がんはリスクが高いため、適応の判断は難しいことが多い。「今後、卵巣の凍結保存が増えるにしたがって、治療後、体内に卵巣を移植する技術のさらなる開発が望まれます」と高江氏は言う。

 年齢は前述の201例のうち、31~35歳が28.3%(57例)と一番多かったが、「卵子の凍結保存との違いは、未成年が2割を超えていることです(43例)」と高江氏は言う。「卵巣の凍結保存は、医学上は何歳からでも治療は可能で、海外では0歳児の症例もあります。そうとはいえ、未成年に対する卵巣凍結保存の治療ではインフォームドコンセント(十分な治療に関する説明を受けた場合の患者の同意)が難しい。脳腫瘍の8歳の女児の場合は医師がイラストを描いて説明しました。小児科医だけでなく、看護師とともに臨床心理士とも連携しています」と高江氏は説明する。
 
 治療を受けられる条件としていろいろな考えが報告されているが、多くの施設では①15歳以上の場合は他に何も治療を受けていないこと、②15歳未満の場合は抗がん剤治療による卵巣への影響が軽度まで、③5年生存率が見込める、④治療により卵巣が機能しなくなるリスクが高いこと、⑤インフォームドコンセントを得られること――の5点が満たされるときに実施されている。

 全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の患者向けパンフレットには「You are not alone(あなたは、ひとりではない)」と書いてある。日本でも日本がん・生殖医療学会と日本生殖心理学会が共同で「がん生殖医療専門心理士」(https://www.jsrp.org/course/cancer_repro_list.html)を育成している。わからないことがあったら、ぜひ相談してほしい。また、がん患者の妊娠・出産に関して、さらに詳しいことを知りたいときは、以下のサイトの内容が信頼できる。

*日本がん・生殖医療学会  http://www.j-sfp.org/index.html
 卵子や受精卵、および、卵巣の凍結保存治療ができる病院やクリニックを検索することができる。http://www.j-sfp.org/ovarian/index.html

*小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究  http://www.j-sfp.org/ped/index.html


1) 清水千佳子他、「AYA世代がん医療の包括的実態調査-総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」厚生労働省研究、2015年
2)日本産科婦人科学会 登録・調査小委員会データブック2016
  https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/
3)Donnez, J. et al. Fertility Preservation in Women, N Engl J Med, 377, 17, 1657-1665. 2017.

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