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レポート

2019/04/16

小児・AYA世代のがん治療

将来、父親になりたい人が治療前にすべきこと

福原麻希=医療ジャーナリスト

 がん治療の影響で、男性が女性を妊娠させる力(「妊孕性」と呼ばれる)が低下する可能性があるとき、あらかじめどうしておけばいいのだろうか。3月2日に開催された神奈川県立こども医療センター小児がんセンターが主催する市民公開講座で、「小児・AYAがん男性患者の妊孕性」と題して獨協医科大学埼玉医療センター病院長・泌尿器科教授・リプロダクションセンター統括者の岡田弘氏が講演した内容を紹介する。


精子の凍結保存は治療前に準備する

 男性はがんの治療によって、射精障害や勃起障害といった性機能の障害と、無精子症・高度乏精子症・精子機能障害という精子の形成に障害を起こすことがある。

 性機能障害は、①前立腺がん・前立腺肉腫で前立腺を全摘した場合、②膀胱がんで膀胱を全摘した場合、③膀胱・大腸・脊椎のがんの手術時に性機能を司る自律神経が損傷した場合、④精巣腫瘍や後腹膜悪性腫瘍(悪性の場合は悪性リンパ腫・脂肪肉腫・平滑筋肉腫・繊維肉腫等)で後腹膜リンパ節郭清をした場合に起こる。

 精子形成障害は、①精巣がんの抗がん剤治療や放射線治療、②前立腺がんのホルモン療法によって起こり、精子の数が減少したり、まったく作られなくなったり、運動率が低下したりすることがある。これらの影響は一時的なこともある。


 「若い世代の男性がん患者は、どのくらいの人が結婚し、父親になっているか」に関する、海外の調査研究がある1)。がんになっていない男性を基準とした場合、25歳以下でがんと診断された男性が結婚した割合は約9割だが、結婚して父親になった割合は約7割という結果だった。結婚しても父親にならなかった理由には、いろいろな原因が考えられるが、この調査では、がん患者は非がん患者より高度生殖補助医療(ART=assisted reproductive technology、体外で生殖医療をする技術)を受けた割合が3倍以上多かったという1)

 不妊治療は「一般的な治療」と「ART」に大別される。一般的な不妊治療には、タイミング指導、薬物療法・手術療法、人工授精(精子を採取し、子宮に注入する方法)があり、それぞれを約6カ月ずつ試す。さらにARTに進んだ場合は、主に体外受精(体外で卵子と精子を受精させる)」と顕微授精(顕微鏡を用いて、卵子に精子を注入する)という方法がある。がん患者はこのARTの治療を経て、父親になっている人が多い。

 ART治療を受ける場合、患者はがん治療前に精子を凍結保存しておく。そのとき重要な点は、抗がん剤治療は遺伝子を損傷する可能性があるため、患者は診断後すぐに情報を入手し、生殖医療の専門医を受診することだ。だが、海外でも国内でも、「一刻も早く、できれば今日から抗がん剤治療を始めましょう」とがん治療の専門医に言われることが少なくない。

 「近年、血液がんの治療を担当する腫瘍内科医が抗がん剤治療を始める前に、小児・AYA世代の患者には精子の凍結保存を説明する病院が増えました。それでも私どもの調査を含めて複数の研究から、そのような病院は小児・AYA世代の男性がん治療(血液がん)を担当する腫瘍内科医が所属する病院全体の6割程度にとどまっています2)。遅くても抗がん剤治療の1クール目が終わった直後には、精子凍結保存のための受診をしてほしいところです」とリプロダクションセンター統括者の立場で岡田氏は強調する。

 実際に精子を凍結保存する男性の割合は、例えば、海外で一番進んでいるフランスでは血液がんの15歳~19歳の患者の9割以上にのぼる3)。一方、日本では、すでに子供がいる、あるいは、いまはがん治療に意識が集中し、将来のことまで考えられない人の割合を含めても、精子を凍結保存している人は3割弱と低い2)

 また、フランスは政府主導でがん患者の精子凍結も含めた不妊治療に取り組んでいるが、日本は複数の病院医師のボランティアで進めている。この現状について岡田氏は「精子だけでなく、卵子も含めた凍結保存は結婚・出産までの期間が20年以上になることも考えられます。日本は政府主導ではないため、その保管等の体制について民間施設の経済的負担があまりにも大きい」と課題を指摘する。

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