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2019/4/23

小児・AYA世代のがん治療

がん治療の影響から女性の妊娠力を守る

福原麻希=医療ジャーナリスト

 結婚・出産が気になるAYA世代だけでなく、14歳以下の小児がん患者でも、将来のために卵巣を凍結保存する事例が増えている。3月2日に開催された神奈川県立こども医療センター小児がんセンターが主催する市民公開講座で、「小児・AYAがん女性患者の妊孕性(にんようせい、妊娠する力)」と題して、聖マリアンナ医科大学病院生殖医療センター副センター長の高江正道氏が講演した内容を紹介する。


卵子・受精卵凍結保存の現状

 AYA世代(AYA:Adolescents and Young Adult、15歳~39歳)のサバイバーにとって、出産に関わることは、どの年齢でも悩みのベスト5に入っている。特に、25~29歳ではトップになる。(厚生労働省研究班の調査1)、調査での設問は「不妊治療や生殖機能の問題」)
 
 がんの治療法は、がんの大きさ(広がり)や深さ、転移の状況によるステージ(がんの進行状態)に加えて、生活状況なども考慮して選択する。このとき、治療後に出産を希望する場合は、あらかじめ体への影響も考えておかなければならない。例えば、手術は子宮や卵巣を摘出することがある。抗がん剤治療や放射線治療は卵巣の働きを低下させるため、閉経と同じ状態になってしまう。

 また妊孕性は「卵巣内に残存している卵子の数」で決まる。高江氏は「卵子は新しく作られず、年齢ごとに減るばかりです。生まれたばかりのときの卵子数は約100万個と言われていますが、初経時には半分以下の30~40万個に、30歳代では数万個まで減少します。閉経時は約1000個になります」と説明する。

 このため独身の人も結婚している人も、がんの進行により卵巣の温存がかなわない場合だけでなく、抗がん剤治療や放射線治療によってその機能低下が予測される場合は、卵子や受精卵(胚)、卵巣を凍結保存できる可能性を考えることが勧められる。その場合、原則的には、がん治療を受ける前に動き出さなければならない。(卵子・受精卵(胚)・卵巣の凍結保存は患者の状態によってできない場合もある)

 凍結保存には3種類(受精卵・卵子・卵巣)あるが、このうち最も確立されている「受精卵の保存」は、不妊治療の体外受精と同じ方法で、治療後の出産率は30~40%2)。ただし、母体に移植できる受精卵を得ることは簡単ではない。このため、1回の採卵周期当たりの採卵個数を増やすよう工夫する。

 独身の場合は、「卵子を採取し保存」する方法を取る。卵子1個当たりの妊娠率は5~7%と低いため、できれば20個程度、凍結することが多い。受精卵に比べて卵子を保存したときの妊娠率が低い理由は、「受精卵は多数の細胞の塊で、ダメージがあってもお互いにカバーし合うことができます。一方、卵子は単一細胞でダメージがある場合カバーができないからです」と高江氏は説明する。

 通常の月経周期では卵子が1個しか育たない。このため、受精卵でも卵子でも、採取する場合は7~10日間、注射(筋肉注射)や内服薬で卵巣を刺激して複数の成熟卵を育てる。その後、腟から超音波検査機器(プローブ)を入れて、卵巣内の卵の大きさを観察しながら、プローブ先端の針で卵を採取する。「腟から超音波機器を入れるため、思春期(12~17歳)までの年齢の場合は治療が適応になりません。採卵し凍結するまで、月経開始後から2週間程度かかります」と高江氏は言う。また保険診療外の治療であるため、全額自費になる。

 厚労省研究班の調査によると、卵子の凍結保存は、2006年~2016年まで1000例以上実施された。そのうちの2回の治療で、合併症として「卵巣過剰刺激症候群(卵巣が過剰に刺激を受けることで症状が起こる)による卵巣茎捻転(卵巣が大きく腫れ、ねじれること)」および「卵巣過剰刺激症候群による血栓症」が見られた。出産は2例だった。

 患者の背景は、乳がんが飛び抜けて多かった。その理由について、高江氏は「30代女性には乳がん患者が多いこと、および、患者さんの全身状態がよいことが多く、妊孕性温存の適応になることが多いからと考えます」と説明する。このほか、白血病などの血液がん、大腸がんや卵巣がん、骨軟部腫瘍と続く。初診時の年齢は36~40歳が一番多かったが、7%(58人)は20歳以下の患者だった。そのうち、小児がんは骨肉腫と白血病の2例だった。

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